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映画評「料理長殿、ご用心(シェフ殿、ご用心)」(1978年/アメリカ・イタリア・フランス・ドイツ)


映画評「料理長殿、ご用心(シェフ殿、ご用心)」(1978年/アメリカ・イタリア・フランス・ドイツ)

1978年/アメリカ・イタリア・フランス・ドイツ/112分 監督:テッド・コッチェフ 撮影:ジョン・オルコット 脚本:ピーター・ストーン 原作:アイヴァン・ライアンズ/ナン・ライアンズ 製作:ウィリアム・オルドリッチ 音楽:ヘンリー・マンシーニ 出演:ジョージ・シーガル/ジャクリーン・ビセット/ロバート・モーリー/ジャン=ピエール・カッセル/フィリップ・ノワレ/ジャン・ロシュフォール

「この時のロケハンはとにかく最高だった」と2011年8月のインタビューで監督が言っているが、これは本当にそうだろう。最高の場所で、最高の料理が食べられる。いいなあ。一番楽しんだのは、絶対にロケハンのメンバーだ。監督はロケハンで20キロも太ったそうだ。世界の映画史上、指折りの魅力的なロケハンだ。冒頭のキャンドルの映像から、非常におしゃれだ。ちょっとびっくりした。映画で料理を題材にするのは不利だ。観客にはにおいと味が分からないから。ただ、これは映像がすばらしいので食欲をそそられる。見ることが食べることにつながるような楽しさ。撮影は、ジョン・オルコット。「時計じかけのオレンジ」などで有名な一流のカメラマンだ。「バリー・リンドン」では、ろうそくの光だけを取り入れた撮影でアカデミー撮影賞を受賞している。光をとらえる点に関しては天才に近い。食材、料理が美味しそうに見える。ストーリーは軽すぎるくらいのたわいもない推理物だが、撮影がすばらしいので一流に見える。肩の力の抜けた華やかでさわやかな質感が印象的だ。イギリス、フランス、イタリアという大掛かりな舞台設定にも驚く。まるで私が大金持ちになれたかのような、優雅な風景を楽しめた。目まぐるしく場面が変わるので見ていて飽きない。旅情サスペンスだ。主人公がアメリカ人だが、扱う題材はヨーロッパ料理。ヨーロッパに行かないとアメリカ人には食べることができない。ファーストフードをかなり馬鹿にしている。なじみのない世界を扱っているので、当時、アメリカでこの映画を売るのは大変だったのではなかろうか。監督はテッド・コッチェフ。「ランボー」の一作目の監督として有名だ。全く違う種類の映画だ。守備範囲の広さに感心する。子供の時から親に連れられて映画を見て、親が入っていた劇団に通い、テレビの生放送のドラマで実力を磨き、各国で何本もの映画を撮ってきた経験が、これだけのバラエティに富んだ作品を生み出しているのだろう。編集長役のロバート・モーリーが最初から飛ばしまくる。巨体を揺らせながらガラスを割ったりケチをつけたり、絶好調の演技だ。この最初のシーンで圧倒される。社内を動き回る、長回しをつなげたカットはなかなかいい作りだ。彼はいばっているだけではなくて食文化に対する深い愛情も感じられる。「この体は最高の料理を集積した結果だ。世界最高のコックたちが創った芸術品だ。脂肪の一片一片が絵画であり詩であり音楽なのだ。つまりこの体形そのものが芸術大作なのだ」彼の吐き出すこの台詞が秀逸。憎めない役柄で面白かった。

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