ウーバーラブ上等 愛より先に鳴るのは、注文だった。
最近、Netflixの『ラヴ上等』が話題になっている。
ヤンキーたちが集まり、恋をして、ぶつかって、傷ついて、それでも前に進む。
つまり、
「人間、恋愛するとだいたい面倒くさい」
ということを、ものすごい熱量で見せてくれる番組である。
『ラヴ上等』はMEGUMIさんが企画・プロデュースする恋愛リアリティショー。
シーズン2は8月4日から配信され、沖縄を舞台に、過去に不良と恐れられた男女が集結するという、なかなかパンチの効いた設定になっている。
そしてSNSを見ていると、出演者だけではなく、番組に関する文章まで話題になっていた。
そこで私は思った。
「これ、Uber Eats版もいけるんじゃね?」
タイトルはもちろん、
『ウーバーラブ上等』
である。
恋愛より先に鳴る
『ラヴ上等』では、
「誰が誰を好きなのか」
「誰と誰が揉めているのか」
「この恋は成立するのか」
というところが見どころになる。
しかし『ウーバーラブ上等』では違う。
出演者が集められた瞬間、まず全員がスマホを見る。
そしてスタッフが聞く。
「それでは、共同生活を始めていただきます」
すると出演者が答える。
「いや、今ピークなんで」
恋愛どころではない。
注文が鳴っている。
第1話「この人、私のこと好き?」
Aさん
「ねえ、さっきから私のこと見てない?」
Bさん
「見てないよ」
Aさん
「嘘。絶対見てたじゃん」
Bさん
「いや、店のピン見てただけ」
Aさん
「……私よりピンのほうが大事なの?」
Bさん
「そりゃそうだろ」
ここで恋愛リアリティショーなら修羅場になる。
しかしウーバーラブ上等では、
「この店、鳴ってるなら行ったほうがいいよ」
で終了する。
恋愛感情より、配達効率。
嫉妬より、オンライン時間。
愛より、単価。
これが配達員の世界である。
告白の場所はマクドナルド
恋愛リアリティショーなら、夕暮れの海辺やおしゃれなテラスで告白する。
ウーバーラブ上等では違う。
舞台は、
マクドナルドの駐輪場。
男
「俺、お前のこと……」
女
「ちょっと待って」
男
「え?」
女
「今、鳴った」
男
「……」
女
「ごめん。これ終わったら聞く」
男
「俺の告白より注文?」
女
「当たり前じゃん」
そして二人は別々の方向へ走り出す。
恋の行方より、配達の行方が気になる。
そして登場する「雨クエ」
『ラヴ上等』に欠かせないのが、出演者たちの感情の爆発だとしたら、
『ウーバーラブ上等』に欠かせないのは、
雨クエである。
突然、雨が降る。
スタッフが叫ぶ。
「雨クエ発生です!」
出演者全員の目の色が変わる。
さっきまで恋愛について語っていた男女が、全員スマホを握りしめる。
「何件?」
「5件」
「いくら?」
「……」
「いくらなんだよ!」
恋愛リアリティショーでは見たことのない緊張感。
そして一人が言う。
「俺、行くわ」
「危ないよ!」
「関係ねえよ!」
「そんなに私のこと好きなの?」
「違う。クエストがあるんだよ!」
ここで出演者の本当の姿が見える。
「過去も今もすべてをさらけ出す」
『ラヴ上等』の世界では、出演者たちが自分の過去や人生について語る。
それが人間ドラマにつながっていく。
ならば『ウーバーラブ上等』も負けてはいられない。
出演者が語る。
「俺、昔は配達をサボってました」
「私もです」
「昼ピークだけ出て、夜は家で寝てました」
「私なんて雨の日ずっとオンラインしてませんでした」
そして一番重い過去を持つ男が口を開く。
「俺……」
全員が見つめる。
「……一時期、出前館だけやってました」
沈黙。
誰も何も言わない。
しかし一人が静かに肩を叩く。
「もういいんだよ」
過去は変えられない。
でも、これからの配達は変えられる。
たぶん。
ところで、あの文章が気になった
そして今回、ネットで別の意味でも話題になったのが、MEGUMIさん名義で出された声明文だ。
