今日のミヨ子さん(ショックなエピソード)

 本項を下書きした12月4日のできごと(なので「今日の」でもある)。

 次の帰省に向けて92歳のミヨ子さん(母)とのお泊りを計画すべく、最近の状態を兄夫婦に尋ねたところ、ちょっと、というかけっこうショッキングなエピソードを聞かされた。

 なんでも冷蔵庫に入れてあった(食器用?)洗剤を飲んでしまったらしい。

 そんなものがなんで冷蔵庫に? という疑問、というより詰問に近い気持ちは押えた。家庭にはそれぞれ事情があるから。

 幸い体調に変化はないようだが、兄のほうが参っている感じで、こう愚痴られた。
「最近のことはすぐ忘れるし、昔のことは覚えてるけど、辻褄が合わない。行動もこんな感じだから、一人にしておけない。身体は元気で食欲もある。だから逆に冷蔵庫を開けてしまうんだけど」
そして
「お前と電話するときは、しっかりしてるけどな。ふだんは全然違う」
とも。

 ミヨ子さんの認知機能の低下は薄々知らされていたし、周囲でも、昭和5(1930)年生まれのミヨ子さんと同年代や、もっと下のお年寄りの衰弱や死去などが続いていることもあり、自分自身の今後のためも兼ねて、認知症についての知識は折にふれて蓄積するようにしている。だから、「最近のことはすぐ忘れる」「昔のことは覚えてるけど、辻褄が合わない」といった状態(症状とは呼びたくない)は、わたしにとっては「来るものが順番に来ている」という印象を受けている。

 認知症の方(かた)でも「自分をしっかり見せたい」「問題ないように見せたい」という意識は働くと言われている。昔からミヨ子さんは周囲に気を使い、外からどう見えるかを気にかけていたから、本質的には変わっていないのだろうとも思う。ミヨ子さんにしてみれば、離れて暮らす娘から電話がくれば、モードも切り替わるのだろう。

 でも、いっしょに暮らしているほうは心配でしかたがないだろうし、たまの電話の相手にはしっかり対応されても、おもしろくない気分もあるかもしれない。離れて暮らす子供としては、「大変だろうけどよろしくお願いします」と言うしかない。

 わたし自身は、ミヨ子さんが何を覚えていて何を忘れているかは、もう考えないことにしている。ものすごく昔のことであっても、楽しかったことや、楽しく過ごした相手や大切な人がいたことを、心のどこかに置いておいてくれれば、それでいいや、と。

 ミヨ子さんはミヨ子さんなのだから。ほかに代わりはいないのだから。 


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