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DXがうまくいかない本当の理由——「施主不在」という構造的な盲点

システムを入れた。
業務フローも見直した。
ツールの説明会も開いた。

それでも現場は変わらない。

「リテラシーが低いのか。
周知が足りなかったのか。」

そう自問しながら、また次のプロジェクトが始まる。
お金と労力をかけた割に、何かが変わった実感がない。
でも、何が足りないのかがわからない。

もしあなたが情報システム部門やDX推進の立場にいて、このじわじわとした違和感を感じているとしたら、それは能力の問題でも、予算の問題でも、現場の問題でもないかもしれません。


「施工者」だけいて、「施主」がいない

建築に例えると、わかりやすくなります。

建物を建てるとき、そこには3つの役割があります。
「この家でどんな暮らしをしたいか」という想いを持つ施主。その想いを設計図に落とす設計者。
設計図通りに建てる施工者。

施主が描くのは「何部屋必要か」ではありません。「家族がどこでどう集まり、どんな時間を過ごすか」というライフスタイルそのものです。
その想いが設計者に伝わって初めて、住む人に合った家になる。

DXの現場に置き換えると、施工者(システムを作るエンジニア)はいます。
でも、肝心の施主の想いはどこにあるでしょうか?

「こういう組織でありたい」「この仕事でこんな価値を生みたい」という想いを持つ人はいても、それが設計の起点になっていない。
あるいは、そもそもその想いが言語化されないまま、「とりあえずDXを進めろ」という指示だけが降りてくる。

使われないシステムのほとんどは、技術の問題ではありません。
施主の想いが、設計の起点になっていないのです。


「何を作るか」は決められる。でも「なぜそれが価値なのか」が言えない

情報システム部門が「効率化の請負部署」になっていくのは、ある意味、自然な流れです。
要件を受け取って、作って、納める。その繰り返しの中で、「なぜこれを作るのか」を問う習慣が失われていく。

やってもやっても成果が出ない違和感の正体は、ここにあります。
効率化は達成している。
でも、誰のどんな意図のために、その効率化があるのかが設計されていない。
だから現場に届かない。

経営から「DXの成果を報告せよ」と言われたとき、導入したシステムの数やコスト削減額は報告できるかもしれません。
でも、「組織がどう変わったか」を語ろうとすると、言葉が出てこない。
それは成果がなかったのではなく、そもそも「どう変わりたいのか」が設計の起点になっていなかったからです。


あなたの組織に、この問は答えられますか?

あなたの組織のDXプロジェクトに、こう問いかけてみてください。

「このシステムは、誰の、どんな想いを実現するためにありますか?」

すぐに答えられるなら、あなたの組織の設計は機能しています。
もし答えに詰まるなら、足りないのは技術でも予算でもなく、施主の想いを仕組みに変換する力かもしれません。


この連載では、DXの推進に関わるすべての人が直面する「構造的な盲点」を、隔週で掘り下げています。
次回もお読みいただけたら嬉しいです。
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