「いいですね」で終わる顧客ヒアリングは、危ない
こんばんは。
さて、本日の本題は、新規事業における顧客ヒアリングについてです。
社内の新規事業ワークショップで、いちばん評価をいただいた企画がありました。正直、自信がありました。
その企画を持って外に当てに行くと、行く先々で「いいですね」が積み上がっていきます。相手はうなずき、質問も出る。
そして最後は、こう締めくくられます。
「面白いですね、また聞かせてください」
私は会社に戻り、「反応は良かったです」と報告しました。しかし、その後、検討は前へ進みませんでした
やがて、ある人からこう聞かれたんです。
「面白いのですが……これは、誰のためのサービスですか?」
愕然としました。最初は、嘘だ、そんな訳がない、と自問自答する日々が続きます。でも、何人かと話すうちに、同じ指摘が増えていきました。
私は顧客の需要ではなく、自分が安心できる言葉を集めていたのかもしれません。
では、「いいですね」で終わったヒアリングでは、次に何を聞けばよかったのでしょうか。
この記事でお伝えしたいことは、一つです。
「いいですね」の後に確認したいのは、感想ではなく、顧客の過去・現在の行動と、次に起こす行動です。
「いいですね」を集めて帰っていた
「いいですね」と言う人が、嘘をついているわけではありません。
時間をかけて準備した企画に、面と向かって「要りません」と言うのは難しい。内容は面白いけれど、自分が使うほどではない。
そして、厄介なのは、その言葉を信じたくなることでした。
霧の中を進む新規事業では、賛成の言葉が胸に刺さります。
一方で、微妙な反応には「あの人は分かっていないだけ」と理由をつける。反対されそうな相手には、そもそも聞きに行かない。
過去の私が、そうでした。
渾身の企画を否定されるのが怖かったんです。
「いいですね」は、相手が受けた印象を知る手がかりにはなります。ただ、それだけで需要の証拠にはできません。
未来の意向より、過去と現在の行動を聞いた
そこで私は、聞く対象を「意見」から「行動」へ変えました。
「このサービスを使いますか」と聞けば、相手は未来を想像して答えます。その答えが好意的でも、実際に使う場面や優先順位までは分かりません。
一方、過去と現在の行動からは、困りごとの具体的な背景が分かります。私が実際に使っているのは、次の三つです。
「最後にそれで困ったのは、いつですか。そのとき、どうしましたか」
「今、それって、何で代用していますか」
「そのために、いま、どれくらいのお金や時間を使っていますか」
目的は、相手の嘘を見破ることではありません。
いつ、どこで、誰が困り、これまでどう対処してきたのかを、一緒に具体化することです。
最後に次の行動を確かめます。
「じゃあ、今、申し込めますか」
もちろん、その場で申し込めないこともあります。その場合は、決裁者を交えた次回の面談、検証に必要な情報の共有、実証する日程などを決められるかを見ます。
「あったらいいね」と「ないと困る」の間にある谷は、賛成の強さより、次の行動に表れることに気づきました。
ただし、一つの行動だけで、顧客かどうかを判定するわけではありません。
代用していない背景には、解決方法を知らない、動く権限がない、発生頻度は低いけれど一度の損失が大きい、といった事情もあります。
見るべきなのは行動の有無だけではなく、「なぜ、その行動になっているのか」です。
主案より、オプションに切実な反応が出た
自分で企画したサービスを外に当てに行ったときのことです。
メインの部分への反応は「ふーん」。ところが、「オプションでこんなこともできます」と話した途端、相手にこう言われました。
「欲しいのはそっちだよ!それまさに今悩んでたこと」
そっちだったか!
でも、その反応こそ、会議室で考えた企画と、実際に困っている現場とのズレでした。
まず最初に、その人の行動や事情を深く理解していきます。そこから同じ困り方をする人がほかにもいるのかを確かめて、初めて市場の仮説へ広げていきます。
この動きが、後のN1につながっていきます。
次のヒアリングで、最初に聞く一問
市場規模を考えることは必要です。ただ、初期の顧客ヒアリングでは、数字の目標よりも、目の前の一人を深く理解することを第一にしたいです。
できればサービスを説明する前に、相手がいまどう対処しているか、質問してみてください。
「今、それって、何で代用していますか」
答えが返ってきたら、最後に困った場面、そのときの対処、使ったお金や時間まで聞く。そして話の終わりに、次の面談や実証など、相手が無理なく進められる一歩を一緒に決める。
メモには、「相手の感想」だけでなく、「過去と現在の行動」「次に決まった行動」を分けて残します。
探したいのは、強い褒め言葉ではなく、その人の生活の中で、いつ何に困ったか、それを今どう対応しているのか、です。
その人は、きっと会議室にはいません。資料の中にもいません。あなたが会いに行った場所にしかいないと思います。
それでは、今日はこの辺で。
おやすみなさい。
