国際系の学校は同じではない-英語で学ぶ教科の違いから見えるもの
帰国生入試や国際生入試を実施している国際系の中高一貫校は、
ここ数年でかなり増えてきました。
そのため、「英語に強い学校に行けば、英語ができるようになる」と考える方も多いと思います。
私自身も、最初はそう考えていました。
しかし、実際に調べていく中で気づいたことがあります。
それは――
国際系の学校といっても、授業の内容や進め方は同じではないということです。
〇 英語ができる、とはどういうことか
まず前提として、「英語ができる」といっても、そのあり方は一つではありません。
大きく捉えると、
・日本語で考えた内容を英語に変換して話す状態と、
・考える段階から英語で行う状態があります。
実際にはこの間にさまざまな段階があり、
英語ができる多くの人は、その中間に位置すると考えられますが、
この違いを意識しておくと、学校ごとの学び方の差が見えやすくなります。
そして、この違いに関わってくるのが、
どの教科を、どの言語で学んでいるかという点です。
〇 分類に入る前に
ここで一つ整理しておきたいことがあります。
「イマージョン教育」という言葉は広く使われていますが、
その意味や範囲は学校によって異なります。
英語の授業や一部活動を指して用いられる場合もあれば、
教科全体を英語で学ぶ場合もあります。
そのため、本稿では言葉の定義に依存せず、
「どの教科をどの言語で学んでいるのか」という観点で整理しています。
〇 学校は大きく3つ(+1つ)に分かれる
国際系の学校は、英語の扱い方という観点で見ると、次のように分けて考えることができます。
ただし、ここでの分類は理解しやすくするためのものであり、
実際の学校はこのように明確に分かれているわけではなく、連続的な違いとして存在しています。
また、各校のカリキュラムや運用は年度やコースによって変わる場合もあるため、最新の情報は各校の公式資料等で確認することをおすすめします。
① 英語「取り出し」型
英語の授業は英語で行うものの、
数学・理科・社会などは日本語で行うタイプです。
英語の授業では、ディスカッションやエッセイなども取り入れ、
かなり深い学びが行われている学校も多いですが、
あくまで「英語という科目」の中で英語を使っている形になります。
このタイプの学校は、国際系の中高一貫校の多くが当てはまります。
② 準イマージョン型(部分英語)
英語の他に一部の教科(美術や技術など)も英語で行うタイプです。
英語を使う場面は増えますが、主要教科は日本語で行われるため、
思考の中心が英語に移るところまではいかないケースが多い印象です。
例えば、開智日本橋学園中学校などが、この位置づけに入ると考えられます。
③ 教科横断イマージョン型(本格型)
数学・理科・社会といった主要教科も含め、多くの授業を英語で行うタイプです。
英語は単なる科目ではなく、学びのための言語として使われます。
この環境では、英語で理解し、英語で考え、英語で表現することが求められるため、思考のベースとなる言語が英語に近づきやすいと考えられます。
このタイプに該当する学校としては、例えば以下が挙げられます。
・広尾学園中学校AGコース
・広尾学園小石川中学校AGコース
・三田国際科学学園中学校ICコース
・サレジアン国際学園中学校AGコース
・サレジアン国際学園世田谷中学校AGコース
・芝国際中学校ADVANCEDコース
・文化学園大学杉並中学校DDコース
④ 英語環境型(発展形)
授業だけでなく、日常的なコミュニケーションも英語で行うタイプです。
この段階になると、英語は「授業で使う言語」ではなく、
生活の中で使う言語になります。
ただし、このような環境は日本の中高一貫校ではまだ限定的であり、
現時点ではインターナショナルスクールに近い領域と考えるのが実態に近いと思います。
〇 なぜこの違いが重要なのか
言語は、単なるコミュニケーションの手段ではなく、
思考のための道具でもあります。
どの教科をどの言語で学ぶかによって、
思考のベースとなる言語は大きく変わります。
英語の授業だけ英語で行っていても、他の教科を日本語で学んでいれば、
思考の中心は、日本語に残りやすくなります。
一方で、主要教科も英語で学ぶ環境では、
