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【第2話】やる気がない子どもなんていない

次の日の体育館

「お疲れ様です!」
「今日もよろしくお願いします!」

昨日は無言だった子どもたちが、少しだけ元気に声を出しながら僕を迎い入れてくれた。

それもそのはず。

 副顧問・田村先生の“声かけ”が変わっていたのだ。

「ボール磨いたの?いいね、ピカピカじゃん!」
「昨日の1on1の最後、動き良かったな」
「気づいてないかもだけど、最近お前、リバウンド取れてるぞ」

彼は、怒鳴る代わりに“認める言葉”を使い始めていた。


子どもたちの変化

最初はキョトンとしていた選手たちも、次第に少しずつ反応が変わっていく。

笑う。しゃべる。声を出す。

 ミスしても下を向かず、チャレンジし続ける。

田村は思った。
(あれ…これ、ちょっと変わってきてるんじゃね?)

そのとき、あの人が見ていた

「……何をしとるんだ、お前は」

突然、体育館の奥から低くて重い声が響いた。
振り向くと、腕を組んだ監督・田中が立っていた。

「練習は“甘やかす場”じゃないぞ」

田村の言葉かけに気づいていたのか、監督は明らかに不機嫌だった。

「何だその“ナアナア指導”は」
「お前は“部活”を“保健室”か何かと勘違いしてるのか?」

(あ、来た……)と、田村は心の中でつぶやく。


体育館が止まる

監督はその後、練習中のミスに対して全体に怒鳴り散らし始めた。

「集中しろって言ってんだろうが!!」
「やる気ねぇ奴は帰れ!!」

子どもたちの顔が、再び暗くなっていく。
田村はその横で、ぐっとこぶしを握りしめていた。

――田村…お前はここで引いちゃいけないんだよ


放課後、いつもの居酒屋にて

「……かっこ悪いとこ見せちまったな、今日」

ビールを飲みながら、田村が笑う。

「やっぱ無理なのかな、あんなやり方」

「やり方、じゃなくて“誰のスタイルか”の問題だろ」

僕はそう言って、続けた。

「監督は“結果を出す”っていう目標が強い人間。 それ自体は悪くない。でも、手段が“昭和”なんよな」

「……」

「でも、お前は“信頼”で動かしたいタイプだろ?だったら、お前のやり方、俺は正しいと思うよ」


アドラー、再び登場

「ちなみにアドラー、こうも言ってる。
 “信頼とは、相手を無条件に信じることである”

「はぁ…無条件か……」

「うん。先に信じた方が、強いんよ」

沈黙が続いたあと、田村がビールを飲み干した。

「……もうちょっと、やってみるわ」

「やってみろ。子供達のためにも負けるなよ」

その言葉の裏にあったのは、子どもたちの“ちょっとした変化”を、誰よりも信じたくなった教師の覚悟だった。

📖 今回のキーワード
無条件の信頼(アドラー心理学)
相手が変わることを期待せず、まず自分から信じること

💡 具体例
条件付きの信頼
 👉️「やる気を見せたら信頼する」
無条件の信頼
 👉️「まず信頼して、認める言葉をかける」
結果
 👉️相手が自然と応えたくなる関係性が生まれる

🎯 明日から使える一言
「○○ができてるね」「○○に気づいてるじゃん」
小さな変化を見つけて、先に認める。

📚 参考になる考え方
承認欲求を満たすのではなく、貢献感を育てる
「褒められたい」ではなく「役に立ちたい」という気持ちを引き出す。

【次回】第3話「壊す勇気」
 変わったのは田村だけじゃなかった。数日後、1人のキャプテンがぽつりと口を開く──
その“ひと言”が部活の空気をさらに変えることになる。

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