「減塩の味噌ってありますか?」無添加食品店の店長が、味噌と塩分について考えたこと。
「減塩の味噌ってありますか?」
味噌売り場で、よく聞かれる質問です。
「塩分を控えたいから」
「なんとなく減塩の方が体に良さそうだから」
そんな理由で、減塩味噌を探される方も少なくありません。
もちろん、塩分を摂りすぎないことは大切です。
これは間違いありません。
でも、味噌の話になると、
「味噌=塩分が多い=体に悪い」
というイメージが、どうしても先に出てきます。
実は、自分も以前はそう思っていました。
味噌は発酵食品だから、毎日摂りたい。
でも、
「味噌って塩分が多いよな……」
そんな引っかかりがありました。
そんな自分の考えが変わるきっかけになったのが、会社の勉強会です。
ある日、味噌について学ぶ機会があり、味噌作りのプロの方から話を聞きました。
そこで教えてもらったことが、とても印象に残っています。
「味噌に含まれる塩分を、単純に食塩と同じように考えるのは違う」
ということ。
「えっ、そうなの?」
正直、そんな感じでした。
そこから自分でも調べてみました。
すると、
「味噌は塩分が多いから、体に悪い」
だけでは説明できないことが見えてきました。
今回は、売り場で実際に受ける
「減塩の味噌ってありますか?」
という質問を入り口に、
味噌と塩分について、自分が学んだことを整理してみます。
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まず、味噌に塩分が多いのは事実です。
ここは最初にはっきりさせておきます。
味噌は、塩分を含む食品です。
だから、
「味噌なら塩分を気にしなくていい」
という話ではありません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の食塩相当量の目標量は、
👉 男性:7.5g/日未満
👉 女性:6.5g/日未満
とされています。
また、高血圧や慢性腎臓病(CKD)の重症化予防を目的とする食塩相当量は、男女とも6.0g/日未満とされています。
日本高血圧学会も、高血圧の人には1日6g未満の減塩を推奨しています。
なので、
「減塩なんて必要ない」
ということではありません。
ここは大切です。
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じゃあ、なぜ「味噌=塩分=悪い」と言い切れないのか。
ここが今回、自分が一番興味を持ったところです。
味噌には塩分が含まれています。
でも、味噌は「塩」だけを食べているわけではありません。
大豆や米、麦などを原料として、微生物の働きによって発酵・熟成させた食品です。
つまり、
「塩分が入っている食品」
という一面だけで味噌全体を評価するのは、少し乱暴なんじゃないか。
そう考えるようになりました。
そして、実際に研究を調べてみると、さらに興味深い結果がありました。
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「味噌汁を飲む=血圧が上がる」ではなかった。
2017年に発表された日本人を対象とした研究があります。
50~81歳の527人を対象に、味噌汁を飲む頻度と血圧などの関係を調べた研究です。
味噌汁を飲む頻度によって4つのグループに分けて調べたところ、
味噌汁を飲む頻度と血圧との間に、明確な悪い関連は確認されませんでした。
ここで注意したいのは、
「味噌汁を飲むと血圧が下がることが証明された」
という研究ではないこと。
あくまで、
「味噌汁をよく飲む人ほど血圧が高い」という単純な関係は、この研究では確認されなかった。
という話です。
この違いは大事です。
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さらに大きな研究もありました。
2018年に発表された研究では、
20歳以上の日本人25,738人
を対象に、醤油や味噌の摂取量と血圧との関係が調べられています。
その結果、
味噌や醤油の摂取量と血圧との間に、明確な関連は確認されませんでした。
また、女性で単純に集計すると摂取量が多い人ほど高血圧の割合が高い傾向がありましたが、年齢などの要因を調整すると、その関連は確認されませんでした。
もちろん、これも「味噌が血圧を下げる」という証明ではありません。
この研究は横断研究なので、原因と結果を直接証明するものでもありません。
でも、
「味噌に塩分がある」
=
「味噌を食べると血圧が上がる」
と単純に考えることにも、慎重になる必要がある。
自分は、そう感じました。
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「塩分がある」という一つの情報だけでは、食品は語れない。
