モモちゃん畑の蘭ちゃん植物教室 胡蝶蘭編 第4話|胡蝶蘭の水やりは毎日じゃない
〜乾いたらたっぷり、でも水のあげすぎに注意〜
前回は、胡蝶蘭の根っこがなぜ緑色に見えるのかを学びました。
胡蝶蘭の根っこには、ベラメンというスポンジのような層があります。
乾いていると白っぽく見える。
水を吸うと緑色に見える。
空気にふれることも大切。
そして、根っこが元気だから、きれいな花を咲かせることができる。
胡蝶蘭は、花だけでなく、根っこを見ることがとても大切な植物です。
今回のテーマは、胡蝶蘭を育てるうえで、多くの人が悩むポイントです。
それは、
胡蝶蘭の水やりは毎日じゃない
ということです。
植物には水が必要です。
だから、
「毎日水をあげたほうが元気になるのでは?」
「水をたくさんあげれば、花が長持ちするのでは?」
「乾かすとかわいそうでは?」
と思う人もいるかもしれません。
でも、胡蝶蘭の場合、毎日水をあげることが、かえって根っこを弱らせてしまうことがあります。
ここで、モモちゃん畑の植物案内役、蘭ちゃんの登場です。
蘭ちゃんは、胡蝶蘭の鉢を見ながら言いました。
「胡蝶蘭に大切なのは、水をたくさんあげることじゃないんだよ。乾く時間をつくってあげることも大切なんだ」
胡蝶蘭は水が嫌いなの?
まず、ここを間違えないことが大切です。
胡蝶蘭は、水が嫌いな植物ではありません。
水は必要です。
葉を元気に保つためにも、根を働かせるためにも、花を咲かせるためにも、水は欠かせません。
でも、胡蝶蘭は、ずっと濡れたままの状態が苦手です。
ここが大切です。
胡蝶蘭は、もともと土の中で育つ植物ではありません。
あたたかい地域の森の中で、木の幹や枝にくっついて暮らしていました。
雨が降れば水を吸います。
雨がやめば、風が通って乾いていきます。
また雨が降れば、水を吸います。
つまり、胡蝶蘭の根っこは、
濡れる時間と乾く時間をくり返す環境
に合っています。
蘭ちゃんは言いました。
「胡蝶蘭は、水を飲むのは好きだけど、ずっと水の中にいるのは苦手なんだよ」
これは、人間にたとえるとわかりやすいです。
水を飲むことは大切です。
でも、ずっと水の中に顔を入れられていたら苦しいですよね。
胡蝶蘭の根っこも同じです。
水は必要。
でも、空気も必要。
水だけでは、根っこは元気に働けないのです。
毎日少しずつ水をあげるとどうなる?
胡蝶蘭を育てるときに、よくある失敗があります。
それは、毎日少しずつ水をあげることです。
一見、やさしい育て方に見えます。
「少しずつなら大丈夫」
「毎日気にかけているから安心」
「乾かすよりよさそう」
そう思うかもしれません。
でも、毎日少しずつ水をあげると、鉢の中がずっと湿った状態になりやすくなります。
特に、水苔で植えられている胡蝶蘭は、水をよく含みます。
表面は乾いて見えても、鉢の中はまだ湿っていることがあります。
その状態で毎日水を足してしまうと、根っこが乾く時間を失ってしまいます。
すると、根のまわりの空気が少なくなります。
根っこは呼吸しにくくなります。
その結果、根が弱ってしまうことがあります。
さらに進むと、根腐れにつながります。
蘭ちゃんは少し真剣な顔で言いました。
「毎日水をあげているのに元気がないときは、水が足りないんじゃなくて、水が多すぎることもあるんだよ」
これは、胡蝶蘭の育て方でとても大切なポイントです。
葉がしわしわになっている。
花がしおれている。
元気がない。
そんなとき、すぐに「水不足だ」と決めつけるのは危険です。
実は、根腐れで水を吸えなくなっている場合もあります。
水をあげすぎて根が傷む。
根が傷むから水を吸えない。
水を吸えないから葉がしわしわになる。
葉がしわしわだから、さらに水をあげる。
さらに根が傷む。
このような悪い流れになってしまうことがあります。
基本は「乾いたらたっぷり」
では、胡蝶蘭の水やりはどうすればよいのでしょうか。
基本は、
乾いたらたっぷり。
でも、ずっと湿らせない。
です。
水をあげるときは、ちょろちょろ少しだけではなく、鉢の中に水が通るようにあげます。
そして、鉢の下から余分な水が抜けるようにします。
受け皿に水がたまっている場合は、そのままにしないようにします。
受け皿に水が残っていると、鉢の中が湿りすぎたり、根が水に浸かった状態になったりすることがあります。
蘭ちゃんは言いました。
「水やりは、飲ませることと、余分な水を逃がすことがセットなんだよ」
つまり、水をあげることだけが水やりではありません。
水をあげたあと、余分な水を切ること。
鉢の中が乾く時間をつくること。
根が空気にふれられるようにすること。
ここまで含めて、胡蝶蘭の水やりです。
何日に1回あげればいいの?
