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『山背国風土記』逸文

⇩⇩⇩こちらの企画に参加させていただきます⇩⇩⇩

みかんさん お世話になります。
今回はちょっと雰囲気を変えてみました。
よろしくお願いします。

第51回 3つのお題(ファンタジー)
  お題①:「月のブランコ」
  お題②:「雨上がりのドラゴン」
  お題③:「七色の扉」
  お題④イラストから空想した世界を書いて下さい。

創作のルール(いつものゆるルール)
 ・3つすべて使ってもOK、気に入った1つだけでもOK
 ・詩、童話、掌編、ヘンテコ物語、なんでもござれ
 ・自由に、即興でも、のびのびと
 ・今回のお題は難易度高めですが、チャレンジお待ちしています。

参加について(自由参加・ゆるっと歓迎)
 ・このお題を使って、自由に表現してみてください。
 ・投稿の際には、ハッシュタグ #3つのお題に空想のひらめきを
 ・このページを貼り付けて下さい。

『山背国風土記』逸文

後世の写本にのみ見ゆる断簡なりと伝ふ。巻数不詳。


紫谷条

山背国やましろのくに葛野郡かどのぐん紫谷むらさきだにといふ処あり。

郡家より西二十余里にして、三峰相連みつみねあいつらなりて谷をなせり。
谷中には清泉多く、岩間ごとに水たまりて鏡のごとくなり、五月雨の頃には紫の花あまた咲きて谷を埋む。
これによりて紫谷といふ。

この谷につき古老の伝へて曰く、上つ代、この地には名なきもの在りき。
その形を見たる者少なく、その名を知る者なし。
されど雨過ぎて虹立つ時、そのものは谷の水鏡に影を宿せり。
影は青く長くして、光を帯び、水にのみ在りて空には見えず。
ゆえに里人これを畏れ、ただ「ミズカガミノモノ」とのみ呼びて、その名を問はざり。

昔、大和の朝廷に仕へし一人の采女、この谷を過ぎたり。
時に五月雨晴れ、虹、峰より峰へ懸かりたり。
采女、その美しきに心惹かれて谷に入り、水鏡に映れる虹を眺めしが、忽ちその虹動きて青きものとなるを見たり。
怪しみて近づけば、そのものもまた近づくごとく見え、退けばまた遠ざかるごとく見えたり。
しかれど終に水の外へ現るることなし。

采女これを見て都へ帰り、朝廷の人々に語りたり。
人々これを怪しみ、あるいは龍ならむと言ひ、あるいは谷の神ならむと言ひ、あるいは水気の惑はしなりと言ひて定まらず。

ここに一人の老翁ありて曰く、

「それは龍にもあらず、神にもあらず。名づけ得ぬものなればこそ、久しくこの谷に留まりしなり。もし人これに名を与へば、その時は失せむ」と。

後日、采女ふたたび谷を訪ねしが、前に見しものを見出すこと能はず。
ただ雨後の水鏡に青き光の揺らぐのみなり。

されば里人曰く、

「この谷の名は花によりて起これども、その花を咲かしむるはミズカガミノモノなり」と。

今日こんにちに至るまで五月雨の後、虹立つ時は谷の水鏡に青き影見ゆることあり。
見たりといふ者あれども、その形を同じく語る者なし。

ゆえにそのものの名は遂に伝はらず。

ただ谷のみ残りて、紫谷といへり。

Badfinger  /  Without You

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