見出し画像

「シンデレラ」を考える

 幼い頃、祖母によく絵本を読んでもらいました。祖母の趣味なのか、当時はそんな本しかなかったのか、「御伽噺」や「昔話」系の本が多かったような気がします。

「花咲か爺さん」「こぶとり爺さん」「鶴の恩返し」「猿蟹合戦」「文福茶釜」「桃太郎」「金太郎」「浦島太郎」などの日本昔ばなし系。「ヘンゼルとグレーテル」「青い鳥」「三匹の子豚」「七匹の子山羊」「ジャックと豆の木」あと、イソップ寓話やアンデルセン童話などの洋物。これらも好きでしたが、やはり、わくわくしたのは、お姫様が出てくる系です。

「かぐや姫」「親指姫」「眠り姫」「白雪姫」そして「シンデレラ姫」。当時の私は、ジェンダーがどうのこうのなんて考えもせず、なんだか綺麗なもの、キラキラしたもの、ふわふわしたものが好きだったような気がします。(一方で、怪獣も好きでしたが)

 特に印象に残っているのが「シンデレラ姫」で、ぼろぼろ服から最後の煌びやかなキンキラ衣装までの急上昇が魅力でした。(まあ、「殺される」からの大脱出の白雪姫も急上昇ですが)

あと、シンデレラは、「カボチャが馬車に」「ネズミが馬に」なる、というのが、どうも幼心にツボだったような気がします。

なにしろ、「良い魔女」がかける「魔法」というのが、魅力でした。4歳か5歳ころに、テレビでアニメの「魔法使いサリー」というのをやっていて、指先やら、指揮棒(?)の先から、何やらキラキラした光を出して、いろんなものを別のものに変身させるのを見て、「うわあ」と思った記憶があります。
「サリーちゃんごっこ」みたいなのをして、いろんなものに魔法をかけていました。

 で、時は流れて、私が10代の頃、コレット・ダウリング著の『シンデレラ・コンプレックス』という本がベストセラーになりました。

 シンデレラの夢は、「行動も精神も抑圧されたまま、ひたすら白馬の王子を待ち続けること」と定義され、それは女性が受けてきた教育によるもので、自立し、解放されなければならないということです。

 若くて単純だった私は、(読んでもいないのに、マスコミの情報だけで)「そうだー!」と拳を突き上げ、「私は、自立するのだー! 強く生きるのだー!」と息巻いていました。

 で、「シンデレラ」にかつて夢中になっていたことを恥じ、生まれ変わることを誓い、「白馬の王子なんて、期待してはならない」と自分を叱咤し、競馬でも「白い馬は応援しない」という極端な思考に陥っていました。

 本当に、若い頃の私は、「ゼロ100思考」の持ち主でした。なんでも極端に考えてしまうのですよねー。

 でも、その後の人生を振り返ると、(今思えば)彼氏がいた時は、彼氏に依存しまくっていたし、彼氏と別れた後も、いろんなものに依存しまくっています(甘い物とか)。

 で、そんな私が、図書館で、この本を見つけて借りてきました。

 中野京子さんは、『怖い絵』シリーズや『名画の謎』シリーズを読んでから、ずっと大好きです。

 中野さんは言います。

本当にシンデレラは、何も努力せず待つだけのつまらない存在、否定すべき存在なのでしょうか。もしそうなら、なぜこれほど愛され続けているのでしょう。それとも努力しないで出世したという、まさにそのことこそが、無力な人間の癒しとなり、世界中で愛され続けている真の理由なのでしょうか。

100分で名著「シンデレラ」

 この本は、西洋の歴史を絡めて、シンデレラの物語がどのように変遷していったのかを丁寧に追っていきます

 私は、ずっとシンデレラは『グリム童話』だと思ってきました。しかし、シンデレラの類話は、この本によると、世界中で何と500以上(!)あるようです。そして、現存する最古の文献は九世紀の中国だとか。ここで、「シンデレラの小さい足」と「纒足」が結びつきます。 

 今日、日本で多くの人が知っている「シンデレラ」は実は、グリムによるものではなく、フランスのルイ十四世に仕えたシャルル・ペローの『ペロー童話集』によるものだそうです。そして、このペローによる「シンデレラ」が、1950年のディスニー・アニメ「シンデレラ」の原案であり、アニメの力で、こんなに有名になったそうです。

 この本には、グリムが収集した「シンデレラ」についても取り上げていますが、ペローやディズニーや、私が読んだ絵本の「シンデレラ」とは随分違います。

 グリム版には、「かぼちゃは馬車に」「ネズミは馬に」はありません。ガラスの靴は金の靴だし、シンデレラは木に登ったりするし、王子も結構、積極的に行動します。絵本では出てこないシンデレラの父親も出てきます。

 グリム版は、大筋では絵本と似ていますが、細かいところが随分違っていて、昔話としての素朴さが随分残っていて、その洗練されていないところが、面白いです。

 この本は、シンデレラの物語が、どのように変遷していき、時代時代でどのように受け止められ、どのように愛されていったかを、丁寧に検証していますが、中野さんが冒頭で提示した

1、本当にシンデレラは、何も努力せずに待つだけの存在なのか?
2、もしそうなら、なぜ愛され続けているのか?

に対する明確な答えは書かれていません。ただ、思い込みを廃して、想像力を発揮して、自分なりの答えを見つけてくださいと、提案しています。

それぞれの時代、それぞれの土地、それぞれの立場の人々が、どのような思いで、この物語を受け止めたか、それらに想いを馳せるのも読書の楽しみだと思わせてくれる本でした。


いいなと思ったら応援しよう!