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【読書感想文】野球場にあるものは女の子の夢〜メイプル戦記


以前『銀のロマンティック…わはは』で感想文を書いた。

その時、一緒に収録されていた『甲子園の空に笑え!』でも感想文を書いた。

九州のとある県の小さな高校である私立豆の木高校が甲子園に出場し、準優勝するまでを描いた物語だ。私は、昔からこの作品がとても好きだった。

この作品には続編がある。それが今回読んだ『メイプル戦記』だ。

プロ野球規則が変更されたことを受け、プロ野球セ・リーグに7つ目の球団が参入する事になった。その球団は、監督も選手も女性で構成される。その監督に任命されたのが、豆の木高校を甲子園準優勝に導いた広岡だったのだ。
教え子でキャプテンだった朝比奈が大学を卒業し、教師として豆の木高校に戻って来た事から監督を彼に譲っていた広岡は教職に専念するものの物足りなさを感じる毎日を過ごしていた。それもあり、新設球団メイプルスの監督要請を面白そうと請けたのだった。

女性だけのプロ野球チームってどうなん!?と思うものの、これはファンタジーで川原作品なのだ。不可能を可能にする、それが川原マジックだ!(そんな言葉があるのかは知らんがな、である)

アメリカでスカウトした2人に加え、告知によりたくさんの選手が選考会に集まる。

その結果、少数精鋭で未知数だけどいい選手が加入する事となる。

そこには、ちょっとした小ネタがあったりする。

豆の木高校での広岡の教え子である相本家の四つ子の、こちらも四つ子の妹(美花・由花・里花・流花)、川原作品ではお馴染みの聖ミカエル学園から桜子・薫子コンビが選考会に参加する。桜子と薫子に選考会を勧めたのは『笑うミカエル』の登場人物で母校の体育教師になった和音なのである。

さらに、エース候補として甲子園の決勝で戦った相手チーム北斗高校エースの神尾聡史がオネエの神尾瑠璃子となって加入するのだ。

こういう背景が頭に入っていると、クスッと笑えてなかなか楽しい。もちろん、初見で読んでもとても楽しい。

選手が決まればコーチである。このコーチもお馴染みの人物が登場する。

北斗高校の監督だった高柳だ。

コーチは自分で決めていいと球団社長に言われたものの、そんな当てなどあるはずもなく。唯一のツテである高柳にお願いをしたのだ。あの甲子園後も文通を続けていたらしく、コーチの就任要請もお手紙(一応速達で)だというところに笑ってしまった。

高柳も監督業を譲ったばかりだったらしく、広岡の依頼を請けるのだった。まあ、ここで高柳が請けてくれなくちゃ話が進まないというものなのだが。

そうそう。
高柳が育てた最高のピッチャー瑠璃子(当時は聡史)と高柳との再会の場面はなんとも言えなかった。最高の選手だった教え子がオネエのピッチャーとして目の前に現れたのだから。だけど、また再び一緒に野球の世界で戦えるという事で、ありのままを自然に受け入れて溶け込んでいく。
もちろん他の選手たちも瑠璃子を女性として受け入れている。
瑠璃子はそこら辺の女性より、女性らしいのだ。その上、野球はバリバリにできてかっこいい。そのギャップにやられてしまう。

ところで、このチームには訳ありの2人がいる。

1人は仁科紘子だ。

紘子の夫は東京タイタンズの仁科雅樹だ。まだ結婚して2年なのに、その間5人と浮気をする体たらくぶりだ。それにブチギレた紘子は家を飛び出し、メイプルスの一員となった訳なのだ。同じセ・リーグのチーム同士なので、対戦する機会も多いだろう。さてさて、いったいどうなるのだろうか。

もう1人が神尾瑠璃子だ。

瑠璃子の思い人が西部リンクスの小早川で、彼は北斗高校でのチームメイトだったのだ。彼と恋仲になれない事にショックを受けて、家も飛び出しオネエ業界に飛び込んだ瑠璃子だったのだけど、メイプルスに加入して再会したのだった。リンクスはパ・リーグだ。今度対戦するとすれば、当時は交流戦もないので、お互いにリーグ優勝して日本シリーズで戦うしかない。こちらもどうなることやら。

シーズン前にはキャンプを行い、選手たちを徹底的に鍛え上げる。オープン戦では対戦相手が舐めてかかっていた事もあり、勝利を重ねてみんなで手応えを感じる。体力も筋力も男性に劣るのにすごいなあと思う。

そんなこんなで、シーズンが始まった。

メイプルスは下馬評を覆し、勝利をコツコツと積み重ねる。私は、野球好きなのだけど、どんなに強いチームだったとしても試合に全部勝つ訳にはいかない。けれど、試合を見るからには勝ってほしい。まんがを読みながらそんな事を思った。

それからのメイプルスは記録的連勝をしたかと思えば、記録的連敗を喰らってしまう。けれど、優勝をしたいメイプルスの奮闘と3位チームの首位いじめにより自力優勝ができるまで首の皮1枚で繋がった。最後はタイタンズとの3試合で決まる・・・

結果、最終戦9回2アウトで今まで夫からヒットが打てなかった紘子が打った2ランホームランで優勝を決めた。

参入初年度で優勝を決めるなんて出来過ぎだろうと思う。思うけれども、彼女らの努力を見ているから素直に嬉しくなる。それに、これは川原作品なのだ。このファンタジーにどっぷり浸るのがお作法である。

さすがの川原作品、やっぱり泣かせにくる事も忘れてはいない。
今回は、最後疲れ切った彼女たちにハッパを掛けるものの、本当は休ませてやりたい広岡が1人で流す涙のシーン、それと最後の紘子と雅樹の対決のシーン、そこにやられてしまった。

優勝を決めた後、瑠璃子と小早川、仁科夫婦、球団社長と流花の間にほんわかした愛情が芽生えていたのが良かった。それから、おそらく広岡と高柳にも。

この作品、実在のプロ野球球団や選手に微妙に似せてきていてとても楽しい。元ネタが分かるとニヤニヤする。個人的にはダイエーホークスの初代のユニフォームとあのヘルメットが見られてなんだか得した気分になった。

さらに、札幌ドームができるはるか前に札幌ドームが出てきて、そこがメイプルスの本拠地となっていたのには驚いた。もう一つ言うなら、あの球界再編の声が上がるはるか前に新規球団が加入した先見の明にも驚きを隠せない。

今の時代、多様性などと言われるが、このメイプル戦記ではその多様性が遺憾無く発揮されている。30年以上前の作品にも関わらずだ。多様性なんて大袈裟な事を言わなくても、この作品のように当たり前に受け入れてニコニコして生きていたらいいんじゃないかと思える。

女の子でよかったね・・・(作中に出てくる独白部分)

もう女の子ではなくなったけれども、そんな事を改めて思った。


最後に・・・

作中で広岡がこの曲の鼻歌を歌っている。

野球場に連れてって
だって、そこには夢があるんだもん・・・

野球ってやっぱりいいなと思いながら、ちな鷹(ホークスファン)の私は野球を見ようと思う。

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