内容そのものは、出演者への誹謗中傷を控えてほしいという、ごく真っ当なもの。
ただ、画像をよく見ると、個人的に気になったところがある。
「送」
そして、
「尊」
である。
いや、漢字が間違っていると言いたいわけではない。
ちゃんと読める。
意味も分かる。
ただ、
「なんか見慣れた日本語の漢字と違くね?」
という違和感がある。
特に「送」と「尊」。
日本語の文章なのに、そこだけ妙に別の世界から来た漢字に見える。
まるで、
漢字だけ別の国から留学生として参加している。
もちろん、これだけでAI生成だと断定することはできない。
フォントや文字コード、画像化の過程など、いろいろな理由が考えられる。
だから私は断言しない。
ただ、
「なんかAIっぽい文章だな」
と感じた人がいたとしても、気持ちはちょっと分かる。
文章は綺麗。
構成も綺麗。
言葉遣いも綺麗。
そして漢字が一部だけ、
「お前、どこから来た?」
なのである。
もしこれが『ウーバーラブ上等』だったら
もちろん声明文もUber仕様になる。
配達員一人ひとりを尊重し、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
ここまでは普通。
しかしUber版ではこうなる。
配達員一人ひとりを尊重し、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
なお、BAD評価につきましては、各自で真摯に受け止めていただけますと幸いです。
急に怖い。
さらに続く。
今後も配達員の皆さまが安心して配達できる環境づくりに努めてまいります。
配達員:
「その環境って単価いくらですか?」
運営:
「……」
配達員:
「クエストあります?」
運営:
「……」
配達員:
「鳴ってます?」
運営:
「……」
最終回「愛か、単価か」
そして最終回。
二人の配達員が向かい合う。
男
「俺は、お前と一緒にこれからも配達したい」
女
「本当に?」
男
「ああ」
女
「単価が下がっても?」
男
「……」
女
「雨クエがなくても?」
男
「……」
女
「深夜に鳴らなくても?」
男
「……」
女
「それでも一緒にいる?」
男はスマホを見る。
通知が来る。
3.1km 320円
男は静かに立ち上がる。
「ごめん」
「え?」
「俺、行くわ」
「どこへ?」
「配達」
そして男はバイクにまたがる。
女もスマホを見る。
4.8km 580円
「私も行く」
二人は別々の方向へ走り出す。
スタッフが叫ぶ。
「二人とも、恋愛はどうするんですか!」
男が振り返る。
「鳴らなくなったら考える!」
『ウーバーラブ上等』は恋愛リアリティショーではない
たぶん。
これは恋愛リアリティショーではなく、
配達員の生存確認ドキュメンタリーである。
好きな人より通知を気にする。
デートよりピーク時間を優先する。
記念日よりクエストを優先する。
そして恋人から、
「今日、一緒にいたい」
と言われたとき、
「ごめん、夜鳴るかもしれないから」
と言ってしまう。
これが配達員のリアルなのだ。
でも、そんな配達員にも恋はある。
店員さんに優しくされた。
注文者から「ありがとうございます」と笑顔で言われた。
同じ配達員と何度も同じ店で遭遇した。
そして、
「あ、この人またいる」
と思う。
それだけでちょっと嬉しい。
もしかすると恋愛とは、そういう小さな積み重ねなのかもしれない。
そしていつか、
Uber Eatsが恋愛リアリティショーを作る日が来るかもしれない。
タイトルはもちろん、
『ウーバーラブ上等』
出演条件はただ一つ。
恋愛中でも、注文が鳴ったらちゃんと配達すること。
愛も大事。
恋も大事。
だけど配達員には、
もっと大事なものがある。
そう。
オンラインボタンである。
いいなと思ったら応援しよう!
チップはすべて「配達中の水分補給」か「鳴らない時間のメンタル維持費」に使われます。応援いただけたら、次もちゃんとネタを拾って帰ってきます。