骨折から学ぶ、からだの仕組み① │ 扁桃体の反応と正常性バイアス、急性炎症反応
骨折したので、からだの中で何が起きているかをまとめて行こうと思います。
指が無理な方向に引っ張られてしまい、左手小指の中手骨が折れました。
初日は少し腫れたので、とりあえずアイシングして、手が心臓より高い位置になるようにして安静にしました。
2日目、痛みはましになったり、痛み出したりという感じで、仕事が休みだったので引き続きアイシングしつつ安静維持。
3日目は予定があったので普通に出掛けましたが、手をあげておけばさほど痛みもなかったので、ランチして買い物してお茶して帰りました。
その日の夜、腫れも引いたので、どこが痛いのか触って確認していたら、中手骨の付け根がなんだか少し張り出していることに気づきました…
あの音はやっぱり骨が折れた音だったんだなと思いながらも、ほとんど痛みがないのでまだいけるかもしれないみたいな複雑な気持ちに。
とにかく整形外科に行くまでは何もできないので、とりあえず職場に明日は休むと連絡し、左手を労りつつ寝ることにしました。この時点で痛みはほぼなかったのですが、胸の辺りがそわそわしてなかなか眠れません。不安によって増加したVataの影響なことは明らかなので、呼吸法を実践して、とにかく病院に行くまではわからないと気持ちを切り替えて入眠。
4日目の朝、診療開始時刻と同時に整形外科へ。レントゲンの画像で骨折がはっきり確認できたら、やっぱりねという気持ちと謎の安堵感。
やはり不安と恐怖は未知のものから来るんだなと実感しつつ、固定してもらいました。安心感倍増。
さて、では私のからだの中ではどんなことが起きていたのかを時系列とともに考えていきます。
骨折した瞬間、聴覚が骨が折れた音を捉え、体感で0.5秒後ぐらいには痛覚が痛みを伝えて来ました。やってしまったという思考とともに、一時的な痛みだといいなという願望が生まれました。パキッという音をはっきりと聞いたのに、「きっと関節の音だ、痛いけど指の曲げ伸ばしもできる」と正常性バイアスが働き、捻挫だと思い込むことに成功しました。
まず、骨折による刺激に扁桃体が即座に反応、私が認知する前に感情処理を行い、恐怖反応を引き起こして、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が促されました。同時に扁桃体は交感神経を刺激し、アドレナリンとノルアドレナリンも分泌され、心拍数や血圧を上げ、恐怖による覚醒状態を引き起こします。コルチゾールは少し遅れて働き、心拍数だけでなく、血糖値の上昇、免疫機能の活性などの変化が起きます。このように急性のストレス下では、一時的に免疫が活性化され炎症反応などの準備が行われます。
からだは怪我をすると、修復するためのプロセスをすぐに開始してくれるのです。
さて、扁桃体は脅威を迅速に検知し、適切な感情反応を引き起こしてくれましたが、前頭前野はその感情の信号を制御する過程で、脅威の深刻さを過小評価することがあります。特にストレス下では前頭前野の機能が低下するので、この現象が起きやすく、これを正常性バイアスといいます。脅威を「大したことはない」と現実否認するようなバイアスが働いてしまうのです。災害心理学の分野で注目されているようですが、例えば地震や火災に遭遇した際に、避難を遅らせる原因のひとつと考えられています。
わたしが捻挫だと思い込もうとした時、からだは骨折したことによりストレスに晒されていたので、正常性バイアスが働いてしまったのですね。ごめんね、私のからだ。
左手を上げながら帰りましたが、家に着く頃には幹部は腫れていました。もちろん痛みも引かなかったので、とりあえずアイシング。
その時点で折れてるって気づけばよかったけど、骨折にしては大したことない腫れ方と痛みだったので、まだ何とかなると思っていました。
骨折直後は、破れた血管から血液が患部に集まって血腫を作り、これが修復のための土台となります。血腫の中には、白血球もたくさん集まっていて、傷ついた組織を片付けてくれるんだけど、この時にサイトカインという炎症物質がたくさん作られて、腫れや痛みを引き起こします。これが急性炎症反応で、骨折後数時間から数日続きます。炎症期は骨折修復の第一段階です。
腫れるし痛いからアイシングしますが、炎症反応は基本的にはからだを治すためのプロセスなので、邪魔をすることにいつも少し躊躇します。実際、過度なアイシングは血流を減らして修復を遅らせる可能性もあり、バランスが大事です。20分冷やしたら20分は休むって感じでやるのが推奨されています。
アイシングも効いて、眠れないほどの痛みではなかったので、怪我には睡眠!と思い、初日と2日目はとにかくよく寝ました。2日目は出掛ける予定もなかったので、長々とお昼寝もしました。
ストレスがあると眠れなくなりそうなイメージがありますが、今回は急性のストレスだったことと炎症反応によって、初日と2日目は爆睡することにつながったかと思います。
長くなるので、ストレスと睡眠、炎症反応と睡眠の関係について、3日目以降のお話はまた次回書いていこうと思います。
それにしても、からだの生理機能って天才的で日々感謝してるけど、今回も本当にありがとう。
お読みくださりありがとうございます。
ではまた!
参考文献:
• Einhorn, T. A., & Gerstenfeld, L. C. (2015). Fracture healing: Mechanisms and interventions. Nature Reviews Rheumatology, 11(1), 45–54. DOI: 10.1038/nrrheum.2014.164
• Gangopadhyay, P., Chawla, M., & Dal Monte, O. (2020). Prefrontal–amygdala circuits in social decision-making. Nature Reviews Neuroscience, 22(1), 34–48. DOI: 10.1038/s41583-020-00388-4
