281.紅白歌合戦半世紀
先日、2025年の紅白歌合戦の出場歌手が発表されました。そのリストを眺めていて、初出場の歌手は名前も曲も、どちらもほとんど知らないと思いました。初出場以外の歌手もあまりよく知らない名前が多いというのが第一印象でした。
最近は若い人ばかりが選ばれているのではないかと思う一方、それでもリストをよくよく眺めていると、我々の世代にも馴染みのある歌手名も少なくないことに気付きました。
今年は「昭和100年」と言われてきましたが、ちょうど半世紀前の昭和50年(1975年)の紅白歌合戦と、50年後の今年(2025年)の紅白歌合戦の出場歌手にどんな変化があるのか知りたくなりました。
思い起こせば今から半世紀前の1975年の紅白歌合戦の時は、私は16歳の高校一年生で、どの歌手もどの歌もすべて知っていました。あの頃の私は、着物を着ている人のことをおじいさんおばあさんだと思っていたので、大御所の演歌歌手は私にとっては高齢者に見えました、それでも出場歌手全員を知っていました。
若者だった私は高齢の歌手は知っていたけれど、高齢者になった私は若者の歌手をなぜ知らないのだろうなどと不思議に思ったりしました。
そこで、1975年と2025年の全出場歌手の出場時の年齢を調べて、分析してみようと思い立ちました。方法は次のような手順で行うことにしました。
出場者全員の年齢をWikipedia等を使って調べます。複数名からなるグループの場合はメンバーの平均年齢を計算し、小数点第一位を四捨五入しました。2025年には「特別企画」が複数ありますが、こちらの歌手も同様に調査しました。
この結果を基に、出場歌手を10代から70代に年齢別に区分けします。
その上で、分析してみることにしました。
手順1
まずは全出場歌手の年齢を調べます。
1975年〈全部で48名(組)〉グループは*
年齢 出場歌手名/曲名
25 細川たかし/心のこり
17 岩崎宏美/ロマンス
20 郷ひろみ/花のように鳥のように
21 南沙織/人恋しくて
29 堺正章/明日の前に
24 藤圭子/ さすらい
18 ずうとるび*/ 初恋の絵日記
19 キャンディーズ*/年下の男の子
21 三善英史/細雪
25 チェリッシュ*/ペパーミント・キャンディー
25 ダウン・タウン・ブギウギ・バンド*/港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ
25 和田アキ子/もっと自由に
17 桜田淳子/はじめての出来事
20 西城秀樹/白い教会
30 佐良直美/ オブ・ラディ・オブ・ラ・ダ
32 殿さまキングス*/女の純情
17 森昌子/あなたを待って三年三月
27 にしきのあきら/赤い恋のバラード
30 水前寺清子/大勝負
46 村田英雄/無法松の一生
20 アグネス・チャン/愛の迷い子
24 フォーリーブス*/ハッピー・ピープル
34 青江三奈/神戸北ホテル
32 内山田洋とクール・ファイブ*/中の島ブルース
28 伊東ゆかり/わたし女ですもの
42 菅原洋一/愛の嵐
16 山口百恵/夏ひらく青春
45 三橋美智也/津軽じょんから節
17 西川峰子/あなたにあげる
32 橋幸夫/木曾ぶし三度笠
29 由紀さおり/慕情
19 野口五郎/私鉄沿線
27 森山良子/歌ってよ夕陽の歌を
52 三波春夫/おまんた囃子
28 森進一/あゝ人恋し
23 小柳ルミ子/花車
27 沢田研二/時の過ぎゆくままに
32 梓みちよ/リリー・マルレーン
43 フランク永井/君恋し
25 八代亜紀/ともしび
51 春日八郎/赤いランプの終列車
27 いしだあゆみ/渚にて
39 北島三郎/残雪
27 都はるみ/北の宿から
28 布施明/シクラメンのかほり
28 ちあきなおみ/さだめ川
27 五木ひろし/千曲川
37 島倉千代子/悲しみの宿
2025年〈全部で49名(組)〉グループは*
年齢 出場歌手名/曲名
25 CANDY TUNE*/倍倍FIGHT!
25 FRUITS ZIPPER*/わたしの一番かわいいところ
29 新浜レオン/Fun! Fun! Fun!