英語で理解し、英語で考える機会が自然と増えていきます。
〇 海外大学進学という視点で見ると
こうした違いは、その先の進路、特に海外大学進学を考えたときにも意味を持ちます。
まず前提として、
どのタイプの学校からでも海外大学への進学は可能です。
英語取り出し型の学校であっても、
個人の努力や外部での対策によって、十分に対応することができます。
● 入試段階では対応可能
海外大学の入試では、
・英語資格
・エッセイ
・課外活動
などが重視されます。
そのため、学校の授業だけでなく、
外部の学習や個人の取り組みによってカバーすることが可能です。
● 入学後に違いが出やすい
一方で、入学後の学びでは違いが出てきます。
社会や人文分野では、
政治・経済・哲学といった内容を英語で理解する必要があります。
これらを日本語で学んできた場合、
英語で授業を受ける際に、用語や概念の理解で負荷がかかる場面があります。
ただし、単語や用語の違いだけであれば、後から補うことは可能です。
より本質的な違いは、どの言語で学んできたかによって、思考の組み立て方そのものに影響が出る点にあります。
例えば、主要教科を英語で学ぶ環境では、
「自分の意見は何か」「その根拠は何か」を明確にしながら説明することが求められます。
こうした経験を重ねることで、主張と根拠を整理して考える力に触れる機会が自然と増えていきます。
一方で、日本語で思考し英語に変換する形では、内容そのものは理解できていても、こうした構造を英語で表現するために、後から意識して身につける必要が出てくる場面があります。
例えば、自分の主張とその根拠を明確に示す書き方や、英語で論理的に展開していくための表現の型などです。
こうした違いは、積み重なることで、最終的には論文やレポートといった成果物の構成や伝わり方に影響を与える可能性があります。
●「後から補う」か「そのままつながる」か
この違いをシンプルに表すと、
英語取り出し型は
後からアカデミックな英語を補う必要がある
教科横断型は
そのまま海外大学の学びにつながりやすい
という違いになります。
〇 思考言語という視点で整理してみると
ここまで、学校の分類とその違い、そして海外大学進学という視点から
見てきましたが、これらを踏まえて、もう一度整理してみます。
人は何かを考えるとき、無意識のうちに特定の言語を使っています。
いわば、思考を組み立てる際の土台となる言語、思考言語です。
どの教科をどの言語で学んできたかは、この思考言語のあり方にも影響します。
英語取り出し型の学びでは、英語は主に「表現のための言語」として使われることが多く、思考の中心は日本語に残りやすいと考えられます。
一方で、教科横断型の環境では、英語で理解し、考え、表現する経験を積み重ねるため、英語が思考の中でも使われる場面が増えていきます。
これは単に英語ができるかどうかという話ではなく、
どの言語で思考を組み立ててきたかという違いです。
もちろん、日本語で深く考える力は非常に重要です。
一方で、英語でも思考を組み立てられるようになることは、
学びの幅を広げることにもつながります。
どちらか一方に偏るのではなく、日本語と英語の両方で考えられる状態が一つの理想的な形とも言えます。
なお、複数の言語を使い分けることについては、
・認知的な柔軟性が高まるといった利点が指摘される一方で、
・言語の切り替えに負荷がかかるといった見方もあります。
ただし、こうした点については研究によって見解が分かれている部分もあり、単純に優劣をつけられるものではありません。
いずれにしても重要なのは、どの言語を使うかというよりも、
どの言語で思考を深めてきたかという点にあると考えられます。
〇 まとめ
「英語取り出し授業があるかどうか」という点は、
学校を見るうえで一つの分かりやすい目安になります。
ただ、それだけでは見えてこない違いもあります。
国際系の学校を選ぶときは、単に英語取り出し授業を行っているかどうかではなく、
「どの教科を、どの言語で学んでいるのか」という視点で見ることが重要だと思います。
そして、その学びがどのように思考のあり方に影響し、将来につながっていくのかまで考えていくことで、
学校の見え方は大きく変わってくるはずです。
