【シロクマ文芸部】運命なんてこんなもの
サンダルで出掛けたくて、新しいものが欲しくなりデパートに来てみた。靴のフロアの目立つ所に色とりどりのサンダルが並ぶ。気になるサンダルを手にしながらあれこれ見て回る。
オレンジの革のサンダルが気に入った私は試し履きをしてみた。どんな服装にも合いそうなサンダルは太陽のように鮮やかな色で、ヒールの高さもちょうど良く私の足にピッタリだ。少し予算はオーバーしたけれど、気に入ったサンダルを買う事ができて私はホクホクだ。
デパートの帰り、半袖のパジャマを買いたくて量販店に寄り道した。この日はチラシが入っていたからか駐車場が一杯だ。
入り口近くの靴コーナーを覗くと、歩きやすそうなスポーツサンダルを見つけた。黒ベースのサンダルは普段使いしやすそうだ。しかもお手頃な価格なのも嬉しいポイントだ。目的のパジャマをカゴに入れ、吊るされているたくさんの服の中からシンプルなコットンのワンピースを見つけた。色はダークブラウンでこれも着やすそうだ。今日は高いものもお手頃なものもいい買い物ができた。
次の週末、私は久しぶりに里穂の家に遊びに行く事になった。いつもは出掛ける時は頭の先から足の先までバッチリおしゃれをする。けれど、この日は里穂の家でおしゃべりをするだけだったので、先日買ったばかりのワンピースとスポーツサンダルで出掛ける事にした。
里穂の家が近くなり、手土産にアイスクリームを買おうとコンビニに立ち寄った。ちょっとお高めの美味しいアイスクリームをカゴに入れ、甘いものの後はしょっぱいものだとポテトチップスもカゴに入れて会計を済ませた。溶けないうちに行かなくちゃとコンビニを出た所で、私は出会ってしまった。
匡孝くんに。
匡孝くんの隣には小柄で華奢な女の子がいた。背の高い私とは真逆の子だ。匡孝くんは私に気づくと手をあげて声を掛けてきた。
「久しぶり、夕実。元気だった?」
「久しぶりね。元気だよ」
「そっか。それならいいんだ」
二人は仲良さそうにコンビニの中に入って行った。いったいどんな関係なんだろう。付き合っているのか、それとも……
匡孝くんと私は1年前まで付き合っていた。けれど、私の事が重くなってしまった彼から別れを告げられてしまったのだ。私は、彼に出会ったら言いたい事もたくさんあった。いつどこで会ってもいいように私は気を張っていつもおしゃれをしていた。それなのに。
今日の私ときたらどうだろう。新しいものとはいえ量販店で買ったワンピースとサンダルだ。匡孝くんの隣の女の子は頭の先から足の先までおしゃれをしていた。彼女は私を品定めするみたいに上から下まで一瞥した。きっと私を下に見ているのだろう。
私は結局、匡孝くんに会っても何ひとつ言いたい事は言えなかった。おしゃれした姿も見てはもらえなかった。彼の目に映る私は安い格好をした冴えない姿なのだ。私はなんだか馬鹿みたいに思えてちょっと笑った。
匡孝くんは私を見ても動揺もせず普通に話し掛けてきた。きっと彼は私の事などもう何とも思っていないのだろう。私だけが好きだったし、私だけがこだわっていたのだ。
私は彼を運命の人だと思っていたし、いつかまた付き合う事ができると信じていた。それが運命だと思っていた。ところがどうだろう。現実はそんなに甘くなかったみたいだ。運命なんてこんなものなのだろう。言いたかった言葉も手に入れたかった未来も、ひらひらと眩しい太陽目指して浮かんで消えていった。
私は匡孝くんが買い物をしているであろう店内を見たい気持ちをこらえて、後ろは振り返らずに車のドアに手を掛けた。もう匡孝くんに会う事はないのだろうと思いながら。
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シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「サンダルで」です。
サンダルというお題で、ついこの歌に引っ張られてしまいました。
夕実さん、心の整理をつけて前に進めたらいいね・・・
で、実際問題、会いたくてたまらない人と突然会っちゃったら、何も言えないですよね。
言いたい事はあるのに、言葉になって出てこないっていうか。
小牧部長、よろしくお願いします😊
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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