小さな旅・思い立つ旅|静かに、ゆっくり、過ごすカフェ[鈍考、時の納屋、イヴェールボスケ]
早口だけだと、疲れちゃう
なんでも指先ひとつでスワイプできてしまう時代。いかに短時間で想いを伝えるかが求められ、音楽はイントロをそぎ落とし、いきなりサビへ。動画は間を詰め、早口でまくし立てる。
SNS上の議論を眺めても、喧嘩腰の早口の言葉の交換は、聴いててすぐに疲れちゃう。声の大きい人の意見で、場の空気が支配されるのは、やっぱり健全ではない。
想いがあっても、早く言葉にできない人はいる。その人のためにも、早口で声を張るのではなく、まずは耳を傾け、受け止める。じゃないと、議論は深まらない。最後まで聞かずに議論を遮っちゃうと、もともと喋っていた人の意見が、最後に違う展開になることすら気づかない。
静かに、ゆっくり、心地よく

暇をすごす場所
窓辺に差し込む光のなかで一服。海を眺めてただぼんやりする。虫の音に耳を澄ませながら本を開く______
何もしなくていい時間、手が空いたような状態を“暇”と呼ぶならば、その“暇”を存分に愉しみたい。
哲学者・國分功一郎は「退屈や暇をどう生きるか」という問いを立て、歴史的に定住民族として得た“暇”や“気晴らし”が、文化や文明を大きく変えてきた、と述べている。
暇が生まれるとどう飾るかが重要__
暇を得た現代も芸術作品を味わい、生活を彩り、楽しむことになる。
ということで、心地よく暇を過ごす場所へ____
ここで紹介する3つの建築は、すべて堀部安嗣の設計によるもの。依頼者が「静かに、ゆっくり、心地よく過ごしたい」と願い、堀部さんにたどり着く。堀部さんは、忙しい日常に余白を与えてくれる、そんな建築家。
暇な人でありたい

鈍考donkou|京都
ゆっくり流れる時間と読書と珈琲

時間の流れの遅い場所をつくりたい。
人を取り巻く日々の流れが加速するなか、社会のシステムやテクノロジーが求める速度から、敢えて鈍くあること。そして、人としての愉しさや健やかさについて自発的に考え続けること。それが、「鈍考」で促したい時間です。
ブックディレクターのBACH幅允孝さんが京都につくった私設図書館。完全予約制、定員わずか6人。
3000冊の書籍から気になる一冊を手に取り、ひのき林の借景が美しい庭を眺めながら読書に耽る。一息ついたタイミングで、珈琲を頂く。ネルドリップでゆっくり抽出するその時間も愛おしい。




時の納屋|香川
風景に静かに寄り添う

80mの小径を抜けると、瀬戸内海と建物がゆっくり姿を現す。さぬきの風土に呼応するように建てられた木造の納屋は、海と向き合う静かな場所。風景と自分が、ゆるやかに溶け合っていく。
かつて温浴施設があった土地。国立公園として再生されたランドスケープはとても心地いい。長いアプローチ、海をトリミングする丘、木造の納屋。まだ完成して日は浅いけど、これからゆっくりと風景に馴染み、時を重ねていくのが楽しみな場所。




イヴェールボスケ|石川
田園風景の余白に佇む

石川県片山津温泉のほど近く。田園風景のなかにひっそりと佇み、風の音や虫の音、陽の揺らぎを気づかせてくれる。そんな余白のある場所。
イヴェールボスケ(Hiver Bosque)は、フランス語で「冬の森」。静かな季節の凛とした空気の中に、木立のように立ち上がる存在でありたいという願いが込められている。
正方形の寄棟平家、真っ黒な外観の中、温かな木の玄関扉が訪れる人を迎え入れてくれる。室内で会話はできない。静かな空間で、時間をほどき、速度をゆるめ、深呼吸を誘う、そんな場所。




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