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新規事業の訴求ワード|顧客の「諦めの言葉」を拾う

こんばんは。


チームでホワイトボードの前に集まり、営業資料に使うサブタイトルを考えていたときのことです。

「全く新しい方法で、消費者との接点を作れます」
「消費者との体験に特化しています」

どちらも、私たちが伝えたいことでした。でも、そこからどう磨くかが決まらない。なんとか2時間考え、出た言葉を資料に記載し、商談で使っていきました。

しかし、相手は資料に目を落としたまま、一度も顔を上げません。

資料を直して商談し、また直して商談していく。

その繰り返しの中で、ようやく気づきました。ある言葉を使うと、企業の担当者が笑顔になる。少しニヤッとして、具体的な質問が出てくる。

相手が反応したのは、私たちが訴求したい事業の特徴ではなく、その企業が取りたい行動を、具体的に描いた言葉だったんです。


「全く新しい」は、こちらが言いたい言葉だった


「全く新しい方法」は、売り手にとって大切な特徴です。開発した側には、従来との違いも、そこへ至る苦労も見えています。

でも、商談相手にとって、新しいかどうかは、自社にどういうメリットがあるかは分かりません。

そこで、資料の言葉を「全く新しい」から、企業が実際に取れる行動を想像できる表現へ変えていきました。

すると、担当者が「お?」という顔をする。笑顔になる。自社で使う場面について、具体的な質問が出てくるようになりました。

私たちが言いたい特徴と、顧客が欲しい変化を、同じものだと思っていたのですが、どうやらそうではなかったようです。


「もう諦めてました」に、欲しい行動が残っていた


芸術大学の学生向けサービスを事業開発していたとき、商談相手から実際にこう言われました。

「もう一般消費者との接点作りは諦めてました」

私は、このような言葉を「諦めの言葉」と捉えています。

少なくとも私には、一般消費者との接点が必要ない、という意味には聞こえませんでした。本当は作りたかったけれど、難しいと考え、選択肢から外していた。

その可能性が、この一言に残っていました。

「何に困っていますか」と聞くだけでは、すでに諦めたことは出てこない場合があります。本人の中で、検討する課題ではなくなっているからです。

そんな言葉に出会ったら、すぐ解決策を説明せず、三つだけ聞きます。

  • 本当は、どんな接点を作りたかったのか

  • 何が障壁になり、諦めたのか

  • いまは、代わりにどうしているのか

諦めの言葉は、需要の証明ではありません。ただ、相手が取りたかった行動と、その行動を止めている理由を知る入口になります。


要約と原文を、同じ欄に入れない


商談メモで「一般消費者との接点にニーズあり」と要約したら、「諦めてました」に含まれていた固有の感情が消えてしまいます。

一方で、社内共有や分析には要約も必要です。だから、要約しないのではなく、原文と解釈を分けて残します。

  • 顧客の原文:「もう一般消費者との接点作りは諦めてました」

  • こちらの解釈:接点を作りたいが、何らかの障壁で断念している

  • 次に確かめること:望む接点、諦めた理由、現在の代替手段

原文だけなら、意味を取り違えるかもしれません。要約だけなら、固有情報が消えます。二つを並べることで、事実とこちらの解釈を混ぜずに済みます。

発言者の所属や日付も、必要な範囲で残します。ただし、社外向けの資料へ使うときは、相手が特定されないことと、共有してよい内容かを確認しましょう。


生の言葉は、そのまま載せるためのコピーではない


顧客の言葉を拾う、と言うと、一字一句そのまま営業資料へ載せるように聞こえるかもしれません。

でも、生の言葉は完成したコピーではなく、訴求ワードを作るための材料です。

「諦めてました」をそのまま見出しにしたわけではありません。その言葉から、企業が取りたかった行動を抜き出し、自分たちが実際に提供できる接点として具体化したことでした。

言葉を変えた後は、「このコピー、刺さりますか」と感想を聞くだけでは終えません。商談で、次の反応が起きるかを見ます。

  • 表情が変わる

  • 自社で使う場面について、具体的な質問が出る

  • 次の面談や検討に必要な行動が決まる

表情だけなら、一時的な興味かもしれません。質問が具体になり、次の行動まで進むほど、訴求内容と企業の課題がつながっている可能性は高くなります。


明日、直近の商談メモから一行を作る


明日、営業資料の一行目に悩んだら、直近の商談メモを一つ開いてみてください。

そこから、顧客の原文を一つ選び、次の三行を書きます。

  1. 顧客が実際に言ったこと

  2. その人が、本当は取りたかった行動

  3. 自分たちが提供できることを、相手の行動で表した一文

三行目に「当社」「本サービス」「全く新しい」がなくても、相手が自社で使う場面を想像できるか。次の商談では、表情だけでなく、具体的な質問と次の行動まで記録します。

自分で考えた言葉を捨てるのは、今でも悔しいです。でも、訴求は作品ではなく道具でした。うまく言えたかではなく、相手が「自分たちの話だ」と気づき、次へ進めるかで直していくものです。

答えは、会議室では出ないかもしれません。

「諦めてました」とこぼした一言の中に、こちらがまだ言葉にできていない顧客の行動が残っているはずです。


それでは、今日はこの辺で。


おやすみなさい。

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