ナイトバードに連理を Day 8 - B - 2
(1272字)
清心と近衛は早矢の家からの最寄り駅で待ち受けていた。早矢の隣に七瀬を発見した二人それぞれの、驚きと不審は明白だった。四人は人通りの絶えない改札の外から離れ、駅前広場の隅で改めて向き合った。
「おはよう、清心。全部話しといた」
七瀬が快活に言うと、清心は大きく肩を揺らしてからおずおずと早矢に視線を向けた。早矢が頷くと、その間を遮って七瀬が近衛に歩み寄った。
「こっちでははじめまして、九猿近衛さん。むこうでも顔は合わせてないけど。私は伊佐魚七瀬、清心の友達、今日から転校生、同い年、あなたと同じ夜目」
「は、はあ、どうも?」
近衛は気圧されながら後ずさり、なおも距離を詰めようとする七瀬に押されてそのまま離れて行った。早矢と清心は珍しい物を見る気分で二人を見送った。
「七、向こうで見るときと性格違くないか」
「そうなの? じゃあ、気を張ってたんじゃないかな。つまりその、犬吠くんにバレないように」
数秒、早矢と清心は間を計るような沈黙を置いた。
「……あー、駅。わざわざ学校通り過ぎて来たのか? どうせ向こうで会うのに」
「それはまあ、そうなんだけどね。早く顔を見たくて……もちろん、ココちゃんとも。会ってもちゃんと話せないのは、分かってたんだけど」
清心は改札に吸い込まれていく人の流れを眺めながら眉を歪めて笑い、その笑顔を深呼吸で消し、そして早矢の目をまっすぐに見た。
「七瀬が話してくれたことは助かるけど、本当は自分の口から伝えたかった。ごめんなさい。ずっと隠し事が多かったことと……もしかしたら、本当にただの迷惑でしかなかったかもしれないこと。どれだけ謝っても足りないと思うけど……」
早矢は清心の潤んでいく視線を受け止め、歯を食いしばった。
「分からないことがあるのは、しょうがないだろ。本気で謝ってるなら殴るぞ」
「それで犬吠くんの気が済むなら、いいよ」
清心は鼻をすすって両手をまっすぐに下ろし、学校鞄を取り落とした。早矢は拳を握り、清心の肩にそっと押し当てた。
「確かにお前の秘密には振り回された。死ぬかと思ったし、ずっと試されてたことには腹が立つ。けどそれがどうした? 俺はお前の力を借りて、お前の力になりたい。空鳥は何の得もないのに俺を助けてくれた。その権利は俺の方にだってあるはずだろ。味方でいてくれ。味方で、いさせてくれ」
早矢は肘を折り、拳を清心の前に差し出した。清心は目を固くつぶり、眼鏡の下から目尻を拭った。そして早矢の拳を両手で掴み、祈るように自分の額へ押し当てた。
「ありがとう、犬吠くん。これまでも、これからのことも……。よろしくお願いします」
――――
「ところで今度こそ、本当に、全部、教えてくれたんだよな?」
「うん……たぶん。七瀬がうっかりしてなかったら……」
「おい」
「いや、うん、もし抜けてても全部話すよ。もう犬吠くんとココちゃんに隠し事はしない」
「ならいい。頼むぞ神様」 【終わり】
――――
ナイトバード(night bird):夜鳥。夜に出歩く人。
連理:一本の枝に他の枝がつき、一つの枝のように木理が同じになること。人の仲が親密であることのたとえ。
