【毎週ショートショートnote】あの日の忘れ物をお届けします~未練配達員
『あの日の忘れ物をお届けします』
不思議なキャッチコピーの宅配会社のバイトが決まった俺は今日が初出社だ。
この会社では普通の荷物は配送しない。ここで配送する物は、未練だ。依頼者が希望した未練を自宅まで配送する。その未練をどうするのかは俺達の預かり知らぬ所だ。
この会社も人手不足なのか、俺は早速一人で配送に向かう事になった。配送する物が物だけに一人で仕事をする事が不安だが、この未練を待っている人がいるのだ。俺は身震いしながらハンドルを握った。
インターホンを押すと、中からかなり年配の女性が出てきた。
「ご依頼の未練をお届けに上がりました」
「ありがとう。これを待っていたの。良かったら、あなたも一緒に居て下さらない?私一人では心配で」
女性と一緒に家の中に入ると、客間で箱から未練を取り出した。
煙が立ち上り、その中にいたのは軍服をきた若い軍人だった。その姿を見た女性は目を潤ませて軍人に近付いた。
「私の事、分かるかしら。もうこんなおばあちゃんになってしまったわ」
「分かりますとも。あなたはいい人生を歩まれたのですね」
「最後にお会いしたあの日に口に出せなかった事がありました。私ももう長く生きてはいないでしょう。だから死ぬ前にあなたに伝えたかったんです」
「何ですか?私に全部話して下さい」
「あなたに行かないでと、生きて帰ってきてと言いたかったのです。けれど、言えませんでした。そして、あなたをお慕いしていますと…」
「私もお国の為とはいえ行きたくなかった。あなたと離れる事がどんなに辛かったか。私は今もあなたを愛しています」
若い軍人は女性を抱きしめている。それを見届けた俺はそっと玄関を出た。時を超えた再会を目の当たりにして自然と流れた涙を首に掛けたタオルでそっと拭った。この仕事、悪くないんじゃないか、そんな事を思いながら。
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今週のお題は「未練配達員」です。
ちょっと長くなっちゃいました💦
田原さん、よろしくお願いします😊
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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