【夏の香りに思いを馳せて】七夕パフェをご一緒に
俺はインスタを眺めながら、「おおー!!」と声を漏らした。インスタの画面には、駅前のカフェの期間限定メニューが載っている。七夕パフェの写真がとてもおいしそうで心が躍る。バニラアイス、いちごアイス、メロンシャーベット。飾りのフルーツだって桃にメロンにブルーベリーだ。星形のクッキーだって乗っている。ああ、うまそうだ、食べたい、食べたいぞ。
俺は、甘い物が大好きだ。ケーキ屋でケーキを買う事は、できる。だけど、カフェでパフェを食べるとなると話は別だ。駅前のカフェはかわいい作りで、若い女の子が多い。そんな所で、俺一人で七夕パフェを食べるなんて事は恥ずかしくてできない。だけど、食べたい。誰か・・・誘うか。
LINEを開いて、メッセージを送った。
「今度一緒に七夕パフェ食べに行こう」
送った相手は、大学の同級生のみなみだ。みなみとは、今でもたまに遊びに行く仲だ。友達付き合いをしているけど、本当は学生の頃からみなみの事は好きだと思っている。
「いいよー。駅前のカフェでしょ?いつ行く?」
速攻で返事が来た。いつもながら、みなみは返事が早い。次の土曜日に行く事にして、しばらくやり取りを続けた。
実は、みなみを誘ったのにはもう一つ理由がある。今度こそ、みなみに気持ちを伝えようと思っている。今まで何回も気持ちを伝えようとしたけど、みなみの本意が分からなかった。俺の事を好きな素振りを見せる気はするけど、それが恋愛の好きなのか友達の好きなのかよく分からなかった。
土曜日、駅前でみなみを待っている。緊張して、かなり早く着いてしまった。ガラスに映る自分の姿は、身長も高いしシュッとしていて悪くないと思う。チラリとこっちを見ていく子もいる。だけど、好きな子に好きになってもらえないと、こんなのは宝の持ち腐れだと思う。
「ごめんねー。待ったでしょ?」
向こうからみなみがやって来た。さらさらの長い髪と白い肌が薄い黄色のワンピースと合っていて、かわいい。
「待ってないよ。俺も今来たとこ。じゃ、行こうか」
二人でカフェに向かう。土曜日だけど、隙間の時間帯なのか混んではいなかった。
二人とも七夕パフェをオーダーして、できあがるまで近況報告をする。みなみと会うのは2か月ぶりだった。なんだか、みなみ、キレイになった気がする。もしかしたら、好きなヤツでもできたのだろうか。気になるので聞きたいと思うのに聞けずにいた。モヤモヤして、グラスの水をグイっと一口飲んだ。
ほどなくして、七夕パフェがやって来た。
「うわー!おいしそうー!私、写真撮るー」
「俺も撮っとこ!でも、早く食うぞ」
手早く写真を撮り、まずはいちごアイスから口に入れる。やっぱり、想像通りうまい。桃も旬らしく水気と甘みのバランスがいい。
「ほら、みなみも早く食べろよ。すごくうまいぞ!」
「いやーん、これめっちゃおいしーい。3人分くらい食べられそうよ」
なぜパフェはこんなにおいしいのだろう。見た目もかわいくて、味はもちろんおいしい。いろいろな味のバランスがとてもいいと思う。おいしいパフェを食べながら、人間もパフェみたいにバランスが必要なんじゃなかろうかとふと思った。いったい、俺は何なんだ。緊張でおかしくなったのだろうか。
会話もあまりせず、黙々とパフェを食べた俺達は駅の方に歩いていく。
「なあ、みなみこれから時間ある?」
「あるよ。どっか行く?」
「今日、天気いいし海に行こう」
ここから、電車で30分程で海に行く事ができる。ちょうど海に行く電車もやって来た。
目の前には海が広がっている。潮の香りが鼻をくすぐり、なんだか懐かしい感じがした。少し傾きかけた太陽は、まだまだ眩しい。梅雨の晴れ間の貴重な日差しだ。
「眩しいねー。日差しがすごいね。たっちゃん、日焼けしちゃうんじゃないの?」
「大丈夫?屋根のある所行く?」