さらに、味噌汁についての研究をまとめたレビューでは、
味噌に含まれる塩分と、同程度の食塩を摂取した場合とでは、血圧などへの影響が同じとは限らない可能性
について検討されています。
味噌には、塩分以外にもさまざまな成分があります。
発酵によって生まれる成分もあります。
だから、
👉 「塩分○gだから、この食品は体に悪い」
と、食品を一つの数字だけで判断するのは難しい。
これは、前回の「無添加なら安心」という話にもつながります。
食品って、
一つの言葉だけでは判断できないんです。
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だからといって「味噌は健康食品だから、いくら食べてもいい」ではない。
ここは絶対に書いておきたい。
今回の記事を読んで、
「じゃあ味噌は塩分を気にしなくていいんだ!」
とは思わないでください。
そんな話ではありません。
食塩の摂りすぎは、高血圧などとの関連が明確に認められており、減塩は重要です。
厚生労働省も、食塩の摂りすぎは高血圧に影響するとしています。
だから、
減塩が必要な人は、きちんと減塩する。
これは大前提。
特に医師や管理栄養士から食塩制限を指示されている方は、自己判断で変更しない方がいいと思います。
そのうえで、
「味噌に塩分があるから、味噌そのものを避ける」
というところまで行く必要はないのではないか。
自分は、そう考えています。
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自分は「食事全体」で考えるようになりました。
自分自身も、以前は味噌の塩分を気にしていました。
味噌は発酵食品だし、毎日摂りたい。
でも、
「塩分が多いんだよなぁ……」
と。
ただ、自分の食生活を振り返ったとき、
味噌だけを切り取って考える必要はないな、
と思うようになりました。
自分は1日1食なので、食事全体の量も含めて考えています。
もちろん、
「1日1食だから塩分は問題ない」
という意味ではありません。
人によって必要な量も、健康状態も違います。
だからこそ、
👉 味噌だけを見るのではなく、一日の食事全体を見る。
この考え方が大切だと思っています。
例えば、
味噌汁を飲む。
その代わり、他の料理では塩分の多い調味料を控える。
加工食品や外食が多かった日は、他の食事を少しあっさりさせる。
そうやって、
食事全体でバランスを取る。
その方が、無理なく続けやすい人もいると思います。
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そもそも「減塩=正解」だけで味噌を選んでいいのか?
ここは、売り場に立っているからこそ感じることです。
味噌は、とにかく種類が多い。
米味噌。
麦味噌。
豆味噌。
合わせ味噌。
甘口。
辛口。
赤味噌。
白味噌。
天然醸造。
速醸。
本当にいろいろあります。
だから、
「減塩かどうか」
だけを最初に見るより、
自分ならまず、
👉 「何に使いますか?」
と聞きます。
味噌汁なのか。
豚汁なのか。
味噌炒めなのか。
料理の隠し味なのか。
毎日使うのか。
たまに使うのか。
用途によって、選び方は変わります。
前回の記事でも書きましたが、
「おすすめはどれですか?」
と聞かれても、
誰にでも同じ味噌をおすすめすることはできません。
食品は、
その人の生活に合っているか。
そこまで考えて初めて、選択になると思っています。
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減塩味噌も、一つの選択肢。
ここまで書いておいて、
「じゃあ減塩味噌は必要ないの?」
と思われるかもしれません。
そんなことはありません。
減塩味噌も、もちろん選択肢の一つです。
特に、
塩分摂取量を減らす必要がある人にとっては、食品全体から塩分を減らしていくことが大切です。
ただ、
「なんとなく減塩の方が健康そう」
だけで選ぶのではなく、
👉 自分は一日にどれくらい塩分を摂っているのか。
👉 味噌以外に、どんな食品から塩分を摂っているのか。
👉 その味噌を何に使うのか。
そこまで考えてみる。
それが、より現実的な食品選びだと思います。
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自分が味噌について考えるようになったきっかけ。
勉強会で、プロの方から話を聞いたこと。
それが、自分にとって大きなきっかけでした。
それまでは、
「塩分が多いなら、なるべく減らした方がいい。」
くらいに考えていました。
でも、
「本当にそれだけでいいのかな?」
と思うようになった。
そして、自分でも研究を調べてみた。
すると、
