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馬の仕事がしたいわけじゃなくて馬を勉強したい

研修生になりたい

初めて行ったタイミングでだったかは覚えていないが、通い始めの早い段階で、D-J Ranchでは、研修生を募集しているのを知った。
鶴居に残るか、次のステップに進むか、私は選択を迫られていた。
もう馬じゃない世界に行く選択肢は、自分にはなかった。
のちに、社会不適合者と言われる私。
この時すでに、26。
もう馬がいない世界にいる自分があまり想像できなかったし、普通の仕事して暮らすって、なんだか別次元のことにさえ思えた。
とはいえ、乗馬インストラクターになりたいとかいう具体的な夢はこれっぽっちもない。
馬をやりたいんだけど、遊びじゃない。
上手くなりたいとかじゃなく、上手く扱えるようになりたい。
ちょっとエンジンがかかるのに時間がかかりすぎてしまったが、遅いのもまた私らしいっちゃ私らしい。
とにかく馬を勉強したい。

「私、研修生になりたいです」

誰でもできるを証明したい

何かやりたいと思った時、私はその環境にどっぷり浸かってみようと思ってしまうタイプだ。
器用なタイプではないので、通いながら習得できるほど、簡単ではないとも思っている。
自分のペースじゃない、目まぐるしいかもしれない情報過多にまみれて、必死に喰らいついてったら、いつか全然できなかったことが、当たり前かのようにできるようになっていたりするんじゃないかという憶測もあったと思う。
他力本願とかではなく、それくらいの環境に自分を追い込まないとダメかもしれないと思ったのだ。
選択で失敗はしたくない。
でも、進んでみて失敗するのと、やらずに後で後悔するのとだったら、私は前者をとる。
「俺にもできるんだから、お前にもできるよ」
持田さんのそんな言葉をまんまと鵜呑みにした。
馬に関してへなちょこで自信が持てなかった自分が、まだ馬を続けてここにいる。
そんな自分が、誰でもできるを証明したい。

明確な自分の軸が多分ここで決まった

研修生になりたいという旨を持田さんに伝え、一応面接を受けた。
どうして研修生をやりたいと思ったかを聞かれた。
私は、いつぞやの新馬調教の失敗のしこりが悔しさと共にずっと残っているという話をした。
競技をやりたいわけでもない。
インストラクターになりたいわけでもない。
としたら、自分は何がやりたくて馬を続けているのかと言ったら、やっぱり馬をどう作るのかに興味があって、新馬調教ができるようになりたいんだという想いを伝えた。

稼がないと生きていけないのはわかっているが、これが仕事につながるかどうかよりも、勉強したい気持ちの方が強い。
今後どうやって稼ぐことに繋げていくのかは、これから考えていけばいい。
そんなことさえも多分頭になかったかもしれない。

新馬調教ができるようになりたい。


ここから20年ちょっと経った今、まだ私は新馬調教が面白くて仕方ない。
年々面白くなっていて、これが仕事になっていることが不思議なくらいだ。
なんでこんなに面白いものをみんなわからないんだくらいに思ってはいるけど、それは人それぞれ。
それを見つけられた自分はきっと幸せだと思う。
そんなことを思っていると、彫刻に魅せられた父親の顔がチラついた。
10代でそれをみつけられた父は、すごい。

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