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DIYの極意──自ら世界と戯れろ

はじめに──DIYとは何なのか

もしあなたが、何かを始める時に戸惑いを感じていたり、何かに行き詰まっているなら。

あるいは、先の見えないモヤモヤの中にいると感じていたり、キャリアや人生、あるいは組織に何か変化をもたらしたいと思っているなら。

ぜひ、この先を読み進めてほしい。

これから紹介するのは、そうした状況を打開し、窮地に立たされても何度も突破口を見出してきた考え方であり、私個人だけではなく、多くの仲間たちと紡いできた超実用的な行動指針だからだ。

その名もDIY。

私は数年来、「DIY(Do It Yourself)」という言葉を使い続けている。

DIYとは、

出ろ。行け。やれ。

の頭文字である。

新規事業開発やDX、組織開発やキャリアデザインなど、さまざまな場面で活用していることはもちろん、研修や講演でも「とにかくこれだけは覚えて帰ってください」とお伝えしてきた。

しかし最近、ある気づきがあった。
DIYとは単なる行動論ではなかったのかもしれないと。

むしろ、

「人や組織や社会の中に、まだ存在していない可能性がどのように生まれてくるのか」

という問いに対する、一つの実践論だったのではないか。

あなたは今、どのように世界と向き合っているだろうか。



■DIYとは「自ら世界と戯れること」である

DIYというと、

「自分でやれ」

という意味に聞こえる。
もちろん、その意味もある。

しかし私が本当に伝えたかったのは、少し違う。
DIYの本質は、

「自ら世界と戯れること」

にある。

なぜなら、創造の源泉は世界との接触にあるからだ。

・本を読むことも大切だ。
・専門家の話を聞くことも大切だ。
・AIに相談することもできる。

しかし、

世界に直接触れることだけは外注できない。

それは一番甘くて、一番苦い部分だからだ。

・驚きもある。
・発見もある。
・失敗もある。
・傷つくこともある。

しかし、その甘苦さこそが創造の源泉になるのだ。


■出ろ──習慣という回し車から抜け出す

DIYの最初の一歩は、D。

「出ろ」である。

ここで言う「出る」とは、物理的に移動することだけではない。
自分が慣れ親しんだ認識の世界から出ることだ。

・いつもの会議。
・いつもの仲間。
・いつもの成功体験。
・いつもの物語。

私たちは知らず知らずのうちに、自分自身の世界観の中をぐるぐる回っている。

まるで回し車を走るハムスターのように。

しかし、「日常」という回し車を降りて、その外に出ていかなければ、新しいものとは決して出会えない。

変化はいつも、境界線の向こう側からやってくる。


■行け──まだ触れていない世界へ

次に必要なのは、I。

「行け」である。

これは決して単なる情報収集ではない。

市場調査でも物見遊山でもない。
まだ触れていない世界へ足を運び、五感を使って世界を感じ取ることだ。

私は新規事業開発の中で、よく「現場へ行け」と言ってきた。
なぜなら、本当の発見は会議室では起こらないからだ。

顧客の現場。
地域の現場。
社会課題の現場。

そこには、まだ言葉になっていない違和感や可能性が存在している。

世界は私たちが思っている以上に豊かで、複雑で、予想外だ。

そして何より、媒体を通じて得た情報と、当事者から直接浴びせられる情報との間には、決定的な違いがある。

それは、

その問題を自分事として抱え続ける原体験になるかどうか

という違いだ。

だからこそ、自分の足で行く必要がある。


■やれ──世界と自分を結びつける

DIYの最後は、Y。

「やれ」である。

これは単なる実行ではない。
世界との出会いを、自分自身と結びつけることだ。

・何を感じたのか。
・何に違和感を覚えたのか。
・なぜ心が動いたのか。

その問いを持ちながら、自分なりの形を与えてみる。

・SNSに投稿してみる。
・イベントに参加してみる。
・事業構想を誰かに話してみる。
・出張報告書に一行だけ、自分の想いを書いてみる。

規模は関係ない。予算も関係ない。

重要なのは、世界との出会いを次の何かに結びつけることだ。

あなたの中に芽生えた何かを、心の中にしまったままでは世界は変わらない。

しかし、ほんの少しでも世界と結びつけた瞬間に、小さなスイッチが入る。

OFFだったものがONになる。
「無」が「有」へ転じる。
気づかないほど小さな変化でも構わない。

ゼロではないということが、未来の可能性への招待状になるのである。


■創造と創発

私は長い間、「創造」が好きなのだと思っていた。

しかし最近になって、それだけではないことに気づいた。

世の中には「創発」という考え方がある。