「ううん、私は平気だよ。ちゃんと日焼け止め塗ってるもん。ね、海辺を歩こうよ」
波は穏やかで、太陽の光が反射してキラキラしている。のんびりと海辺を歩くけれど、会話は続かない。沈黙が続いても、それは悪くない時間だと思った。二人の足が止まった時、俺はみなみに言った。
「みなみ。俺、お前に話があるんだ」
「え、何?突然どうしたの?」
「みなみ、俺ね、お前の事が前から好きなんだ。友達としてじゃなくて、男として俺を好きになって欲しいんだ。付き合って・・・下さい」
「やっと言ってくれた。たっちゃん、私の事なんて友達としか思ってないと思ってたんだ。ほんとはね、今日は私が告白しようと思ってた」
俺は、みなみの言葉に開いた口が塞がらなかった。みなみが俺の事を好きだったなんて。なんだか信じられないが、今日気持ちを伝えて良かった。せめて、告白は男の方からしたいと思っているから。
「ありがとう、みなみ。みなみは俺の事、友達としか思ってないと思ってたんだ。今日、気持ちを言えて良かったよ」
「私さ、いっぱい好きな気持ちを送っていたのに、たっちゃん全然気づいてくんないんだもん。私の事なんて、どうでもいいのかと思ってたよ」
「ごめん」
「じゃあさ、今日おいしい晩ごはんごちそうしてよ。それで許してあげる。そしてね、ずっと私を好きでいてね」
夕食は何を食べようか。みなみと相談して決めよう。
みなみの手をぎゅっと握りしめて、俺達は駅に向かって歩き出した。夕焼けのきれいなオレンジ色が俺達を照らしている。
もうすぐ七夕だ。あちこちに七夕飾りが飾られている。その飾りにはたくさんの願い事が書かれている。俺の願いは、今のところはただ一つだ。みなみとずっと笑顔で過ごせる事。織姫と彦星みたいに離れ離れにはなったりしない。今日の事は、一生ずっと覚えていようと思う。
隣にいるみなみは、俺の方を見上げてにっこり笑う。その笑顔がかわいすぎて、俺も顔をくしゃくしゃにして笑った。許されるのなら、街中を逆立ちしながら「俺はみなみが大好きだー!」と大声で叫んでみたいと80年代の歌のような事を思ったのだった。
ー終わりー
今回、xuさんとriraさんの企画「夏の香りに思いを馳せて」に参加させて頂きました。
七夕部門での参加です。
久しぶりにショートショートを書きました。
七夕といえば、なんとなくですが切ない設定の方がハマる気がします。実際、先日も「曲から一句」に参加した際にドリカムの曲からこんな短歌を詠みました。
逢いたいと願いを込めて天の川
あなたも空を眺めているの?
ですが、今回はハッピーエンドになる様に書きました。甘いもの好きの男の子目線の話です。私は、あまり男の子目線の話は書きませんが、きゅん♡を感じて頂けましたら嬉しいです。
ちなみに、登場人物の名前は80年代の某野球漫画(恋愛系野球漫画?)から取りましたw アニメもハマって見ていたし、コミックスも友達に借りて読みました。大人になってスカパーで再放送を見て再びハマり、文庫版で一気に大人買いして揃えましたよ。
そして、最後に80年代の某アイドル(花の82年組のジャニーズアイドル)の歌詞をぶっこみました。お若い方は分かりますかね?
まあ、同年代の皆さんならすぐにお判りでしょう。あれです、あれ(笑)
やっぱり、ベタな話って書いてて楽しいですねー。
最近ちょっと、そういう成分の記事を書いていなかったので、やっぱり楽しいなと思いました。
あと2本、浮かべば書いてみたいです!
一応、ネタは浮かんではいるのです。あとは、創作の神様が言葉を降ろして下されば書けるはずです(>_<)
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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