パワーは“出すもの”ではなく、“コントロールするもの”
フィッティングの現場で、よくあるシーンがあります。
「普段通りの強さで回してみてください」
そうお伝えすると、多くの方がペダルを忙しく回し始めます。力を出そうとして、無意識に頑張ってしまう。回さなきゃいけない、踏まなきゃいけない、そういう意識が強く出てしまいます。
でも本来、自転車においてパワーは“出すもの”ではなく、コントロールするものです。
自転車という乗り物はとてもシンプルです。止まっている状態から加速し、ある程度のスピードで巡航し、また減速して止まる。この繰り返しです。
ただし、この中で最も重要なのは「一定で走る」という部分です。ここができるかどうかで、走りの質は大きく変わります。
実際のライドでは、この一定で走るということが意外と難しい。例えばグループライドで先頭を引いたとき、後ろを引き離してしまう方がいます。本人は頑張っているだけですが、ペースが一定ではないため、後ろはかなり消耗します。
これは脚力の問題ではなく、「コントロールできているかどうか」の問題です。
ヒルクライムではパワーが出るのに、平地では出せないという方も多く見られます。しかしこれは弱点ではなく、むしろ伸びしろです。
坂道では常に負荷がかかり続けるため、傾斜の負荷を使い力を出し続けることができます。一方で平地は負荷が抜けやすく、自分で出力を維持し続ける必要があります。
つまり、平地は“コントロール能力”が問われる環境です。
ヒルクライムでできている「力をかけ続ける感覚」を、平地でも再現できるようになると、ライダーとしてのレベルは一段上がります。坂でも平地でも同じようにパワーを扱えることは、上手なライダーの一つの姿です。
サイクリングロードのような平坦な道は、この練習に非常に適しています。人も多く、決して走りやすい環境とは言えませんが、「一定のペースを作る」という観点では非常に価値があります。遅くても良いので一定のペースではしってみます。
実際、ヒルクライムレース、ロードレース、トライアスロン、ブルベといったエンデュランススポーツでは、基本的に一定のペースで走っています。それはその方が身体的な負担が少なく、最も効率的だからです。
例えばアイアンマンでは、約4kmを泳ぎ、180kmをバイクで走り、その後フルマラソンを行います。この中で求められるのは「どれだけ頑張れるか」ではなく、「どれだけペースをコントロールできるか」です。
急いで速く走るのではなく、最後まで崩れないペースを刻み続けること。その能力が、そのまま結果に直結します。
では、一定のペースはどう作るのか。
自転車には多くの指標があります。パワー、心拍、ケイデンス、スピード。最近では体温なども測定できます。これらを使うことで、自分の走りがどれだけ安定しているかを客観的に見ることができます。
もし数値が大きく上下している場合、それは身体にとって負担の大きい走り方になっている可能性があります。逆にある程度安定していれば、効率よく走れている状態です。
おすすめとしては、平地ではパワーを一定に保つこと、登りでは心拍を一定に近づけること。この意識を持つだけでも、ライドの質は大きく変わります。呼吸が一定か?が今すぐにチェックできるやり方です。
フィッティングの現場でも、この「コントロール」は重要な判断材料になります。
例えば、一定の出力で走ってもらったときに、上半身がブレる、座る位置が安定しない、フォームが崩れてしまう。こういった場合、そのポジションは“コントロールしにくい状態”になっている可能性があります。
そのため三ツ星では、サドルの位置やハンドルの高さを調整しながら、「一定のペースで走り続けられる姿勢」を一緒に作っていきます。
興味深いのは、この状態に入ったとき、多くのライダーが「楽に感じる」「落ち着く」と表現することです。これは身体が無理なくコントロールできているサインです。
もし今、一定のペースで走ることが苦手だと感じているのであれば、それは単純に能力不足とは限りません。
ポジションが合っていない可能性もありますし、身体の使い方に課題があるかもしれません。サドルや機材との相性が影響している場合もあります。
三ツ星フィットサービスでは、こうした「コントロールできない原因」を一つずつ整理し、安定して効率よく走れる状態を作っていきます。
気温も上がり、ライドの機会が増えてくるこれからの時期。走りの質を一段引き上げるタイミングとしては非常に良い時期です。
まずは一度、ご自身の走りを見直してみてください。
気になる点があれば、お気軽にご相談ください。
あなたの走りを「コントロールできる状態」に整えるところから、一緒に始めていきましょう。
