【シロクマ文芸部】流れ星の行方~夜に降る
「夜に降るものって、雨や流れ星だけじゃないのよ」
ガヤガヤした週末の焼き鳥屋のテーブル席でマキはナオミの目を見つめ真顔で言う。生ビールをゴクリと一口飲んだナオミは首をかしげる。
「あのね、夜には人間のいろんな負の感情が降ってくるのよ。そうじゃないと、みんな負の感情に飲み込まれてしまうでしょう?だから、ナオミの悩みも夜に空から降って消えていくんだよ」
「地上に降り積もった感情はどうなるの?」
「それはね、神様が負の感情を集めて流れ星にしちゃうのよ。知らんけど」
二人でくすくすと笑うと、いきなり店内がどよめく。何事かと思えば、テレビの日本シリーズの野球中継でご当地チームが優勝を決めたからだった。マキとナオミにも大将から生ビールが振舞われ、みんなで勝利の乾杯をして一気にジョッキをあおった。
辺りが騒がしい中で、マキとナオミのテーブルだけがしんとしている。ナオミがぽつぽつと状況を語るとマキはうんうんと頷く。ナオミの恋人のタケシはナオミの家に入りびたり、金をせびったり女遊びを繰り返すような男だった。マキは何度も別れるように説得していたが、ナオミはそんなタケシから離れられないでいるのだった。
「いい?自分に負けちゃだめよ。ナオミは絶対に幸せになれるんだから」
マキはナオミの手をギュッと握って励ました。ナオミは目に涙を浮かべて大きく頷いた。その時のマキの目がギラッと光った事にナオミは気づいていなかった。
焼き鳥屋でマキと会って10日ほどが過ぎた。ナオミは夕食を終えると、ぼんやりテレビを見ていた。温かいほうじ茶の入ったカップを両手で持つと、指先がじんわりと温まり気持ちが解けていくようだ。灯の消えた玄関をチラッと見て「そういえば、マキと会った頃からタケシ来ないよね」と呟いた。以前からタケシは他の女の所に行っているのか1か月以上来ない事も度々だったので、いつもの事かと大して気にもならなかった。
猫舌のナオミはほうじ茶の温度を確かめるようにそっと口をつけた。ほうじ茶が喉を通っていくと、タケシが自分の生活にいない方がいいような気持ちになった。私を大事にしてくれない人なんてもういらない。タケシが再び来る前にさっさと引っ越して会社もどこかへ異動願いを出そうと思うのだった。
「あら、流れ星!」
流れ星に気付いたナオミは慌ててベランダに出た。流れ星はもう見えなくなっていたが、その夜は星がとても綺麗でナオミはしばらく星空を眺めていた。
「本当に星が綺麗。私、最近は星を眺める余裕もなかったな。そういえば、さっきの流れ星ってマキの言ってたように負の感情が流れていったのかな。なんかスッキリする!そうだ、ビール冷えてるから飲んじゃおうかな」
部屋の付けっぱなしのテレビからニュースが流れている。
「○○県北部の山中で乗用車の中から男性の死体が見つかりました。乗用車は大破しており……」
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シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「夜に降る」です。
シロクマ文芸部で久々に掌編小説を書いてみました。
ちょっとだけ、いつもと違う感じのやつです。
これからの季節は星が綺麗に見えますねー😊
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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