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平凡な私が空前絶後の超絶怒涛のスーパー主婦になった話



「ワキ毛を剃ってきてほしい」

全てはこの一通のLINEから始まった。



この珍妙なLINEの送り主は高校時代のクラスメイトであり、かれこれ10年来の友人であるマミとミクだ。

先日28歳を迎えた私の誕生日を祝いたいとの嬉しいお誘いと共に、上記のとんでもないドレスコードが言い渡されたのだ。


我ながら体毛の処理は甘い方だと思う。
極度の面倒くさがりが割りかし薄めの体毛に恵まれたので、つい疎かにしてしまうのだ。長い付き合いの中で彼女たちがそれを重々承知なのはわかるが、それにしても友達から「体毛を剃ってこい」と言われる日が来るとは思ってもみなかった私は驚いた。

あらゆる疑問を飲み込み振り絞るように理由を尋ねると

「それは言えない。ワキ毛だけじゃなくて腕毛、スネ毛、とにかく目につく体毛を剃ってきてくれ」

あまりの恐怖に何度も尋ねたが、返ってくる答えは同じだった。

私はどうなってしまうのだろう。まだ上着が欠かせないこんな春先に、体毛を剃って参加するイベントがあるだろうか。水着になるのか?裸になるのか?それとも…
嫌な妄想だけが脳内で膨らむ。

何も情報がなく不安に怯えながらも言われた通りに腕、脇、足の体毛を処理し誕生日パーティーの日を迎えた。



スベスベのツルツルになった私はマミとミクと一緒に連れられ、とあるレンタルルームに通された。わざわざ私の誕生日を祝うために借りたらしい。彼女たちの謎のやる気と、このシチュエーションが怖すぎる。

「悪いようにはしない」

彼女たちの悪い笑顔が私の不安を更に掻き立てる。私は今からこんな見知らぬ場所で裸に剥かれ、見世物になるのだ。父よ、母よ、そしてオット。ごめんね…

レンタルルームは大きな机に椅子が6脚、ホワイトボードがあるもののお洒落なインテリアのおかげで会議室らしさはかなり控えめだった。
ほくそ笑む2人からまぁまぁ座れと促される。

私は大人しく椅子に座った。今まで受けたどの面接よりも緊張し、嫌な汗が背中を伝った。
そもそも誕生日を祝われる人間の緊張感ではない。“絶対に体毛を剃らなければいけない何かが起きる”という事実が脳から離れないからだ。

2人は「エムコ、お誕生日おめでとう!」と大きな紙袋の中からいくつもの小さなラッピングを取り出した。
包まれている袋から、それが私のお気に入りのブランドのものだとわかる。予想を裏切るプレゼントにここ数週間の緊張が少しほぐれた。

中身はキーケースと一体化したミニ財布、巷で女子に評判のリップグロス、そして我が家のペットのウサギにそっくりなシルバニアファミリーのお人形と、私の嬉しい物ばかりだった。
喜ぶ私を見て、彼女たちも嬉しそうにしている。


「このプレゼントたちは本命だけど、オマケみたいなもの。本当のプレゼントはここからだよ。」


ミクの言葉に現実に引き戻される。
そうだ、私はこの日の為に体毛を剃らされたのだ。私の体毛を剃り、レンタルスペースを借りてまでしなければならない“何か”の為に。

マミが神妙な面持ちで私に問いかけた。

「あなたはTwitterで、2021年の2月21日の午後4時35分。何とツイートしたか覚えていますか?」


全く思い出せない。

高校時代の友達だけと繋がったTwitterのアカウントがあるのだが、そこにはいつも「寿司が食べたい」「腹減った」といったくだらないツイートしかしていない為全く記憶になかった。

私が必死に脳内の引き出しをまさぐっていると、ミクが1枚のコピー用紙を私の前に差し出した。



「サンシャイン池崎が愛しくてたまらん」



そこには紛れもなく私のTwitterの、スクリーンショットが印刷されていた。

そうだ。私はこの時猛烈にサンシャイン池崎にハマっており、暇さえあればYouTubeで彼のチャンネルを見ていたのだ。確かに私は書いた、サンシャイン池崎が愛しいと。

私がコピー用紙から視線を上げると、

「エムコ、誕生日おめでとう」

ミクから手渡されたそれは、サンシャイン池崎のコスチュームだった。

全ての伏線の合点がいく。
彼女たちが私の体毛を剃らせたのはこの為だったのだ。

「サンシャイン池崎が愛しい」=「私をサンシャイン池崎にしよう」という方程式は全く意味がわからなかったが嬉しかった。
私は着ていた服を脱ぎ捨て、サンシャイン池崎の衣装を纏った。爽やかなタンクトップとショートパンツは素肌に心地よく、豆絞りをギュッと頭に巻くと気分はまさに空前絶後の超絶怒涛のスーパー主婦だ。思わず渾身のイェーーーー!!!が漏れる。

タンクトップの名前は池崎から私の苗字に変わっていた。どこまでも抜かりのない奴らである。


これを私に着せたいが為にわざわざレンタルスペースを手配した彼女たちの執念には脱帽だ。我ながらいい友達を持ったと思う。


空前絶後の超絶怒涛のスーパー主婦
おサボりを愛し おサボりに愛された女
昼寝、夕寝、つまみ食い
全てのおサボりの生みの親

そう我こそは

身長159㎝、体重51キロ、
財布の中身は8600円
クレジットカードの暗証番号は「1107」
「いい女」って覚えてください

全てを曝け出したこの俺は
サンシャイーーーーーーーン エーーーム

ボウッ

コッ……


イェ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!


ジャーーーースティス!!!!


この衣装は部屋着にしよう。
全てを曝け出したこの私は、ムダ毛の処理に余念のない、イカした女になれるはずだ。


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