不安を好奇心へ変換する心理システムーー米澤好史『愛着障害は何歳からでも必ず修復できる』
この本をおすすめしたい人
米澤好史『愛着障害は何歳からでも必ず修復できる』は、子育て中の親、教師、保育士、福祉職、心理職など、子どもや若者の支援に関わる人にまず勧めたい本である。
しかし、本書の射程はそれだけにとどまらない。
新しい環境に入ることに強い不安を感じる人。
失敗を恐れ、挑戦する前に諦めてしまう人。
人間関係において、相手を信頼することと、自分を明け渡すことの区別がつきにくい人。
誰かに依存しすぎたり、反対に、誰にも頼れなかったりする人。
さらには、組織のなかで人を育てる立場にあり、「安心させること」と「甘やかすこと」の違いに悩んでいる人にも、本書は重要な視点を与えてくれる。
本書を読んで最も強く印象に残るのは、愛着を単なる親子の情緒的な結びつきとしてではなく、もっと大きな働きとして捉えている点である。
愛着とは何か。
本書の議論を一つの言葉にまとめるなら、愛着とは、
不安を好奇心へ変換する心理システム
である。
未知の世界を前にしたとき、人は誰でも不安を感じる。その不安が恐怖や回避、攻撃や依存に変わるのか、それとも探索や学習、創造や挑戦へ向かうのか。その分岐点にあるのが、愛着形成なのである。
未知の世界は、まず不安として現れる
人間にとって、未知のものは本来的に不安である。
知らない場所に入る。知らない人に会う。新しい仕事を始める。初めての課題に取り組む。自分とは異なる考え方に触れる。
これらはいずれも、自分がこれまで身につけてきた理解や予測が通用しない状況に身を置くことである。
未知の環境では、次に何が起きるかわからない。自分が受け入れられるかもわからない。失敗するかもしれない。傷つくかもしれない。拒絶されるかもしれない。
だから、不安を感じること自体は異常ではない。
むしろ不安とは、未知に直面した人間の自然な反応である。
にもかかわらず、同じ未知を前にしても、ある人は強く怯え、身を引く。別の人は、不安を感じながらも一歩を踏み出す。さらに別の人は、未知そのものに魅力を感じ、好奇心をもって近づいていく。
この違いはどこから生まれるのか。
好奇心が強い人は、生まれつき恐怖を感じにくいのだろうか。挑戦できる人は、単に楽観的なのだろうか。
本書が示すのは、もっと関係的な答えである。
人は、自分が守られているという感覚をもてるとき、不安を好奇心へ変えることができる。
不安がなくなるわけではない。不安を抱えたままでも、そこから先へ進めるのである。
好奇心とは不安がないことではない
一般に、不安と好奇心は正反対の感情のように考えられている。
不安な人は動けず、好奇心のある人は積極的に動く。しかし両者は、実は同じ状況から生まれている。
どちらも、未知のものを前にした反応である。
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