【日々のこと⑪】ジムのサウナ
通っているスポーツジムにサウナがある。
ジムのサウナにはテレビがある。
そのテレビに映っている番組の正解はなんだろう。
僕としては、スポーツ中継が映っていてほしい。
だって、スポーツジムなのだから。
地元チームの試合がある時は、大抵それだ。
マラソンの時もあった。
サウナにいる短い時間では、試合結果も優勝した人も分からないけれど、いつもいい汗をかけた気がして外に出る。
体を動かした後のサウナは10分と決めている。
それ以上だと、だるくなってしまうのだ。
この前はクイズ番組が映っていた。
なかなかに難しい問題だったが、頭の中で正解が浮かんでいた。
自信がある。
答えを確認してすっきりした辺りでちょうど10分になりそうだ。
解答者の答えが出揃ったところで、そう、あれです。
「正解はCMの後で!」
10分経ったので、正解を見ずに外に出る。
クイズは正解が発表されるまでがワンセットだ。
自信はあったが、モヤっとする。
ジムのサウナのテレビで流れている番組に正解があるとしたら、クイズ番組は不正解だ。
自分の答えはたぶん正解だったけれど、ジムのサウナでクイズ番組は圧倒的に不正解。
さて今日は何かなと思いながらドアを開けた。
いつもと様子が違う。
テレビ画面のほとんどを将棋盤が占めている。
そしてじっと動かない2人。
将棋の対局だった。
今までバラエティやニュースの時もあったが、将棋の対局は初めてだ。
僕は将棋のルールが全く分からない。
ここにいられるのは10分。
ほとんど静止画のまま、間もなく10分になる。
テレビと時計を行き来する回数が、いつもの倍以上あった気がする。
サウナ内にいる7人は、今日のテレビは見ていないのではないか。
周りはみんな項垂れている。
外に出る時間が近づいている僕は、ぼうっとテレビの方に顔を向けていた。
右側の将士が急に駒をパチンと置いた。
「おっ」
隣の人が小さく叫ぶ。
今の一手はすごいやつなのか。
聞いてみたいが、もう10分を少し過ぎている。
画面はまた、ほぼ静止画に戻っている。
画面をしばらく凝視してみるが何も起こらない。
今まででいちばん後ろ髪をひかれながらサウナを出た。
二十四節気は「啓蟄(けいちつ)」
冬眠していた虫や動物が土から出てくる時期。春の到来を告げる時期だという。
いつもより体がポカポカしている気がするのは、サウナに居すぎてしまったからか。それとも春が近づいているからか。
