炭火と地層と、ウバメガシ。室戸だけの焙煎ができる理由
高知県室戸市。
ここには「ジオパーク」という名前のついた、少し不思議で、でもとても奥深い自然の舞台があります。
一方、私はこの土地で最近炭火焙煎に取り組んでいます。コーヒー好きの方には馴染みのある言葉かもしれませんが、なぜ「ジオパーク」と「炭火焙煎のコーヒー」が結びつくのか?と不思議に思われるかもしれません。
この記事では、室戸の地形と文化が、どのように炭火焙煎とつながっているのかをお話ししてみたいと思います。
室戸の大地が育てた「炭に適した木」ウバメガシ
私が炭火焙煎に挑戦しようと思ったキッカケが、土佐備長炭と呼ばれる炭です。
この炭の原料となるのが、「ウバメガシ」という木。室戸の海岸沿いを歩くと、見慣れないけれどどこか力強いこの木を見かけることがあります。
ウバメガシは、
潮風に強く
やせた土壌でも育ち
岩場や急斜面にも根を張る
という、かなりタフな木です。
実はこれ、室戸ジオパークの特徴そのものとも言えます。
室戸は、隆起海岸や断層などが連なる痩せた大地。黒潮の影響で冬も温暖な気候もあり、ウバメガシにとって理想的な環境です。
つまり、ウバメガシが自然に育つための条件が、この室戸にはすべてそろっているんです。
地形・地質・気候の3拍子が揃った「ジオ的な環境」が、炭の素材を育ててくれています。
備長炭の製法は、お遍路さんが運んできた
ただし、木があるだけで炭ができるわけではありません。
ここで登場するのが「文化」の側面です。
室戸には、古くから薪としてウバメガシを使う習慣がありました。そんな中、紀州(現在の和歌山県)からやってきたお遍路さんが、備長炭の製法を室戸に伝えたのです。
自然に育った木に、旅人の知恵が加わり、地元の人々の営みが重なることで、室戸の「土佐備長炭」は生まれました。
これはまさに、ジオパークが大切にしている「地形・人・文化のつながり」そのものです。
土佐備長炭で焙煎するということ
備長炭には、普通の炭にはない特性があります。
非常に硬く、高温で長時間燃焼する
火力が安定しており、遠赤外線を発する
この遠赤外線によって、コーヒー豆の内部までじっくりと熱が通り、ふっくらと均一に焙煎されるのが特徴です。
私は、この室戸の大地が育てた炭でコーヒーを焙煎することに、大きな意味を感じています。
それは単に味の良し悪しという話ではなく、「この土地の物語が詰まった一杯」であることが、何よりも価値だと思うのです。
地形と文化がつくった、室戸だけの体験
炭火焙煎のコーヒーを楽しむという行為は、ただの飲食体験ではなく、
この地に根ざした自然・文化・歴史にふれる行為でもあります。
たとえば、
急峻な地形と痩せた土地に耐えて生きるウバメガシ
黒潮の温暖な気候に支えられた森林
旅の中で製法を伝えたお遍路さん
そしてそれを受け継ぎ、炭を焼く地元の人々
それらが重なり合って、今、私の手元に土佐備長炭があり、コーヒーを焙煎できているのです。
この一杯は、単なる嗜好品ではありません。
室戸という土地の記憶と恵みを感じるものなのです。
おわりに
「ジオパーク」と「コーヒー焙煎」。
まったく別の世界に見えるかもしれませんが、視点を変えれば深く結びついていることが見えてきます。
もし室戸を訪れることがあれば、ぜひ土佐備長炭で焙煎したコーヒーを味わってみてください。
それは、室戸の大地が育て、文化が磨いた、ここにしかない特別な味です。