味噌に塩分が含まれていることは事実。
でも、
「味噌=塩分が多い=体に悪い」
と単純に結論づけることもできない。
この両方が分かりました。
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「減塩するか、しないか」の二択じゃない。
自分が今回調べて、一番感じたことです。
塩分は大切です。
摂りすぎないことも大切です。
でも、
「減塩だから良い」
「塩分があるから悪い」
という二択だけで食品を考える必要はない。
味噌には、
発酵食品としての魅力があります。
料理をおいしくする役割もあります。
そして何より、
毎日の食卓に昔からある食品です。
だから自分は、
味噌を選ぶとき、
「減塩かどうか」だけを見るのではなく、
👉 何に使うのか。
👉 どれくらい使うのか。
👉 他の食事はどうなっているのか。
👉 自分や家族に合っているのか。
そこまで考えたい。
結局、
「何を食べるか」だけじゃなく、
「食事全体をどう組み立てるか」。
なんだと思います。
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そして、これは味噌だけの話ではありません。
無添加だから安心。
国産だから安心。
オーガニックだから安心。
減塩だから安心。
天然醸造だから安心。
どれも、
一つの情報としては大切です。
でも、
それだけで食品の良し悪しを決めるものではない。
これが、無添加食品店で働いてきた自分が、少しずつ身につけてきた食品選びの考え方です。
だから今日も売り場で、
「何を買うか」より、
「どう選ぶか」。
その考え方を伝えています。
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【次回予告】
ここまで書いてきて、
「じゃあ、これからの店員に何ができるんだろう?」
と、自分自身も考えるようになりました。
AIに聞けば、商品知識はすぐに手に入る。
口コミも見られる。
商品の比較もできる。
それでも、毎日売り場に立っていると、
「店員だからこそできることは、まだある。」
そう感じます。
お客様が本当に求めているものを、一緒に探すこと。
「おすすめ」を押し付けるのではなく、選ぶための視点を伝えること。
分からないことは、AIやメーカーに確認して、正しい情報を届けること。
そして、
「この商品を買えば正解です」ではなく、
「自分に合うものを、自分で選べるようになる」
そんなお手伝いをすること。
次回はもう少し踏み込んで、
「AIに負けない店員って、どんな店員なんだろう?」
をテーマに、
これからの時代に、店員にできること。
そして、店員にしかできないこと。
について、無添加食品店の店長として考えてみます。
「知識がある人」から、
「選べるようにする人」へ。
店員の価値は、これからどう変わっていくのか。
自分なりに言語化してみます
【関連記事】
👉無添加食品店の店長をやって、正直しんどかった話(有料)
「健康のため」のはずなのに、
苦しくなってしまう。
売り場で見てきた、
かなりリアルな話を書いています👇
※この記事について
この記事は、味噌や食塩についての研究・公的資料を参考に、食品販売の現場で働く自分が考えたことをまとめたものです。
味噌を食べれば血圧が下がる、減塩は必要ない、ということを示す記事ではありません。
血圧や腎臓病などで医師から食塩制限を指示されている方は、一般的な情報ではなく、主治医や管理栄養士の指示を優先してください。
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今回のエビデンス部分は、「味噌は塩分が多いから悪い」という単純化に疑問を投げかける材料として使っています。研究の多くは観察研究・レビューであり、「味噌を毎日1〜2杯飲めば健康になる」と因果関係を証明したものではありません。そこを曖昧にしなかったのが、今回の記事の一番大事なところです。
参考にした主な資料
* 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」— 成人の食塩相当量の目標量、ならびに高血圧・CKD重症化予防のための6g未満。
* 日本高血圧学会「さあ、減塩!」— 高血圧予防・治療における減塩の考え方。
* Ito et al., Internal Medicine (2017) — 味噌汁摂取頻度と血圧等の横断研究。
* Okada et al., Nutrients (2018) — 日本人25,738人における味噌・醤油摂取量と血圧の横断研究。
* Ito, Environmental Health and Preventive Medicine (2020) — 味噌汁摂取と血圧等についてのレビュー。
