【読書感想文】爽やかな島の風を感じるやさしい物語 『つるかめ助産院』
適応障害で休職して、3回目の通院日。
とにかく待ち時間が長いので、通院の前には書店に寄って、何冊か本を買うのがお決まりになっています。
いつもの書店で気ままに棚を見て回っていたとき、ふと目に止まり吸い寄せられるようにして手に取りました。
ドラマ化もされている、小川糸さんの代表作。
有名な作品ですが、あらすじすら全く知りませんでした。
今更だけどな、と思いつつも何となく惹かれ、自分の勘に従い読んでみました。
*****
物語を読んでいる最中、ずっと島の風や波の音を感じるような、爽やかな印象のお話でした。
登場人物それぞれが心に傷を抱えていて、ストーリーは決して爽やかではない部分もあるのですが、
間に入ってくる島の描写や料理の描写がものすごくリアルで。
南の島の風の温度や香り、一面に広がるサトウキビ畑、突然現れる野良やぎ、透き通る海の色、ジーマミー豆腐の舌触り。
私が学生時代に訪れた、沖縄 波照間島の風景がリアルな感覚としてよみがえってきて、深刻な場面もに深刻になりすぎず、爽やかに感じさせてくれました。
私の場合は波照間島でしたが、人によって想像する島も違いそうで、その想像させる余白、みたいなものがまたすごい。
そして、主人公のまりあは妊婦さんなのですが、胎動や出産の描写もリアルです。
胎動の描写には、私が妊娠していた頃の息子たちの胎動を鮮明に思い出しました。
ぽこんと突き出す足、ぐにぐに動く手、小さく丸い頭。懐かしくてちょっと涙が出ました。
リアルに感じさせるのに生々しくない、やさしい文体なのがまた絶妙。
自分も島にいて、登場人物たちの隣にいてずっと見守っているような、そんな感じのお話でした。
あと、つるかめ先生の
リラックスっていうのは、緩むことでしょう。緩んでないと、いざという時に力が入らないの。
都会の人達は、がんばってがんばってリラックスするんだから、ほんと、笑っちゃうわよねー
という言葉にはなんだかハッとしました。
私は頑張らないと休めなかったし、リラックスしたときの体の緩み方も、最近になって思い出したばかり。
お休みが必要なまでに傷ついてしまった心は、
お腹で赤ちゃんを育てるみたいに、
身体の声を聞いて、育て直すようにして癒していく必要があるのかな、と感じます。
少し気を抜くと勝手に頑張ろうとする私は、自分を妊婦だと思って過ごすくらいがちょうど良いのもしれません。
リラックスする感覚を忘れそうになったら、また読みなおそうと思います。
そして、巻末の対談を読むと、小川糸さんは出産経験はないのだそう。
インタビューと自分の想像だけで、こんなにリアルな描写が出来るなんて。
プロの小説家って、本当にすごい。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたサポートは、日々を乗りきるため「自分へのご褒美」に使わせて頂きます🍀
ちょっと良いコーヒー、ハーブティー、豪華ランチ、大好きな本を買う、お出かけ資金…何に使おうかな🎵