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扉|風まかせ文芸部

■お断り■
途中不適切な言葉が出てきます。
ご不快に思われる方はここでお止めください。

また、最後にご紹介している曲を聴きながら読むと、より雰囲気が高まるかもしれません。お試しください。
それではどうぞ。



扉は開かない。
押しても引いても、呼び鈴を鳴らしても、叩いても扉は開かない。
ここは死ぬる門じゃないのかよ。
生きてるのがイヤになって、俺は死んだんだよ。

友達もいねえし、家族もいねえし、恋人なんていたことねえし、俺はずっと独りだったよ。
それでもまだ仕事してた頃は色んな奴と絡むこともあったし、たまには飲み会に参加したりなんかして楽しい時もあったんだよ。
でも定年してから、そういう社会とも徐々に縁が薄くなって、誰とも連絡取らなくなってからずっと独りなんだよ。
何もできない何も感じられない、よぼよぼのジジイなら良かったんだけど、シルバーでまだ働けるってのは絶望しかないよな。
わずかな時間でわずかな金を得て、俺にどうしろってんだよ。

だから終わりにしたんだよ。
それなのにこの扉が開かないと次へ進めないじゃん。
ここでずっと扉が開くのを待てってか?
俺の人生っポイっちゃポイけどさ、ここまで来てそれはねえだろ?

『開けてくれよ』

ドォ~ン!

『次へ進みたいんだよ』

ドォ~ン!

『開けてくれるまで扉叩くぞ』

ドォ~ン!

『頼むからさぁ』

ドォ~ン!

『ちゃんと終わりにしたいんだよ』

ドォ~ン!

『さっきからうるさいぞ、誰だうちの門を叩くヤツは』

『やっとお出ましか。あんたがここの番人かい?』

『番人だと? ここは俺の家だ』

『死ぬる門ではないのか?』

『見当違いもいいとこだぞ小僧。因みに俺の職場は始まりの門だがな』

『見当違いだって』

『死ぬる門はここから七里先の山ん中だ』

『それはすまなかった、迷惑掛けちまったな』

『誰にでも間違いはある。そんなことはいいが、これから向かうのか?』

『早く行きたいんだ』

『止めはせんが、途中お前を喰おうとする魔物が大勢いるから気を付けろ』

『俺はもう死んでるんだろ』

『だが扉を叩けるということは形が残ってるということだ』

『だから喰われることもできると?』

『呑み込みが早いな』

『魔物に喰われたらどうなる?』

『安心しろ、指でも目玉でも一部が辿り着ければ無事死ぬる門は開くよ』

『死ぬる門に辿り着ければ晴れて死人しびとになれるんだな』

『本当に行く気か?』

『ひとつ聞いていいか』

『なんだ』

『魔物たちと戦うすべはあるのか?』

『運だけだ』

『なら無理だな』

『どうしてだ』

『俺ほど運の悪い生を送ったヤツも少ないだろうよ』

『ハハハ、絶望だな』

『もうひとつ聞きたい』

『都合ふたつになるが?』

『ダメなのか』

『いいだろ』

『あんたの職場の始まりの門ってなんだ?』

『知りたいか』

『教えてくれ』

『小僧のような迷える子羊を現世うつしよに戻すための門だよ』

『死ぬ前に戻せるって?』

『それも可能だが、多くの者は生まれ変わりを望むな』

『いちからやり直すのも可能なのか』

『そう言ったつもりだが』

『どこにその職場はあるんだ?』

『俺の家の中だ』

『つまりこの扉の先か』

『そういうことになるな』

『どうすればその門を潜れる?』

『門が開く時間は決まっておる。明日の開門を待つんだな』

『それはいつだ?』

『今からだと6時間先だな』

『ここに魔物は?』

『来る』

『俺はやはり喰われて終わるってことか』

『だから運があれば』

『もうとっくに尽きてるよ』

『それは残念だな』

『色々ありがとう。時間取らせて悪かったな』

『どうということはない』

『だけど、ここへ来てまで知識を得ることになるとは思わなかった』

『どうするつもりだ』

『6時間何とか粘ってみるわ』

『尽きた運に賭けるってことか』

『ああ』

『死ぬる門はどうする?』

『やり直しができるんならって思ったんだ。負けっ放しも癪だしな』

『方針転換か』

『カッコ悪いよな』

『それもまた良しだ』

『じゃあな、おっさん』

『ちょっと待て』

『まだ何かあるのか?』

『始まりの門を目指すことにしたんだな?』

『カッコ悪いけどな』

『それなら俺の客人だ』

『客人?』

『門が開くまで安全な場所を提供できるということだ』

『そんなことができるのか?』

『ああ』

『魔物にも会わないのか』

『ああ』

『早く言えよ、おっさん』

『小僧はさっきまで死ぬる門を目指したんじゃなかったのか?』

『そうだけどさ』

『死ぬる門を目指すヤツは客人にはなれぬ』

『そういうことか』

『それに小僧は俺のなりを見ても顔色一つ変えなかった』

『そういやおっさん、鬼の形相って言葉がピッタリな顔してるもんな』

『恐ろしくはないのか』

『俺一応死んでるからな、怖いモンなんてねえよ』

『そんなものか』

『でも改めてみると相当恐ろしい顔してんな、おっさん』

『小僧、お前面白いな』

『そんなこと言われたことねえよ』

『俺は気に入ったぞ』

『おっさんに気に入られてもな』

『そう言うな、まずは中に入れ』

『悪いな』

『飯がいいか? 風呂もあるぞ』

『死んでるとそういうのって必要ないんだよ』

『死人だが女もいるぞ。もちろん寝床も提供しよう』

『急に親切なんだな』

『面白いヤツは歓迎だ』

『変わったおっさんだぜ、まったく』

『小僧、ずっとここで暮らさないか』

『俺も門番になれと?』

『俺の相棒でどうだってことだよ』

『それもいいかもな、おっさん』


このお話しはフィクションです。
途中不適切な言葉もありますが、話の流れから敢えて使いました。
ご了承ください。

iさま 参加させていただきます。
よろしくお願いします。
もし、不適切な言葉が無理であればそのまま捨て置いてください。

椎名林檎  /  あの世の門

結論は出てないけど TALES への投稿止めました。中途半端。

#風まかせ文芸部 #扉 #椎名林檎 #あの世の門