父からの送金

2年半前、父にM村の役場から、戸籍抄本を取り寄せてほしいとお願いした。
父はそれを、M村の友人に頼んで、戸籍抄本を取り寄せ、わたしに送ってくれた。
けれどわたしは、そのあとその戸籍抄本が不要になり、その父からの封筒を開封もせず、そのまま放置していた。

今回、ちょっと必要があり、その父から送られた戸籍抄本の封筒を探していた。
捨てた記憶はなかったから、どこかにあるだろう。
引き出しをいくつもひっくり返し、探しに探した。
結局その封筒は、引き出しにはなく、本棚にしまわれていた。

これ、使えるかな。
ほしいのは、戸籍の附票だけど。
封筒に書かれたあて名の、わたしの名前。
裏に書かれた、父の名前。
ああ、父の直筆だ。
この封筒は、形見として大切にしなければ。
そう思いながら、わたしはハサミでていねいに、その封筒を開けた。

あ、これじゃない、やはり戸籍の附票でなければ。
わたしは軽く落胆した。
けれど、そんなことはどうだっていい、と思うほどの事実に、わたしは動揺した。

封筒の中に入っていたのは、戸籍抄本だけではなかった。
戸籍抄本だけではなく、一万円札が同封されていた。
父は、わたしに一万円を送ってくれていたのだ。

父が亡くなったのは、去年の6月14日。
父の記憶も薄れ、わたしは父のいない世界に慣れてきていた。
けれど、その事実を知ったわたしは、声に出してつぶやいた。
「お父さん、ありがとうございます」

不肖の娘だったわたし。
そんなわたしに向けてくれていた、父の深い愛情。
涙が出た。
わたしは今、ひどく動揺している。

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