【子育てエッセイ】#7 ペダルはもちろんハート型よね
先日、長女のいっちゃんの
5歳の誕生日プレゼントに、
自転車を買った。
本人が選んだのは、ペダルがハート型になっている、
なんとも可愛らしい一台。
店頭でそれを見つけたいっちゃんは、
もう一目惚れという感じで、
「これがいい!」と目を輝かせていた。
正直なところ、値段は安いとは言えない。
でも、かといってべらぼうに高価なわけでもない。
こういう時のために、普段はできる限り
節約をしているんだよなと、自分に言い聞かせる。
子どもが生まれてからは、
ある意味でのミニマリスト生活。
お金や時間をかける対象を、できる限り厳選してきた。
その積み重ねがあったからこそ、
「ここはOKを出すタイミングだ」と
迷いなく判断できた。
新しい自転車がやってきて初めての週末、
いっちゃんはさっそく練習をはじめた。
ストライダーには長く乗っていたから、
バランス感覚はある程度身についている。
だから補助輪はつけずにスタートすることにした。
別の感覚を変に覚えてしまうより、
最初から補助輪なしでの乗り方に集中するほうが
スムーズだろうと考えたのだ。
昨朝のこと。
リビングにいっちゃんの姿が
見当たらないなと思ったら、
自転車を置いている部屋に一人で行き、
にこにこと楽しそうに跨っていた。
まだ屋内保管をしているので、
実際には乗り回せない。
でも、それでも本人にとっては
特別な時間なのだろう。
新品の自転車にまたがり、
ペダルに足をのせながら
空想の中で走っているようだった。
歩いて数分のところに、
ちょうどいい広場がある。
コンクリートの歩道に芝生、
大きな桜の木、そしてベンチ。
定期的にイベントが行なわれたりするが、
普段は子どもがちらほらと遊んでいたり、
ワンちゃんたちのお散歩コースになっている感じの
静かで落ち着いた雰囲気だ。
自転車の練習をするには、
まさにぴったりの環境だった。
まだ日中の暑さがわりと強めの気候の中、
僕といっちゃんは、
そこで汗をかきながら自転車の初練習をした。
初日のテーマは「ペダルを漕ぐ」という
新しい動きを身体に覚えさせること。
いっちゃんは真剣な表情で、
でも時折笑顔を見せながら、
何度も挑戦を重ねた。
途中でママと、もうすぐ1歳半になる
次女のつーちゃんも様子を見にきてくれた。
つーちゃんも自転車に跨りたがるので
抱っこをして乗せてあげるけれど、
もちろん足はまだ宙ぶらりん。
そんな姿も、それはそれでなんともかわいい。
「頑張ってね〜」と、
しばらくして午前のお昼寝のために
2人は帰って行った。
買った自転車は16インチ。
大きさとしてはちょうどよい。
最初は僕が後ろからハンドルを支えて進む。
そして少し慣れてきたところで、
ハンドル操作をいっちゃんにゆだねてみて、
僕は後輪の上にある荷台のような部分だけを持ち、
後ろから並走する形に切り替えていく。
だんだんとコツを掴んでいくいっちゃん。
――しかし、これが思った以上に重労働なのだ。
片道50mほどはあるだろうか。
その距離を、常に中腰の状態で何本も走る。
サポート量も、支えすぎず、支えなさすぎず、
適度な感じを意識しながら。
いやいや、こちらの足腰はフル稼働。
なかなかのトレーニングである。
「おっと、左に寄りすぎだよ」
「もう少しハンドルをまっすぐ」
などと声をかけつつ、
一歩一歩並走する。
子どもにとっては、
ほんの少しのバランス調整も大冒険だ。
本人が全力を出しているのが伝わってくるから、
こちらも自然と真剣になる。
普段使わない筋肉がどんどん動員されて、
終わった頃には、学生時代の
あの懐かしい疲労感に包まれていた。
いっちゃんは「もう一回!」と
突き進むのではなく、
むしろ僕が息を切らしている様子を見て、
気を遣ってくれているようだった。
片道を漕ぎ終えるごとに、
スタンドを立てる練習も兼ねて
自転車を止めてくれる。
そして一緒にベンチに腰を下ろし、
水筒を手にしながら小休憩。
そんなやりとりが、
なんともやさしくてありがたかった。
もちろん、まだスイスイと走り出すには
時間がかかるだろう。
それでも、家族それぞれが
自分の自転車に乗って出かけられる日を
思い描くだけで、
なんだか胸が躍る。
桜の季節になったら、
この広場から自転車で
少し遠出してみるのもいい。
夏になったら川沿いの道を走ってみたい。
そんな未来を想像すると、
今日の汗も、足腰の疲れも、
すべてがまた次の楽しみの
前触れのように思えてくる。
子どもが自転車に乗れるように
なるまでの道のりは、
親にとっても一緒に歩む冒険なのだろう。
いっちゃんの笑顔と、自分の筋肉痛。
つーちゃんやママの楽しんでいる姿。
そのどれもが、この小さな記念日の証になった。

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