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曼珠沙華は恋をする【毎週ショートショートnote】

俺は日が傾いてきた道を、
トボトボ歩いていた。
じっとり暑い。
これはおそらく地獄への道だろうと
俺は考えていた。
というのも、俺は人を
殺してしまったからだ。
どうにも許せなかった相手を包丁で
何度も何度も刺してしまったからだ。
歩き続けていると、
大量の曼珠沙華が見えてきた。
遠くから見ると
脆く儚く見えるのに
近くで見ると
花弁が外に向かって反りかえった花は、
火を吹き出さんばかりに真っ赤で、
一本の茎なのに5つの花が外にむきながら
寄り添って咲いている。その姿は、周りを威嚇しているようにも見えた。
なんて美しいんだ、そしてなんて逞しいんだ。人を殺した直後なのに
花を見て心が動くなんて。
何も考えず、ずっと曼珠沙華を見ていたい。
曼珠沙華が好きだ。俺の心が壊れないように
守って欲しい。
そんなことを、立ち止まって
ぼんやり考えていた。
ふと我に帰ると、いつの間にか周りを、
大量の細長い赤い布のようなもので囲まれていることに俺は気がついた。
赤い布の間からは
先ほど歩いていた通りが見える。
そこに、幼い女の子が
恐竜サイズで近寄ってきた。
「小さい人間が花の中にいる」と呟いて
通り過ぎていった。

俺は曼珠沙華の中に閉じ込められたらしい。
これで一生罪を償う必要はない、
守ってもらえる。
毒が回ってこない限り。
(535字)


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