【読書感想文】 生きづらさからの解放、かと思いきや『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
休職して、あれは確か2回目の通院日。
待ち時間がかなり長い事が分かり、時間を潰すため書店へ立ち寄っていました。
気ままに棚を見て回っていたとき、ふと目に止まり吸い寄せられるようにして手に取りました。
オードリー若林さんの著書の文庫版です。
(モンゴル、アイスランド、あとがきが文庫版書き下ろし)
若林さんの印象は「人見知りを卒業した人」のイメージでした。
その元人見知りの若林さんが、紀行文?しかも一人旅?と意外に感じ、興味をひかれました。
2回目の通院時に一度読みきったのですが、読了した感想は「面白かったな、旅行行きたいな」程度でした。
そして、休職生活も卒業か?という7月の受診日、何となくもう一度読みたくなって待合室で読んだら、最初読んだときよりも圧倒的に面白かったんです。
心に小さな引っ掻き傷が残るような面白さでした。
感想文
キューバ
新自由主義とは?
資本主義とは違った社会主義の世界とは?
といったテーマを持って(?)、キューバを訪れた若林さん。
旅も後半へ進むにつれて、亡くなられた、愛するお父様に思いを馳せ、対話していきます。
日本の人見知りとキューバの人見知りの空気感が面白かったです。
当たり前ですが、そりゃキューバにもいろんな人がいますよね。笑
モンゴル
モンゴルでお邪魔した遊牧民族のゲルで、ご夫婦の姿から結婚について考えた若林さん。
昨年めでたく結婚されましたね!
同じ方向に向かって、同じペースで歩けるような、素敵な女性を見つけられたんですね。
アイスランド
ツアーに溶け込むまで手に汗握る(?)葛藤がありましたが、それでもずいぶん旅慣れて、リラックスして楽しめている様子が伝わってきます。
オーロラの下での「パピコ」の印象があまりに強すぎて、色々持っていかれてしまった。笑
あとがき コロナ後の東京
旅好きな私にとって、旅は「自然に近い自分を取り戻すきっかけ」です。
旅の最中は色んな意味で「生きづらさ」を手放すことができます。
若林さんも、現代社会の中で「生きづらさ」を抱えるひとり。
旅の中で、ずいぶん自分を解放している印象がありました。
旅によって「生きづらさ」から解放された…のかと思いきや、若林さんの出した結論は「このままで良い」でした。
一番印象が強かった箇所を引用します。
3ヵ国に行って感じた、サル山と資本主義の格差と分断から自由になれる隠しコマンド。俺にとってそれは"血の通った関係と没頭"だった。
傷つけば血が流れる、その繋がりのことを言っている。だから、似たようなことで傷ついてきた者同士が出会ったり、共通の敵と戦った者同士であったり。そういう絆には経済を越えて強い結びつきがある。
(中略)
そういった存在との血の通った関係は、生き辛い道のりを歩く灯火になる。
俺にとっての自信とは、欠落があったからこそ巡り会えた価値だ。
それがあったからこそ、血が通った関係や仕事や趣味に出逢えた。そして、それはサル山の序列と経済と世間が届かない場所まで俺を運んでくれる。
俺はボンネットを開けて欠落の構造を理解した時に、これからもずっと生き辛いだろうし、そして、これからも大切な価値にたくさん出逢うだろうという諦念と感謝が同時に生まれた。
新自由主義と資本主義の中で生きていくことは、格差と分断の中で生きていくことだから基本的にはずっと生き辛い。時に資本主義の外的価値に心を乗っ取られ、時に血が通った関係と没頭によってそれを打破する。それを繰り返していくしかないのだろう。
若林さんが表現する「血の通った関係」
それが私にとっては、noteを始めて出逢えたたくさんの「仲間」との関係を思わせました。
私は本来気分の波が大きく、ありのままの自分では社会的に破綻してしまいます。
そのため自分を矯正し、現代の日本社会に適応してきました。
自分の心身からの声に蓋をして、頑張って適応しようとしすぎた結果が、適応障害による3ヶ月間の休職でした。
でも、その経験があったからこそnoteで「仲間」に出逢えた。
卑屈な感情が含まれない、純度100%の感謝の気持ち。
少しでも前に進もうともがく人に抱く、損得の一切ない、祈りにも似た応援の気持ち。
「血の通った関係」があったからこそ、気分の波が大きいのが本来の私なんだと、自分を初めて認めてあげられたような気がしています。
格差と分断の中で生きるため、私はnoteで出逢えた「仲間」を、決して忘れないようにしたいです。
それがきっと、休職という長旅から帰った後の私を支えてくれるはずだから。
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