【恋愛小説】私のために綴る物語(14)
第三章 友人と恋人の違い(5)
史之は文華と一緒に自分の家に帰っていた。
文華を部屋の中に入れて、寝室に案内していた。メインの寝室を文華に使わせて、自分は書斎で寝ようとしていた。
「文華はベッド使っていいから。僕はこっちの部屋で寝る。冷蔵庫のものも好きに飲んでいい」
文華は気になっていたことを尋ねていた。
「ありがとう。で、ふーちゃん。澤田さんってふーちゃんと付き合っていた人?」
「何でそんなこと」
史之は機嫌が悪くなっていた。
「トイレ行っていた時、少しおしゃべりしたの。だから宴会でも隣りに来てくれてうれしかった」
「そう、それは良かった」
気のない答えに文華はつい言ってしまった。
「少し煽っちゃったかも。ふーちゃんって言った時、怖い顔してた」
「宴会じゃ連呼してたくせに」
史之は苦笑いをしていた。それで、彼女なしの連中がしみじみしてしまったのを思い出していた。
「今頃あの二人抱き合ってるかも」
「だから何。付き合っているんだ、当然だろう」
「どうかな。今晩がお初かもよ」
思わず史之は、文華を睨みつけていた。
「ふーちゃん、怖いよ。ひょっとしてより戻したかったりして」
文華はわざと煽ってみせた。
「僕は彼女に振られたんだ。そんなことできるわけ無いだろう。彼女は別の男を選んだ。それだけだ」
目は冷たかったが、睨みつけるところは緩んだので、文華は少し楽な気がした。
「それにしては澤田さん、ふーちゃん気にしてたけどね。今晩で吹っ切るのかぁ」
洗面台での多香子の目を思い出していた。
「君の話には付き合いきれない。何で僕がそんな事を気にするんだ」
「おばさんが、悩み相談に乗るよ。何でも聞いて」
文華は笑って見せていた。
女性と付き合うにしても、積極的に来られると断ることができず、面倒になると文華が呼ばれて彼女の役をする。そうして、別れるきっかけを何回作ったことか。
「年下のくせに。おばさんじゃないだろう。いとこだ」
「血統的には叔母でしょう。戸籍的にはいとこだけど。そうやって怒っているとお姉さんにそっくり。こわいこわい」
里村文華は史之の祖父の一番下の娘ではあったが、その母親はすでに亡くなっていた史之の祖母とは、別の女性だった。
父親が3歳のときに、母親が5歳の時に亡くなると、長男夫婦の養子となっていた。
もっとも、亡くなる前に父親としての最低限の義務として、文華のために財産を遺していた。その財産のおかげで、気ままな生活を送っていられるようだった。
「うちの母親とそっくりだって。そんな事言うのは嫌いだ」
史之を必要以上に構うことがあり、そんな母親を何処か拒絶していた。
「まぁまぁ、落ち着いて。そう、多香子さんに夏川さんの彼女ですかって聞かれたから、そうよと答えておいた」
「そのために連れてきたんだから」
「なんで、そんなにややこしいことにするのかなぁ」
「二股かけられた。僕は週末担当だと。これを見てどう思う」
そう言って、多香子のインスタのキャラカフェの写真を見せた。
「しかも、背景になっているのは、彼女が連れてきた。このときと同じシャツを着てきた。間違いないだろう」
「はいはいそうですね。そう言えば婚活順調?」
「何でそんな事聞く?」
流石に史之のイライラも頂点に達しそうだった。
「おじさんに時々アドバイスを貰っているの。身内の弁護士さん貴重だし。そうしたらふーちゃんについての、愚痴を聞いてあげる羽目になった」
「親父のやつ」
「久々にカモフラージュ彼女の話が来た時に、そうなりましたかって」
「もういい寝る」
「おやすみなさい」
はぁと文華はため息を付いた。どう見てもお互いに未練たっぷりなのに、離れることばかり考えるのか疑問だらけだった。
それでも、澤田さんが史之と別れてくれるのなら、行った甲斐があったということかもしれない。これで、また史之はフリーになるかもしれない。
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