SNS利用のさきがけ?~吹奏楽出身者が管弦楽曲の次に聴くクラシック②
前回の投稿から少し時間が経ってしまった。
というのも、このシリーズは、「吹奏楽部にいたのでクラシックにちょっと親しんできたつもりが、実は管弦楽曲ばかりで次は何を聴いたらいいの?」という人向けに書いてきた。
で、それは自分の経験をもとに書いていけばいいよね、と思って書いたのが①のテレビ、映画、CMきっかけではどう?という話。
で、②についても自分の経験で書けばいいよねと思っていたのだが、ここ数日、頭の中でどんな文章を書こうと整理し続けてきた結果、たぶん、この話は他の人、特に現在の人にそれを当てはめようとしても、ちょっと違うのかも・・・という気がしてきた。
というわけで、この後は、私がクラシックに親しむようになったきっかけのひとつについて自分語りをするだけなので、それでもいいよ、という人はもう少しお付き合いいただけるとありがたい。(しかも、今回は自分で書いていてもあまり面白くないのであった・・・)
Windows95の普及とテレホーダイ
私がひとり暮らしを始めたころは、ちょうどWindows95というのが発売されて、次第に一般の人たちにもパソコンやネットの世界が普及し始めたころだった。
大学の授業で、情報処理(要はパソコン)を活用して専門科目の研究を進める方法について手ほどきしてくれる授業があった。
それまで一般人には性能面、操作性、価格面で手が届かず、使われていなかったパソコンが、Windows95の発売により一気に普及しはじめたのだ。
大学で同じ専攻の友人が、大金30万円をはたいてMacのパソコンを買ったという話を聞いた。そんなに払って買う必要あるのかな、と思ったが、彼は先見の明があったというべきで、レポートを書くのも簡単な統計分析をするのも自分のパソコンがあるとないでは大違いだった(自分のパソコンがない場合、大学のコンピューター室で共用のパソコンを使うことになるのだが、絶対的な台数が足りないため、行列を作ってパソコンを使わなければならなかった。また、開館時間が限られており、夜型人間には厳しかった)。
そのため、翌年、2年生になったとき、私もバイト代をはたいてWindowsのパソコンを買ったのだった。
パソコンは勉強に活用できるのはもちろん、ネットに接続していろいろな情報を得ることができる点が大きかった(とはいえ、まだWebページを持っている企業や個人は少なく、ネットショッピングもほとんど普及していなかったが)。当時、インターネットに接続するためには、固定電話の回線を使う必要があった。その間は電話を使っていることと同じで、電話代がかかってしまうので、膨大な通信料がかかるのだが、テレホーダイというNTTの定額サービス(夜11時から翌朝8時までの時間帯に、指定した2つまでの電話番号への通話が定額になる)を使っていた。
ネット草創期のクラシック音楽コミュニティ
テレホーダイに接続してやっていたことのひとつに、クラシック音楽が好きな人たちが集まるネット上のコミュニティ(今で言うところのSNS)の閲覧だ。
当時はTwitter、Instagram、Facebook、TikTok、LINE、mixi、5ちゃんねるもまだなかった。かろうじてニフティがあったような気がするが、これも有料会員制で、誰でも入れるものではなかった。
では、当時のネット上のコミュニティとは、どのような形態だったか?といえば、クラシック好きの個人が立ち上げたホームページに、掲示板を通じてひろがっていったのだった。
こうした掲示板には大きく分けて2種類あって、ひとつがいわゆる『インターネット掲示板(電子掲示板)』で、特定のテーマに従って記事を書き込んだり、閲覧したり、コメント(レス)を付けられるようにしたもの、もうひとつが当時『1行掲示板』と呼ばれたもので、これは今で言うチャットに近いものだった。
まず、ホームページに書かれたCD紹介を読み、それについての感想が書かれた『インターネット掲示板(電子掲示板)』を読んで、しだいに自分もそれに参加するようになっていった。
また、掲示板が盛り上がってくると、同じ時間帯にホームページに集まった人たちが『1行掲示板』にいろいろ書きこんで、チャット形式でクラシックについて語り合うようになっていった。
高級ホテル!でのオフ会の開催
『インターネット掲示板(電子掲示板)』が盛り上がり、リアルタイムでの『1行掲示板』で話が盛り上がると、次はみんなで会おう、という話になった。要はオフ会である。
今ではきっと成立しないような気がするのだが、ホームページの個人開設者が幹事役となって掲示板で参加者を募り、そのページを訪れた人がハンドルネームで参加表明をした。右も左もわからなかったが、私も参加表明をして、京都から、会場のある大阪の梅田に向かった。たしか、当時開業したばかりの大阪駅前のリッツ・カールトンという高級ホテルの地階に入ったレストランだったと思う(なんと豪華な会場!)。
参加者は30名ほどだったか。まさに老若男女といった面持ち。大学生だった私が一番若く、20~30代のお兄さま方やお姉さま方、40~50代の脂の乗りきったおじさんたち、最高齢は70歳ほどの方もいた。印象に残っているのは、その最高齢の方が、話していたこと。
「クラシックという趣味は、なかなか同好の士がいないので、こうして同じ趣味の話をできたのは今回が初めて。長く生きてきてよかった。」
その言葉に、こうしたオフ会が開催できてよかったなと思うとともに、この趣味って結構レアなのね、ということを若いながらに知った。
このオフ会で知り合ったメンバーとは、その後もコンサートに行くなどのつながりがあり、次第に連絡を取る人も減ってはきたものの、これがきっかけで知り合った方2人とは、今でも年に1回程度飲みに行ったりコンサートに行ったりすることもあり、貴重な出会いだったなぁ、と思う。
ディープな交響曲の世界に足を踏み入れる
この当時はネット草創期ということもあり、こうしたオフ会で同じ趣味の人が初対面で知り合う、というのはなかなか斬新で最新な感じがしたのだが、いまはどうなんだろうか?
近年では、出会いのきっかけもマッチングアプリやSNSが年々増加していて、20~30歳台ではパートナーとの出会いのきっかけの3割近くを占めるようになっているという。
一方で、SNSが絡んだネガティブな事件も数多く発生しており、この方法がいいのかどうかはわからない。
とはいえ、この出会いをきっかけに、マーラーやブルックナー、ワーグナーのようなディープな交響曲や楽劇の世界に足を踏み込み、生演奏のコンサートへ足を運ぶようになったり、中古CDショップ巡りや海外サイトを使ったネットショッピング、海賊盤CDの世界を知るなど、これまで以上にこの趣味の世界が広がったことは間違いない。
