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【恋愛小説】私のために綴る物語(12)

第三章 友人と恋人の違い(4)

 試合日当日、多香子は正弘と西船橋駅で待ち合わせた。二人で共通して乗り換える駅だった。

 スタジアムにつくと、正弘をメンバーに紹介した。史之も女性を連れてきていて、その様子を見た多香子は緊張していた。正弘はその視線の先の男が、多香子の元カレとわかった。
 そんな時正弘はビールを買いに席を立った史之を見て、慌ててついて行った。

 ビールを持って、二人でにこやかに戻ってきたのをみて、多香子は正弘に聞いていた。
「夏川さんと買いに行ったの」
「まぁ、なにか美味しいものがあるんですか、とか聞いた」
「そう」
「結局はビールだけになったけど」
「ふ〜ん、ナンカレーとかソーセージとか言っていなかった?」
「通路が混んでいたから、やめた」
 メアドを教えてもらったことは、言わないでおこうと正弘は決めていた。

 多香子はトイレに行ったとき、その彼女と一緒になった。
 洗面台の鏡を見ているふうにして、思わずチェックしてしまった。胸を大きく開けたシャツからは谷間が見えて、この胸を史之は愛撫をするのかと、考えてしまった。史之と横に並んで、バランスの良い身長、豊かなバストと引き締まったウエストで、この人には敵わないと思わざるをえなかった。

 私は正弘と付き合っているのに、何を考えているのだろうと、気持ちが落ち込んだ。そんな時に、その女性は話しかけてきた。

「すいません、澤田さんでしたっけ。友達になって欲しいなって思っていたの」
「夏川さんの彼女さんですよね。お似合いだなぁって思って」
「ふーちゃんのお仲間って優しいですね。私までこんなに受け入れてもらえるとは」
 ふふふっと笑ったその目が多香子を睨んでいる気がした。しかし全体として『女性』を感じさせる笑顔は、多香子を萎縮させていた。
「このグループって、来る者は拒まず去るもの追わずがモットーなんです。好きなものが一致していればみんな友達で」
「あっ私、里村文華と言います。ふみかって呼んでくださいね」
「文華さんですね、澤田多香子と言います。よろしく。たかこです」

 二人は笑いあっていた。多香子は里村がもらしたふーちゃんという呼び方に、引っかかりを感じていた。

 座席に戻ると、正弘の手を握っていた。そうだ今夜こそ、本当にこの人の女になろうと、多香子は決心した。

 観戦会のあとの宴会でも、多香子は文華の隣になっていた。
「ふーちゃん、お替りは?」
 文華は史之を常に視野の中に入れて、色々気を遣っていた。あそこまで気を使うのは自分には無理だと、正弘に笑いかけていた。
「やっぱり、彼女がいるといい感じですね。僕も欲しいな」
 末原がぼそっと言った。
「出逢いなんて作るものだよ。婚活まじめにするか……」
「こういうのだって、出逢いの場だろう」
「そうなんだけど、友人からはね。難しいだろう」

 末原が史之を見て言った。末原は史之と多香子が付き合っていたことを知る一人だった。少し恨めしそうだったのは、史之に手伝ったことがあったからだった。
 適当な会話のやり取りが続いてお開きとなった。

 史之は文華を連れて、いつもと違うルートの電車に乗っていた。

 多香子は正弘と一緒に帰った。多香子は家の最寄駅に着こうとした時、決心したことを言った。
「今日は帰りたくない。一緒にいよう」
「えっ、それって」
 少し頬が赤くなった多香子は頷いていた。
「それなら、錦糸町駅まで来て」
「うん」
 これでいい。きっと正弘を好きになれると思っていた。

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