胡蝶蘭の水やりでよく聞かれる質問があります。
それは、
「何日に1回、水をあげればいいですか?」
という質問です。
たしかに、何日に1回と決まっているとわかりやすいです。
でも、胡蝶蘭の水やりは、カレンダーだけで決めるのは難しいです。
なぜなら、乾き方は環境によって変わるからです。
夏は乾きやすい。
冬は乾きにくい。
風通しが良いと乾きやすい。
湿度が高いと乾きにくい。
水苔は水を保ちやすい。
バークは乾きやすい。
鉢が大きいと乾きにくい。
鉢が小さいと乾きやすい。
同じ胡蝶蘭でも、置いている場所や季節によって、水やりのタイミングは変わります。
だから大切なのは、
日数で決めるより、乾き具合を見ること
です。
蘭ちゃんは、透明な鉢を指さして言いました。
「胡蝶蘭は、ちゃんとサインを出しているんだよ。根っこの色や鉢の重さを見て、水が必要か考えてみよう」
水やりのタイミングを見るポイント
では、どうやって水やりのタイミングを見ればよいのでしょうか。
小学生でもできるポイントを紹介します。
ひとつ目は、根の色を見ることです。
透明な鉢の場合、根の色が見えます。
根が緑色に見えているときは、まだ水分がある可能性があります。
根が白っぽい銀色になっていて、鉢の中も乾いているようなら、水やりのタイミングかもしれません。
ふたつ目は、鉢の重さを見ることです。
水を含んでいる鉢は重く感じます。
乾いてくると、軽くなります。
水やりをした直後の重さと、乾いたときの重さを比べると、だんだん感覚がわかってきます。
みっつ目は、植え込み材を見ることです。
水苔なら、表面だけでなく中の乾き具合も考えます。
バークなら、すき間が多いので乾きやすいことがあります。
蘭ちゃんは言いました。
「水やりは、胡蝶蘭との会話なんだよ。今日は水がほしいかな?まだ大丈夫かな?って、観察してあげることが大切なんだ」
植物は言葉を話しません。
でも、根の色、葉の様子、鉢の重さ、植え込み材の乾き方でサインを出しています。
そのサインに気づくことが、育てる力になります。
季節によって水やりは変わる
胡蝶蘭の水やりは、一年中同じではありません。
季節によって変える必要があります。
春から夏は、気温が上がり、胡蝶蘭も成長しやすい時期です。
部屋の中も乾きやすくなるため、水やりの間隔が短くなることがあります。
ただし、夏でもエアコンの風が直接当たる場所は注意が必要です。
乾燥しすぎたり、温度差で弱ったりすることがあります。
秋は、気温が少しずつ下がります。
胡蝶蘭の成長もゆっくりになっていきます。
水の乾き方を見ながら、少しずつ水やりの間隔を調整します。
冬は、特に注意が必要です。
気温が低いと、鉢の中が乾きにくくなります。
胡蝶蘭の根の働きもゆっくりになります。
そのため、夏と同じ感覚で水をあげると、水が多すぎることがあります。
冬は、夜に鉢の中が冷えることもあります。
冷たい水をたっぷりあげて、そのまま寒い場所に置くと、根に負担がかかることがあります。
蘭ちゃんは言いました。
「冬の胡蝶蘭は、人間でいうと寒い日に冷たい水を急にかけられるようなものなんだよ。あたたかい時間に、やさしく水をあげようね」
冬の水やりは、できれば午前中のあたたかい時間に行うと安心です。
そして、夜までに余分な水が切れている状態にしておくとよいです。
葉っぱがしわしわなら水不足?
