ダサい女

はっきり言って、わたしはモテない。
容姿は中の中だ。
決して標準以下ではない。
けれどわたしは決定的にダサい。

思いつく、最近の事例を考える。
2年前まで通所していた作業所に、突然モデル級のイケメンが現れた。
東京から熊本にやってきて数ヶ月の、長髪がよく似合う、わたしより5歳年下の男性利用者さんだった。

これほどのイケメン、きっとイヤなヤツだろう。
わたしは先入観を持った。
ところが彼は、利用者みんなに気さくで爽やかな、コミュニケーション能力に長けた好人物でもあった。
彼はわたしにも、フランクにタメ口で話しかけてきた。
最初は緊張して彼に敬語を使っていたわたしも、この状況ではタメ口のほうがナチュラルだろうか、と彼にタメ口を使うようになった。

わたしは思った。
彼に話しかけたい。
その作業所は、利用者同士のプライベートな付き合いは禁止だった。
なのでただ、彼に話しかけたい、とだけ思った。
チャンスはいくらでもあった。
住まいが同じ方向で、いつも同じ送迎車に乗っていたのだ。

そこでわたしのダサさが炸裂した。
思い切って彼に話しかけたい。
彼もわたしにフランクに話しかけてくれている。
ああ、なんて言おう。
わたしは言葉を発した。

「リピートしてる梅干しがあるんだけど、いつものスーパーに置かなくなっちゃって。
他の梅干し買うとしても、それはそれでギャンブルなんだよね」
「そう言えば、最近すごく美味しいしば漬け見つけた。
教えてあげようか」
ああ、なんてこった。
わたしは決定的にシャイな性格の持ち主なのだ。
彼の中でわたしはどんどん
「とにかく漬け物が大好きな人」
になっていく。

そんな日々が続き、やがて彼は、支援学級を卒業したばかりの18歳の女の子と親密になり、なんとなく他の女性利用者たちとの距離が出てきた。
わたしも空気を読み、あんまり彼に話しかけなくなった。
ハートブレイク、と言えるのか言えないのか、淡い憧れの終わり。
ただ、話しかけたかっただけだった。
けれどわたしはひたすら彼に漬け物の話しかできなかった。

このことを踏まえて考える。
わたしと似たようなことで悩む、恋愛下手な女性、世の中には意外といるのではないだろうか。
だからこそ
「好きじゃない人に好かれる。
好きな人には好かれない」
なんて悩み相談が、よく雑誌やネットに掲載されるのではないだろうか。

わたしは50代になった。
そろそろ恋愛を卒業するお年頃。
あの頃は若かったのかも知れない、と、あの長髪イケメン男性とのことをふと思い出す。
いくつもの、実らなかった片思いのことを思い出す。

魅力的に歳を重ねていきたい、と思う。
そう思うとき、過去の黒歴史たちも、ほんのちょっぴり愛おしく思えるときがある。
積み重ねてきたカッコ悪い過去。
それらを糧にして、いつか、豊かな内面を持った大人の女性になっていくことができるかも知れない。
そんなことをふと考えた、土曜日の午後だった。

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