願いは叶ったはずなのに
気が付くと、私はとても多くの視線を感じた。
そう、それは経験したことが無いくらい多くの視線だった。
「痛い!」
思わず、大きな声を出してしまった。
誰かに思いきり蹴られたような気がする。
「えっ?」
今度は頭突きを食らったような気がする。
そしてなぜか周囲からは大きな歓声が聞こえる。
遠のく意識の中、思い出した。
以前、私はみんなに注目されたい、と
願ったことがあったのだった。
どうやら、今の私はサッカーボールになったようだ。
どれくらい時間が経ったのだろう。
ようやく意識が戻ってきたようだ。
「ここから最寄りの駅に行くにはどうしたら良いですか?」
見知らぬ人が私に声を掛けてきた。
観光客なのだろうか?
「今、人気のラーメン屋は?」
なぜか今日はやたらと質問される。
仕方が無いので、私は自分の好みの店を教えることにした。
以前、困っている人の助けになりたい、と
願ったことがあったのだった。
どうやら、今の私はgoogleそのものになったようだ。
このままではただの検索エンジンとして一生を終えてしまう。
私は必死の思いで、脱出することに成功した。
「こんなところにいたのかよ!」
歓喜の声が聞こえてきた。
しばらく音信不通であった私を
誰かが見つけてくれたのだろうか?
これでいつもの生活に戻れる。
そう、私は思っていた。
「王様、これを。」
なぜか、私は王様の前へ連行された。
いや待て。王様?
以前、みんなが欲しがる貴重な存在になりたい、
と夢見ていたことを思い出した。
どうやら、私はドラクエの小さなメダルになったようだ。
変身願望、努力目標、ありたい姿、
自分の願いを神様は覚えてくれていたようだ。
確かに実現方法まで詳しく伝えていなかったから、
文句は言えないけれど、、、
文句を言われるだろうと
神様は思わないのだろうか。
過去に何をお願いしただろうか?
それはどう実現されるのだろうか?
神様はいつも斜め上の実現方法を選ぶのかもしれない。
だから、願いが実現すればよいということばかりではない、
そんな考えもあることに気が付いた。
変わり映えしない日々、静かな夜、
そして小さな焦りと不満。
逆にありがたく思っても良いのかもしれない。