41 ORANGE RANGE*/イケナイ太陽
26 King & Prince*/What We Got ~奇跡はきみと~
20 ILLIT*/Almond Chocolate
71 天童よしみ/あんたの花道 ~ミャクミャクダンスSP~
22 &TEAM*/FIRE WORK
38 LiSA/残酷な夜に輝け
25 M!LK*/イイじゃん
21 乃木坂46*/Same numbers
46 純烈*/いい湯だな(ビバノン・ロック)
29 Number_i*/GOD_i
25 幾田りら/恋風
48 氷川きよし/「愛燦燦」(特別企画)
24 aespa*/Whiplash
31 アイナ・ジ・エンド/革命道中 – On The Way
79 堺正章/ザッツ・エンターテ インメント・メドレー(特別企画)
24 BE:FIRST*/夢中
61 稲葉浩志/福山雅治「木星feat . 稲葉浩志」(特別企画)
45 三山ひろし/酒灯り~第9回 けん玉世界記録への道~
48 ハンバート ハンバート*/笑ったり転んだり
58 坂本冬美/夜桜お七
52 水森かおり/大阪恋しずく ~紅白ドミノチャレンジ2025~
25 Vaundy/Tokimeki
40 RADWIMPS*/20周年スペシャルメドレー「賜物」「正解」
23 AKB48*/AKB4820周年スーパーヒットメドレー「フライングゲット」他
60 TUBE*/紅白 夏の王様メドレー「シーズン・イン・ザ・サン」他
20 HANA*/ROSE
27 ちゃんみな/ちゃんみなSPメドレー「NG」他
67 岩崎宏美 聖母たちのララバイ
44 星野源/「創造」(特別企画)
44 サカナクション*/怪獣・新宝島
76 矢沢永吉/「真実」(特別企画)
30 SixTONES*/6周年アニバ ー サリーメドレー「Imitation Rain 」他
70 郷ひろみ/2億4千万 の瞳-エキゾチック・ジ ャパン-
41 back number */どうしてもどうしても・水平線
30 あいみょん/ビーナスベルト
63 久保田利伸/紅白スペシャルメドレー「1, 2, Play 」他
37 Perfume*/Perfume Medley 2025「ポリリズム」他
76 髙橋真梨子/桃色吐息
78 布施明/MY WAY
67 石川さゆり/天城越え
71 松任谷由実 「天までとどけ」(特別企画)
34 米津玄師/IRIS OUT
56 福山雅治/クスノキ-500年の風に吹かれて-
67 玉置浩二 「ファンファーレ」(特別企画)
47 MISIA/MISIAスペシャル「Everything」
30 Mrs. GREEN APPLE*/GOOD DAY
63 松田聖子/青い珊瑚礁
※ハンバート ハンバートは生年のみの平均
※AKB48は現役メンバー48名とレジェンドメンバー8名、出場者全員の年齢を平均しました
※12月25日に矢沢永吉、12月28日に松田聖子の出場が発表され、出場者数は50組となりました。
手順2
次に、出場歌手の年齢別に一覧表にしてみました。
1975年 2025年
10代………. 8……….….0
20代………25…………16
30代………..9…………..7
40代………..4…………10
50代………..2…………..3
60代………..0…………..7
70代………..0…………..7
合計………48…………50
手順3
分析します。
分析その1 若年層が激減
最初に私が抱いた印象、つまり「最近は若い人ばかりが選ばれているのではないか」という印象とは裏腹に、若年層の出場歌手は激減していました。
1975年には、10代の歌手が8組いましたが(岩崎宏美、ずうとるび、キャンディーズ、桜田淳子、森昌子、山口百恵、西川峰子、野口五郎)、2025年には1組もいなくなっていました。
2012年生まれのAKB48研究生の近藤沙樹が13歳で最年少ですが、グループの平均年齢は現役とレジェンドメンバー出場者全員の平均年齢は22.83歳でした。韓国の5人組ILLITの平均19.6歳(21+21+21+18+17)が最年少グループですが、但し小数点第一位の四捨五入で、10代ではなく20代としました。
1975年当時16歳だった私にとって10代の歌手は身近な存在だったので、紅白歌合戦は楽しみでしたが、今の10代にはそういう存在がいないのかと思いました。
それどころか10代20代を合わせてみても1975年は 8+25=33 と33組ですが、2025年は 0+16=16 と16組となり、半減しています。今年の「新語・流行語大賞」で「オールド・メディア」という言葉がトップ10入りしていましたが、若年層のテレビ離れはこんなところにも現れているのかもしれません。
分析その2 高齢層は激増
1975年の50代以上の出場歌手は、春日八郎(51)と三波春夫(52)のお2人だけでした。60代、70代の歌手は1人もいませんでした。それが、2025年になると、70代も60代共に7名と激増しています。50代を加えたところで、1975年は2名、2025年は3名ですから、50代以上全体で考えたとしても、1975年は2名に対し、2025年は 7+7+3=17 と17名です。
