見上げる月に|片想い文芸部
月を見上げると想い出す女性がいる。
あの方は吾がどれだけ口説こうとも情けは受けなかった。
そういえば吾の手を取らなかったのは後にも先にもあの方だけ。
そして、手の届かぬはるか遠くへ旅立った。
吾の中では神か仏か、はたまた伝説となったあの方。
ずいぶんと嫌われているのかと思ったが、あの方からのお誘いで月を見上げながら酒を酌み交わしたのがたった一度の想い出。
そのとき不意に星が流れた。
『願い事はなさいましたか?』
『どうせ叶わぬからせなんだ』
『それは残念でござりましたな』
『叶うことはあるのであろうか』
『さて、それはどうでござりましょうなぁ』
『叶うのであれば、も一度星を流してみしょうほどに』
そんな戯れ言を申しながら時の移り変わりを眺めていた。
涙が出るほどに美しい時間であった。
世に女性は星の数ほどいると申すが輝く星はほんの少し。
その中の一つに巡り合えただけでも幸運と言えるのかもしれない。
だが、月や星が輝く夜を迎えると、どうしてもあの人が浮かび、新しい愛や恋に踏み出す気になれない。
もう一度逢いたい、もう一度声を聴きたい、もう一度ともに時を過ごしたい、出来ることなら少しでも触れてみたい。
夜は好きだが切なすぎるな。
戻って来てはくれまいか…………かぐや。
ナルさま 今回も参加させていただきます。
よろしくお願いします。
桑田佳祐 / 月
