【最終話】球速130kmのその先へ。約束のプラモと、少年の変化。
8回裏、彼はマウンドに上がった。
静かな球場。
ベンチが湧く。スタンドは見守る。
あの肩を壊した少年が、再び、投げる──
SLAP病変のリハビリ。
球速アップも狙って、下肢、体幹、胸郭、肩…
土台から作り直した。
連動性と巧緻性を鍛え、
少しずつ、だけど確実に「投げる身体」に育てていった。
そしてもう一つ。心のリハビリ。
未来のため、モチベーションを保つため、ガンダムを語った。
すべては彼の未来のために。
そして、今日のこの試合のために。
「ぺぇさん、出来たよ。グフ・カスタム」
「お!?見せて見せて!」
「持ってくるのは厳しいから、写真だけど…どう?」
「!!めちゃくちゃ良いじゃん!スミ入れ、デカールまで完璧だよ!」
「時間かかったよ!初めてだよ、こんなに集中して作ったの」
「ノリスには悪いが…もぉこれは君の機体だ」
「ノリス…あ!見たよ、08!!あれは良かった!シロー熱すぎるね」
「何なにぃ?グフ出来たんだってぇ??俺にも見せてくれよぉ」
「▲▲さんはこっちに集中!」
―――Z大好きオジさんは今日も絶好調
「▲▲さん、ただのグフとは違うんだよ、グフとはな!」
「少年も言うよぉになったねぇ〜」
「〇〇君も、そぉいうのいいから!」
―――今日もいつものリハビリ室です
「さて、〇〇君。もぉすぐ投球OKな時期になるから…そろそろシャドー始めるぞ!」
「やったー!!!!」
数週間後…
「どう、8割で投げてみて?違和感とかは?」
「凄い違和感…」
「!?…どのタイミングで違和感でる!?痛みは!?」
「うん…指先のかかり具合が凄く意識出来るようになった。後、地面を押せる感覚…こんなの初めて。違和感でしかない」…っニヤ
「焦らせんなよー」
「いっつもぺぇさんには驚かされるから、今日は俺の番。でも全然感覚が違う…これって…」
「グフ・カスタムの力さ」
「いやいやいやいや、そこは「トレーニングがんばった成果」って俺を褒めるとこでしょ!?」
「〇〇君がそう思うなら、それが正解。俺は知識を君に託した。それを結果にしたのは、君自信の力だ。」
「…ありがとう。」
「あ、ぺぇさん…1ヶ月後から地区予選始まるんだけど…出れる…かな?」
「今の状態なら出れると思うけど、まずお医者さんに確認してから。そして監督と話をして…まぁ…一度監督の前で全力投球してみ?それで納得すると思うよ」
「!それってもしかして…」
「自信持って行って来い!」
地区予選始まる
8回裏、彼はマウンドに上がった。
ベンチが沸き、
スタンドの親御さんは静かに見守っている
彼は硬い表情をしていた
――「少し怖い、でもやってやる!」って気持ちか?
「ふぅ…締まって行こうぜぇぇえええ!!!」
誰よりも大きな声でマウンドで叫ぶ
――抑えとして出れたか…体力面の向上が出来なかったのは反省だな。
――さて、どんな球を投げるかな?
そして彼のゲームが始まる。
第一球を投げる…大暴投
――力みすぎだ。
――無理もないよな、やっとこの場に立てたんだから。
――でも…
静けさから遅れてどよめきが挙がった
”133km/h”
――さぁ、野球を楽しんでこい!
試合後のリハビリ室
「ぺぇさん!ありがとう!」
「いや、球速は良かったよ。球速は!フォアボール何個出してんだ!?」
「いや〜思いっ切り投げられたから、楽しくてついね!つい!」
「まぁちゃんと抑えられたから良かったよ。肩は?」
「ん?平気。…後、今日診察でリハビリ終了って言われた。」
「カルテ見たよ。今日まで、よくがんばったな」
――少し沈黙があった。
彼が、ふっと笑ってこう言った。
「ねぇ、ぺぇさん」
「ん?」
「肩、痛かった時もさ……
投げられなかった時も……
俺、リハビリ嫌いじゃなかったよ」
「……あの日、グフ作った時からかな。
“頑張る”って、我慢することじゃないんだなって、気づいた。」
「……」
「リハビリが楽しくてさ。気づいたら頑張れてた。
あの時間があったから、マウンドに立てたと思う。」
「ありがとう、ぺぇさん」
「俺、これから……野球、もっと楽しめる」
その顔は、ガンプラ作ってた時よりも、ずっといい顔だった。
――肩はもう、大丈夫。
――彼の中で、野球が”自慢”から“夢”に変わった。
そして、彼の物語が
また、始まった。
「新規の患者様です」
彼のリハビリを終えて新しい患者様を迎え入れる
〇〇君と同じ、学校の子だった
疾患名はテニス肘
「初めまして。皆からぺぇさんって呼ばれてるよ。」
「あ!ぺぇさんですか!?〇〇先輩から聞いてます!
ガンダム好きなリハビリの人って!
あの…俺、エヴァンゲリオン大好きなんです!」
「!」
エヴァンゲリオン…
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
【次回】人類補完計画とテニスひ…
「こら!ぺぇさん!!また何か違うこと考えたでしょ!?」
「次はエヴァ好きかぁ、ぺぇさんの患者さんは楽しそうでいいねぇ」
―――この日もいつものリハビリ室でした
【次回】グフ・カスタムとノリス・パッカードと理学療法