複数の人や要素が相互作用することで、誰も予想していなかったものが生まれる現象だ。

・新規事業もそうだ。
・コミュニティもそうだ。
・組織変革もそうだ。

誰かが設計図通りに作ったわけではない。

さまざまな出会いや偶然が重なりながら生まれてくる。

しかし私は、

「だから全ては環境や構造の産物だ」

とも思わない。

誰かの意図がなければ、新しい何かは始まらないからだ。

世の中には、

「全ては自分の意志で創造できる」

という考え方がある。

しかし私はそこまで楽観的にはなれない。

一方で、

「全ては環境や構造が決める」

という考え方もある。

しかし私はそこまで悲観的にもなれない。

私たちは世界を自由に設計することはできない。
しかし世界に働きかけることはできる。

だから私は、

創造と創発の間に立ち、拡げた両手で両方に触れる。

創造を意図するからこそ創発が起きる。
創発という生成メカニズムがあるからこそ創造できる。

DIYとは、その循環に参加するための方法なのだと思う。


■左手と右手

最近、あることに気づいた。
私は、思考や行動の領域の違いを便宜的に「左手」と「右手」という例えで説明してきた。

その中で、創造とは左手的な営みであり。
右手が計画や実行を担っているとしていた。

しかし、上記の創発と創造に分けて考えてみると、
以下のように整理したほうが本質に近づく実感がある。

それは、
・左手が「創発(世界を受け取る)」であり
・右手は「創造(形にする)」である。

という理解だ。

私たちは仕事も学習も、「正しく」行うことを求められてきた。

・効率的に。
・再現性高く。
・目標に向かって。
・確実に成果を出すために。

これは右手の世界である。

一方で左手は違う。

・遊び。
・偶発性。
・違和感。
・偏愛。
・説明できない熱量。

左手は、

・違和感を感じる。
・驚く。
・問いを持つ。
・世界の声を聴く。

つまり創発に開かれている。

そして右手はそれを、

・形にする。
・言語化する。
・実装する。
・責任を持つ。

つまり創造を担っていると言えるのだ。

左手だけでは何も生まれない。
右手だけでは新しいものと出会えない。

だから人には両手が必要なのだ。

内なる衝動に従って「出ろ」。
世界の声を聴くために「行け」
これらは左手の仕事である。

そして「やれ」。
世界との出会いに自分なりの形を与える。
これは右手の仕事だ。

ただし、右手を使いすぎると石橋を叩いて壊してしまう。

だから主権は左手に渡しておく必要がある。

出ろ。行け。やれ。

というDIYの流れは、

左手と右手を行き来するための方法論だったのかもしれない。

そして、そのサイクルはまるで歩行に似ている。

左足を出し、
右足を出し、
また左足を出す。

その繰り返しによって、人は前へ進む。
どちらかを固定してしまうと、人はまさに「同じ場所をぐるぐると回ることしかできない」のだ。

まずは、非効率と思わずに(左手にまかせて)、次にどこかに向かう時に、今までに一度も通ったことのない道を通ってみてほしい。 立派な「出ろ」「行け」の達成だ。

そして(右手を添えながら)その景色や気づきをSNSに投稿したり、誰かに話したりしてみよう。その結果、誰かにそれが届いた時に、あなたの世界がほんの数ミリだけど、ズレ始める。これが「やれ」の本質だ。

DIYを続けて、そのズレを少しずつ拡げていった先に、どんな景色が広がっていくのかを楽しみにしていてほしい。


おわりに──左手を添えないと、右手は中途半端なまま

私たちは長い間、右手ばかり鍛えてきた。

成果を出すために。
効率化するために。
正しく生きるために。

しかし、

左手を添えないと、右手は中途半端なままなのだ。

世界と出会わない創造は、既存の延長線を超えることができない。

DIYは、

「思い通りの未来をつくる方法」

ではない。

未来は分からない。
何が生まれるかも分からない。
だから計画通りにはいかない。

しかし、だからといって環境任せでもない。

意図は持つ。
働きかける。
世界と戯れる。

けれども結果は手放す。

私は最近、
DIYとは「プロセスを信じること」なのだと思うようになった。

計画された場所に到達できるかはわからないけれど、
今とは違う、想定外の場所に必ず到達できるのだ。

それは必ず成功するという楽観論ではない。

プロセスが「正しい」と信じることでもない。
人や組織や社会の中には、自分たちがまだ想像すら及ばない可能性が眠っていると信じることだ。

その可能性は、直接世界と関わる人の前にだけ姿を現す。

だから私は今日も、

出ろ。
行け。
やれ。

と言い続けたいのである。


最後までお読み頂きありがとうございました☆

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