「サンキュー、チャック」がヒットしない世の中なんて
ゴミですわ。そんな世の中なら。
断言しましょう。クソ。
それくらい言ってもいい映画。
でも世界でも評価は高くてもヒットしていません。むしろ大コケ。
トロント映画祭で観客賞を受賞しようが大コケ。
つまり世の中はゴミということです!
もうこんな世の中なんて映画の中の世界のように滅んでしまえばいいと思います。
というのは冗談ですけどね、再評価の可能性もありますからね。
再評価もされないなら滅んでよし!
とまぁ、殺伐?としたスタートになりましたが、本当によかった。
僕はヒューマンドラマとか余命モノとかわざとらしくあざとく感じて大嫌いなんですが、そんな僕が感動するんだから?間違いない。
素晴らしいのが余命モノでも何でもなく、誰かが死んで感動する作品じゃないところ。
ただ、作品の性質上、世界は滅んで主人公も死んじゃうんですけどね。
でも感動するポイントはそこじゃない。
ストーリーとしては、未曾有の災害が多々起きて世界が滅亡の危機に瀕していて、そんな時に謎の男がこれまでの39年間の人生を感謝する広告が街中に次々と現れる、というもの。
彼は何者?広告の目的は?世界はどうなる?というストーリーなんですが、いわゆるディザスタームービーにはなってません。
むしろダンス映画なんです。(割とマジ)
ちなみに勘のいい方はうっすらこの時点で気づいたかもしれませんが、これ、ダジャレになってて、邦題は39(さんきゅう)、チャックとかけてるみたいなんですよね。笑えはしないけど。
ストーリー上の一つ大きなイベントとしては世界が終わろうとしている。でもそこでのサバイバルやアクションがメインではなく、人々がどう世界と向き合ったか、という話。
ユニークなのは第3章から始まる点。3→2→1と時系列が遡るカタチでスタートしていく。
はじめはあれ?と思うんですが、確かに3章が最後だと絶望的な状況で悲惨になっちゃうんで、はじまりで終わるというのはアリかもしれません。
原作ではこの構成にも意味があるんだとか。
とにかくこの映画のよさって、出てくる登場人物が愛おしいところなんです。はじめのポリコレカップル(黒人×白人)には「またかよ」とゲンナリしますが、彼らも悪い人達ではない。
世界が終わりを迎えようと、できる限りパニックを起こさずいつも通りに日々を送ろうとしている。最後の瞬間まで。
そこではチャックは謎の男のまま。
ここで登場する人物や会話が後に(時系列的には過去ですが)出てくる興味深い仕掛け。
ちなみに宇宙カレンダーについて語られるんですが、現在は宇宙誕生から150億年。これまでを1年に換算すると人類誕生はいつになるのか?
という問いに対する答えも出てきます。
少し哲学的な会話が出てくるのも本作の魅力。
第2章でいよいよチャックの正体が職業やら明らかになり始める。そこでふと黒人女性のドラムをバックにチャックと通りすがりの女性の即興ダンスが始まるんですが、それがいい。
ダンスシーンも映画ララランドのように衣装の色彩にこだわったり派手な演出が入るわけでもなく、ブレイクダンスのように大技をキメるわけでもないんですが、逆にそこがいい。
天気もいい青空の下、街角で軽快に優雅に2人のダンスがしばらくある。僕はダンスに関しては完全に素人なんですが、これがなんというか見てて気持ちいいんですよね。バックもドラム演奏のみで派手さはないけどシンプルかつ軽やかな振り付け。
そこには純粋にただ踊りたくなったから踊ってる、みたいな気軽さがある。現代ではダンスというと観客を意識してバキバキにキメたボーイズやガールズグループの派手なのが浮かびがちですが、本来はこういうのでいいんですよね。
第2章はこのダンスシーンがハイライト。
第3章ではチャックの幼少期の話に。そこでは悲しい過去が明らかになるんですけど、チャックを引き取った祖父母が愛らしい。
祖母は型破りな気のいい自由人、祖父は気難しいけど根は優しい真面目な感じで。
印象的なのが、チャックが祖母と一緒に名作映画を色々観るシーンがあるんですが、おそらくいかがわしい場面ではチャックの目を覆ったり、一緒に笑い合ったりするシーン。
こういうシーンっていいですよね。
ちなみに祖父役としてスターウォーズのルーク・スカイウォーカー役でお馴染みマーク・ハミルが出てるのがニクい。主人公の祖父役で出てるんですが、いい味出してるんですよね。
数学に対する愛も深い。チャックにその魅力を説明するんですが、数学を冷徹な方程式のつまらない学問と思ってる人には是非見て欲しい。
他にもホイットマンの詩を解説してくれる学校の担任の先生や、チャックにダンスを教えてくれるジェンダーフリーな感じの先生、みんないい人そうで微笑ましいんです。
そして第1章でもダンスシーンが。こちらも幼きチャックとホットな女の子のダンスがあるんですが、なんか愛らしいんですよね。
つたなさと上手さがいい感じにミックスされた絶妙な塩梅。
いざみんなにダンスを披露する段階になって怖くなって「足が痛くて...」とか言い訳して踊るのやめようとしたり、ダンスの先生が背中を押してくれたりなんかグッとくる。
リアルというか、俺もこういう思い出欲しかったな、みたいな。。。
そして第1章ではチャックの祖父母の家に開かずの間が出てくる。
なぜ鍵をかけて開けなくしてるのか、そしてどんな部屋なのか。
スティーブン・キングらしく少し不思議でホラーじみた演出になってるのも見所。
そういえばあの広告はなんだったのか、第3章で停電になって家々に彼の広告が浮かび上がったのはなぜだったのか映画だけだとよくわからない。そこは不満と言えば不満かも。
他にも第3章や第2章で出てくる人物が「同じ年齢で」第1章に出てきてたり、第1章以降で取り壊されたはずの部屋の扉を見つめるシーンが第3章で出てきたりと、謎のまま終わる部分も結構ある。
原作にはない演出らしくどういう意図か気になります。
ただ、笑えるポイントも散りばめられていて、それもよかった。
クソ真面目に人生の意味を問う映画にもなってないんですよね。
それは疲れる。
ちなみに哲学的な会話が出てきたりする本作、世界が創造された意味を「第2章のダンスをするためだ」みたいに主人公は解釈するんですが、人生ってそういうことでもいいと思うんですよね。
僕の好きなチャップリンの「人生は意味じゃない、願望だ」という言葉にもどこか通じる。
ある何気ない輝かしい瞬間のためにこそ人生は存在するのかもしれない、そんなことを思わされました。
サンキュー、「サンキュー、チャック」
素晴らしい映画でした。
丁度39歳でこの映画に巡り会えたことに勝手に運命を感じますね。
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