胡蝶蘭の葉がしわしわになると、多くの人は「水が足りない」と思います。
もちろん、本当に水不足の場合もあります。
でも、注意が必要です。
葉がしわしわになる原因は、水不足だけではありません。
根腐れでも、葉がしわしわになることがあります。
なぜでしょうか。
根腐れをすると、根が水を吸えなくなります。
鉢の中に水があっても、根が傷んでいるため、葉まで水を届けられません。
すると、葉は水不足のようにしわしわになります。
つまり、見た目は水不足でも、原因は水のあげすぎだった、ということがあるのです。
蘭ちゃんは言いました。
「葉っぱだけを見て判断しないでね。根っこも見てあげることが大切なんだよ」
葉がしわしわになったときは、次のように考えます。
鉢の中は乾いているか。
根は白っぽく元気か。
根が黒くぶよぶよしていないか。
水をあげたあと、受け皿に水が残っていないか。
最近、毎日水をあげていなかったか。
このように、原因を分解して考えることが大切です。
植物を育てることは、観察と原因探しの練習でもあります。
水のあげすぎは、やさしさのつもりで起こる
胡蝶蘭の水やりで難しいところは、水のあげすぎが「やさしさ」から起こることです。
枯れたらかわいそう。
乾いたらかわいそう。
元気がないから水をあげよう。
毎日見ているから、毎日何かしてあげたい。
その気持ちは、とても自然です。
植物を大切に思っているからこそ、水をあげたくなります。
でも、胡蝶蘭にとっては、何もしない時間も大切です。
乾く時間。
空気にふれる時間。
根が呼吸する時間。
静かに整える時間。
それらも、胡蝶蘭にとって必要な時間です。
蘭ちゃんは、やさしく言いました。
「大切にすることは、たくさん手を出すことだけじゃないんだよ。見守ることも、立派なお世話なんだよ」
これは、人間関係にも似ています。
心配だから、つい口を出しすぎる。
助けたいから、つい全部やってあげる。
成長してほしいから、つい急がせる。
でも、ときには待つことも大切です。
自分で根を伸ばす時間。
自分で考える時間。
自分のペースで回復する時間。
胡蝶蘭の水やりは、「ちょうどよい関わり方」を教えてくれます。
水やりは、観察力を育てる練習
胡蝶蘭の水やりには、正解がひとつだけあるわけではありません。
同じ胡蝶蘭でも、置き場所が変われば乾き方が変わります。
季節が変われば、水の必要量も変わります。
植え込み材が水苔かバークかでも変わります。
だから、育てる人は観察する必要があります。
今日の根の色はどうかな。
鉢は重いかな、軽いかな。
葉っぱは元気かな。
花はしおれていないかな。
部屋は寒すぎないかな。
風は通っているかな。
こうやって毎日少しずつ観察していくと、胡蝶蘭の変化に気づけるようになります。
蘭ちゃんは言いました。
「水やりは、ただ水をかける作業じゃないんだよ。胡蝶蘭の声を聞く時間なんだよ」
もちろん、植物は言葉を話しません。
でも、サインを出しています。
根の色。
葉の張り。
鉢の重さ。
植え込み材の乾き。
花の様子。
それらを見て考えることが、植物を育てる楽しさです。
今日のまとめ
今回のテーマは、胡蝶蘭の水やりは毎日じゃない でした。
胡蝶蘭は、水が嫌いな植物ではありません。
でも、ずっと濡れたままの状態は苦手です。
胡蝶蘭はもともと、木の上で暮らす着生植物でした。
雨が降れば水を吸い、雨がやめば風で乾く。
そんな環境に合った根っこを持っています。
だから、胡蝶蘭の水やりで大切なのは、
毎日水をあげることではない
乾いたらたっぷりあげる
余分な水はしっかり切る
受け皿に水をためない
根の色や鉢の重さを見る
季節によって水やりを変える
葉だけでなく根も見る
ということです。
葉がしわしわになったときも、すぐに水不足と決めつけないことが大切です。
水不足の場合もあります。
でも、根腐れで水を吸えなくなっている場合もあります。
だから、胡蝶蘭を見るときは、花だけでなく、根を見て、鉢の中を考え、全体を観察することが大切です。
最後に、蘭ちゃんはこう言いました。
「胡蝶蘭に必要なのは、たくさんの水じゃなくて、ちょうどよい水なんだよ。
そして、乾く時間も、根っこにとっては大切な時間なんだよ」
胡蝶蘭は、水やりを通して教えてくれます。
大切にすることは、与えすぎることではありません。
相手の様子を見て、必要なときに、必要な分だけ届けること。
それが、胡蝶蘭を元気に育てる第一歩なのです。
次回予告
次回は、胡蝶蘭が好きな光と苦手な光について学びます。
第5話|胡蝶蘭が好きな光と苦手な光
〜明るい日陰がちょうどいい理由〜
植物には光が必要です。
でも、胡蝶蘭は強い直射日光が苦手です。
なぜ太陽の光が必要なのに、強すぎる光では葉が傷んでしまうのでしょうか。
カーテン越しの光がよいと言われるのはなぜでしょうか。
葉焼けとは何でしょうか。
次回は、蘭ちゃんと一緒に、胡蝶蘭に合った光の環境を小学生にもわかるように学んでいきます。
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