かさじぞういぶん
昔々、あるところに決して裕福ではない、おじいさんとおばあさんが山里に住んでおりました。
年の瀬が近い頃、おじいさんは生活の足しにするため、手作りの笠を町へ売りに出かけます。
でも…………一つも売れませんでした。
雪が降りしきる中、肩を落として帰る途中、道端に並ぶ六体のお地蔵さまがいらっしゃいました。
そのお地蔵さまたちは頭に雪をかぶり寒そうに立ってらっしゃいます。
おじいさんは気の毒に思い、売れなかった笠をひとつずつ、お地蔵さまたちの頭にかぶせてあげます。
ところが…………笠は五つしかありません。
最後の一体には、自分がかぶる笠をかぶせてあげました。
家に帰ると、おばあさんは「商いはどうでしたか?」と尋ねました。
おじいさんは「ひとつも売れんかった。じゃが帰る途中にお地蔵さまがいらっしゃってのぅ、雪をかぶり寒そうにしてらっしゃったから、笠をかぶせてあげたんじゃ」
おばあさんは「それは良いことをなさいましたね」とおじいさんを労いました。
その夜…………雪がしんしんと降りしきる中、家の外から重いものを引きずる音が聞こえてきます。
翌朝、戸を開けてみるとそこには…………米や餅、魚、酒、薪など、正月を過ごすのに十分すぎるほどの贈り物が山のように置かれていました。
おじいさんとおばあさんは、あのときのお地蔵さまが恩返しをしてくれたのだと悟り、その後、温かく幸せな正月を迎えたのでした。

「おい、どこへ行くんじゃ?」
「この雪じゃ、今夜はもう誰もここを通らんじゃろうて」
「そりゃそうじゃろうなぁ」
「さっきの荷運びに寒さも手伝って身体がガタガタじゃ。ちょっくらすぐそこの温泉にでも浸かってこようかと思っておる」
「そんな勝手が許されるのか?」
「じゃから誰も通らんじゃろうて」
「なら皆で行くか?」
「年に一度の正月じゃからなぁ」
「ただいま留守にしておりますとでも書いた紙を置いておくか?」
「おぉ、備えあれば憂いなしじゃな」
こうして雪が降りしきる中、元日を迎えたお地蔵さまたちはワイワイガヤガヤと連れだって近くの温泉へ参るのでした。
もちろん、人の営みが始まる頃までには元の位置へと戻られており、皆さまには一切ご存知なきこと。
「おまえさん、わしの隣じゃったか?」
「場所などどこでも構わんじゃろ」
「何ゆえ前掛けは赤なんじゃ?」
「もっといろんな色があれば良いのになぁ」
「いやいや、後ろ向きはまずかろう」
「さすがにバレるかのぉ」
「ワシの笠がのうなったが誰ぞ知らぬか?」
「こやつがふたつかぶっておるぞ」
「儂だけ背が少し低いでな、カサ増しじゃ」
「それにどれだけ意味があるんかのぉ?」
実は元の位置へ戻る最中も、やれ最前と場所が違うとか、わしの笠がないなどと、それぞれがにぎやかに話しておったのですが、それも皆様のご存じなきことでございます。
第42回 3つのお題(日本むかし話)
お題①:「かさじぞうと雪の夜」
お題④:イラストから空想した世界を書いて下さい。
みかんさん 参加させていただきます
よろしくお願いします
ピチカート・ファイブ / 雪漫々
#3つのお題に空想のひらめきを #ピチカート・ファイブ #雪漫々 #十問答