2025年の50代以上の出場歌手は、堺正章(79)、布施明(78)、高橋真理子(76)、矢沢永吉(76)、松任谷由実(71)、天童よしみ(71)、郷ひろみ(70)、石川さゆり(67)、玉置浩二(67)、岩崎宏美(67)、久保田利伸(65)、松田聖子(63)、稲葉浩志(61)、TUBU(60)、坂本冬美(58)、福山雅治(56)、水森かおり(52)の合計17名です。
50代以上が、2名→17名激増というのも驚きますが、1975年の最高齢の歌手が、52歳の三波春夫だったということにも驚きました。ちなみに40代の歌手もわずかに4名、菅原洋一(42)、フランク永井(43)、三橋美智也(45)、村田英雄(46)の方々でした。
冒頭にも書きましたが、私は子どもの頃着物を着ている人はおじいさんおばあさんだと思っていたので、今ここに挙げた着物を着ていた歌手のことを、お年寄りだとばかり思っていましたが、40代50代の、今の私からみれば若者だったのかと驚くばかりです。
おまけの分析1 女性歌手の年齢
1975年の最高齢の女性歌手は、大トリを取った島倉千代子(37)でした。当時30代の女性歌手は5名しかいませんでした。相良直美(30)、水前寺清子(30)、梓みちよ(32)、青江三奈(34)、そして島倉千代子です。
紅白歌合戦という名称からいって、男女の比率は同じであり、その年齢層もおおよそ同じなのだろうと思っていましたが、実は女性歌手の24組中30代は5組のみで、あとの19組は10代と20代であったというのは驚きました。
2025年の男女別での出場歌手(グループ)の年齢分布は次の通りです。
男性………...女性
20代…7組(26%)9組(39%)
30代…3組(11%)4組(17%)
40代…7組(26%)2組( 9%)
50代…1組( 4%) 2組( 9%)
60代…4組(15%)3組(13%)
70代…5組(19%)3組(13%)
合計..27組 23組
20代と30代を合わせて見ると、男性グループは7+3=10、10組(約37%)に対して、女性グループは9+4=13、13組(約56%)です。女性歌手の半数以上が30代以下というのは、半世紀前ほどではないにしろ、今なお女性は若さが求められているということでしょうか。
おまけの分析その2 グループの激増
50年前に比べてグループでの出場が増えているようなので数えてみました。結果は、1975年は7組、2025年は22組であることがわかりました。出場歌手の数が48組から50組に増えたとはいえ、7組→22組というのは3倍以上ですから、本当に多くなりました。
バンドでの参加が増えたことや、アイドルグループが増えたからなのかもしれません。
結論
今年の紅白歌合戦の出場者リストが発表された時、あまりよく知らない歌手が多いと感じ、最近は若い人ばかりが選ばれているのではないかと思ったのですが、1975年と2025年の出場歌手を年齢別に比べてみると、私の予想とはまったく違った結果となりました。
① 若年層の激減
・10代の歌手が、8組→0組に激減
・20代以下の歌手が、33組→16組に半減
②高齢層は激増
・60代以上の歌手が、0組→14組と激増
・40〜50代の歌手は、6組→13組と倍増
NHKの「選考について」というサイトによれば、紅白歌合戦の選考にあたっては、1.今年の活躍、2.世論の支持、3.番組の企画・演出という3つの要素を中心に総合的に判断したとあります。特に世論の支持では、7歳以上の全国2,027人を対象に「紅白に出場してほしい歌手男女各3組」、同じく8,000人を対象に「紅白に出場してほしい歌手男女各3組以上10組まで」等の質問をした調査結果をもとにしているそうです。
少子高齢化と言われて久しいですが、世論調査の母集団自体が少子高齢化になっているわけですから、このように少子高齢化の傾向が顕著に現れるのも当然なのかもしれません。
今回は、たまたま目についた紅白歌合戦の出場者の傾向に過ぎませんが、この少子高齢化というのは、政治、経済、あらゆる社会活動においても、私のような高齢者が想像しているよりも、ずっと大きな影響を与えているのではないかと再認識することとなりました。
また「若者だった私は高齢者の歌手は知っていたけれど、高齢者になった私は若者の歌手をなぜ知らないのだろう」という私の疑問は、事実認識そのものに誤りがありました。私が高齢者だと思っていた歌手の多くは40代、50代でした。特に、島倉千代子は30代でしたが、着物を着ていたという理由だけで高齢者と誤認していました。
とはいえ、若い頃には年上の歌手のことをよく知っていたけれど、私は最近の若い歌手のことはあまりよく知らないのだと改めて感じました。小説家でも明治・大正の作家はよく知っていても、平成・令和の作家となるととんと疎くなります。
今年はあまり知っている歌手は出ないから、紅白歌合戦はもう見なくてもいいかななどと思っていましたが、とんでもないことでした、50代〜70代の歌手だけで17組も出場します。20代の16組を上回る人数です。せっかく調べたことだし、今年はリアルタイムで見ようと思います。
皆さま、どうぞ良い年をお迎えください
