最近のミヨ子さん 介護施設入所後、その十七
(その十六より続く)
8月17日(土)入院中のミヨ子さん(母)との2回目の面会の様子をお嫁さん(義姉)が送ってくれた。メッセージの最後に「明日はカズアキさん(兄)が面会に行くよ。ビデオ通話をお願いしてみれば?」とあった。
面会は1週間に1回のはずなのだが、ミヨ子さんの体調がいいから病院も多めに見てくれているだろうか?
翌18日(日)、カズアキさん(兄)に連絡を入れる。
「今日お母さんとの面会に行くんでしょう? もしできそうなら、ビデオ通話をお願いします」
「了解、16時に面会の予約をしてます」と返信。
わたしは午後の通話に備えて、昼過ぎまでに週末の用事をあらかた済ませ、16時が近づくのを待った。
16時過ぎ、ビデオ通話が始まった。画面の向こう側でカズアキさんとミヨ子さんは会話していたようで、話の途中から会話が始まる。
「………に はっちたと」(………に行ってしまったのよ)とミヨ子さんが話し始める。
「どけ はっちたち?」(どこへ行ってしまった、って?)とわたし。
「駅さい」(駅へ)とミヨ子さん。直前まで何を話していたのだろう。
画面の中のミヨ子さんは、車椅子か椅子に座っているようだ。カズアキさんがスマホを持って、顔を大きく映してくれている。前日にお嫁さんから送ってもらった動画より、さらに表情がしっかりしているように見える。
「お母さん、やっと会えたね。気分はどう?」
「気分は……まあまあ」
「ご飯はちゃんと食べてる? おいしく食べられてる?」
「食べてるわよ」
カズアキさんが「ここは食堂だよ」と補足する。前日お嫁さんが面会したのは、病院の廊下だった。今日は食堂、たぶんほかに誰もおらず、気兼ねせず話せるようだ。
「やんかぶって、こら」(〈髪の毛が〉ボサボサになっちゃって、こんなに)とミヨ子さん。スマホに映った自分の顔は、しっかり認識できているのだろう。画面の中のミヨ子さんは白髪がちょっと伸びているように見える。
「わたしも白髪が出てきたよ」とわたし。じつは、そろそろグレイヘアに移行しようと考え、春ぐらいから白髪染めをやめているのだ。
「お風呂には入ってる? 髪は洗ってないのかな?」とわたし。ミヨ子さんはいまいち理解できてないように見える。それはそうかもしれない。この10年くらい、お風呂と言えばデイサービスで入れてもらうものだったのだから。
通話の途中でツレが帰ってきたので、スマホから顔を出してもらう。「お母さん、こんにちは。気分はどうですか」。カズアキさんが「お見舞いをたくさんもらってるんだよ。お礼言ったら?」と促す(というより、いつもながら指示に近い強い口調だ)。「ありがとうね」とミヨ子さん。概ね、会話は成立している。
面会時間は15分だ。10分ほど通話したところで、カズアキさんが「そろそろいいかな」と声をかけ、ビデオ通話をオフにした。
もっとたくさん話したかったのだが、もう胸がいっぱいで、ろくなことは話せなかった。それもやむを得まい。この先、少しずつミヨ子さんにとっての「日常」を取り戻せたら、通話する機会も増えるだろう。
――と願っている。(その十八へ続く)
