仕事はじめに“安全運転”したい3つの理由血圧・体内時計・仕事ストレスから考える
こんにちは。腎臓内科医のYoshiです。
正月休みが終わると、「さあ今年も頑張るぞ」と一気に仕事モードに切り替えたくなりますよね。
ただ、体のほうを見ると、まだ
塩分多めの食事
崩れた睡眠リズム
久しぶりの仕事ストレス
という“三重苦”を抱えている時期でもあります。
今回は、仕事はじめに注目して、
なぜ「いきなり全開」は危険になりうるのか
どんな点に気をつけると、血圧・心臓・メンタルを守りやすいのか
を、医学研究をもとに整理してみます。
1. 朝の血圧スパイクと「冬」の心血管リスク
心血管イベントは「朝」に多い
心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントは、朝の時間帯に多いことが以前から知られています。
特に高血圧のある人では、
起床後に血圧が急に上がる「モーニングサージ」が強いほど、
心血管イベント
動脈硬化の進行
が起こりやすいと報告されています。
日本のJichi Medical Schoolの研究では、
起床時の血圧上昇が大きい人ほど、心血管イベントが多かったことが示されています。
さらに別の解析では、モーニングサージが強い人ほど、
頸動脈IMT(動脈硬化の厚み)
炎症マーカー(CRP・IL-6)
が高い傾向も報告されています。
冬+仕事はじめは「血圧に厳しい」
冬はもともと、
寒さによる血管収縮
室内外の温度差
で、血圧が上がりやすい季節です。
そこに仕事はじめでは、
連休中の飲酒・塩分・体重増
睡眠不足
緊張やストレス
が一気に重なります。
血圧にとっては、かなり負荷の高いタイミングです。
どう気をつける?
高血圧や心血管リスクのある方は、
仕事はじめの最初の1週間だけでも朝の家庭血圧を測る
目安として 140/90 mmHg を大きく超えていないかを確認(その人の背景疾患にもよりますが、概ね上記をまずは目標に)
起床後の行動も、
いきなり熱いシャワー
起きてすぐ全力で外出
といった「急発進」は避け、
少し体を温めてから段階的に動くことを意識すると安心です。
2. 社会的時差ボケ(social jetlag)という“見えない負荷”
休み明けは「軽いシフトワーク状態」
social jetlag(社会的時差ボケ)とは、
休みの日と仕事の日で、
寝る時間・起きる時間がズレている状態
を指します。
例えば、
休み中:2時就寝・10時起床
仕事日:23時就寝・6時起床
この場合、毎週2〜3時間の時差ボケが生じていることになります。
年末年始は、ほとんど全員がこの状態に近づきますよね?(夜遅くまでおしゃべりやゲーム、朝は二度寝)
そのままの状態で「6時起き・フル稼働」に戻す仕事はじめの週は、
軽いシフトワークを始めたような負荷がかかっているとも言えます。
リズムのズレは、代謝とメンタルに効く
人口ベースの研究では、social jetlagが大きい人ほど、
BMI・腹囲が高い
HbA1cや脂質などのメタボリスクが不利
であることが示されています。
実験的に睡眠や食事の時間を12時間ずらした研究では、
わずか数日で、
血圧の上昇
ストレスホルモン(コルチゾール)リズムの乱れ
食後血糖が前糖尿病レベルまで悪化
といった変化も報告されています。
仕事はじめ1週間のリズム調整
ポイントはシンプルです。
起床時間を最優先で固定する
就寝時間は完璧にしなくてOK
日中どうしても眠い場合は、
15〜20分の短い昼寝まで
長い昼寝は、リズムをさらに後ろにずらしてしまいます。
また、仕事はじめの週は、
残業
飲み会
自己研鑽
をすべて詰め込まず、
何かひとつ「諦める」くらいが、体にはちょうど良いです。
3. 仕事ストレスと心血管リスク
「仕事のストレス」は心臓にも効く
仕事量が多く、裁量感が低い状態(job strain)は、
心臓病リスクと関連することが、複数の研究で示されています。
欧州・カナダのコホートをまとめたメタ解析では、
job strain のある人で
冠動脈疾患リスクが 約1.5倍
すでに心疾患を経験した人では、
継続する仕事ストレスが
再発リスクを 約1.6倍 に高める
という報告もあります。
仕事はじめの週は、
メールやタスクの山
「今年こそ結果を出したい」というプレッシャー
が重なり、ストレスが一気に高まりやすい時期です。
がんばり方を少し変える
医師としておすすめしたいのは、
仕事量を増やすより、
仕事のコントロール感を上げる
ことです。
例えば、
その日のタスクを書き出す
「今日必ずやる3つ」と「今週中で良いもの」に分ける
仕事はじめの週だけは、
残業
締切ラッシュ
を意識的に避ける。
**「自分で調整している感覚」**があるだけでも、
血圧やストレス反応は変わってきます。
「仕事はじめ1週間」のすすめ
ここまでを踏まえると、実践的にはこの3つです。
朝:血圧と“急発進”に注意
高血圧・心血管リスクのある方は朝の血圧チェック
起床後はゆっくり動き出す
昼:眠気と仕事量を調整
強い眠気には短い昼寝+少量カフェイン
初週から120%の仕事量を目指さない
夜:リズムを完璧に戻そうとしない
起床時間をそろえることを優先
夜遅い飲み会・画面時間は少し控えめに
まとめ
仕事はじめは「今年をどう走るか」を決める大事な時期ですが、
血圧・体内時計・心臓のことを考えると、
全力ダッシュの1週間より、
“慣らし運転の1週間”のほうが、結局は長く走れます。
今年を良い形でスタートするためにも、
まずは体のギアを、ゆっくり上げていきましょう。
参考文献
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