治安 防犯ライトは不審者でなくイノシシ対策
私の実家には、鍵を閉めるという習慣がない。
玄関はもとより、道路に面した引き戸も、裏の勝手口も、一年中「どうぞ」と言わんばかりに無防備だ。家族で海外旅行へ出かけるような長期不在の折でさえ、我が家が施錠されることはなかった。
子供の頃の私は、世に言う「鍵っ子」だった。両親が共働きだったからだが、首から鍵を下げたことなど一度もない。今思えば、あれは「鍵っ子」ならぬ「全開放っ子」とでも呼ぶべき状態だったのかもしれない。
世間では治安の悪化が叫ばれて久しいが、私の故郷であるあの片田舎では、不審者の心配をする人などいなかった。都会の常識からすれば恐ろしいほどの用心不足だが、そこには人間よりもずっと厄介な「招かれざる客」がいた。
夜な夜な現れるイノシシだ。
彼らは始末が悪い。庭に出るために置いてある履物などをどこかへ持ち去ったり地面を掘り返したりしてしまうのだ。庭に不審者が入ってくる心配はないが、履物が片方なくなる心配が常にあった。
そこで近所の人たちと相談し、各戸に「防犯センサーライト」を設置することになった。本来は不審者を警戒するための鋭い光が、夜の闇の中を移動するイノシシを次々と照らし出す。その効果はてきめんで、それ以来、履物がなくなることも、地面が掘り返されることもなくなった。
私の田舎では「防犯センサーライト」が不審者対策ではなくイノシシ対策で使われているわけである(ただし、効果のほどは保障できません。)。
