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【犬の歯周病】歯は抜いても問題ない?抜歯を迷う飼い主さんへ。QOLと先を見据えたデンタルケア

「悪くなったら抜けばいい」は本当?犬の歯周病と抜歯の考え方


「動物看護師・オーラルケアアドバイザーとして、多くの飼い主さんから『できれば愛犬の歯は抜きたくないのですが……』とご相談を受けます。
犬の歯科治療について、「悪くなったら抜きましょう。犬は歯が無くても丸飲みできるから大丈夫ですよ」という言葉を聞いたことはありませんか? 私自身、深く勉強する前は「そういうものか、抜かないといけないなら仕方ない」と思っていました。確かにその通りなのですが、少し立ち止まって考えてみたいことがあります。


【Check:歯がないとどうなる?犬の歯の役割】
犬の歯には、それぞれ重要な役割があります。

  • 切歯(前歯): 摘み上げる(指でつまむ役割)

  • 犬歯: しっかりと掴む(手で掴む役割)

  • 前臼歯: 滑り止め(滑り止め付きグローブの役割)

  • 上顎第4前臼歯&下顎第1後臼歯: 切り裂く(ハサミの役割)

  • 後臼歯(一番奥): 砕く、すりつぶす(すりこぎ、石臼の役割)

犬の歯の切り裂く、かみ砕くという役割を図解した画像

確かに、歯が一本も無くても柔らかいフードなら食べられます。人間も同じですよね。しかし、それ以外のものを食べたり、食感を楽しんだりすることはできなくなってしまいます。また、柔らかい食事ばかりになると歯垢がつきやすくなり、ケアができなければ口内環境はさらに悪化します。

抜歯=悪ではない。犬のデンタルケアは「竹林の手入れ」と同じ


「抜くのはかわいそうだから残したい」と思うのが親心です。しかし、重度の歯周炎になってしまった歯を無理に残しても、十分なケアができない環境(歯磨きをさせてくれない等)であれば、歯石を取っても3か月もあれば元に戻ってしまう事は十分に考えられます。

乱暴な言い方をしてしまうと、そもそも歯周病は、歯の周りの骨を溶かす病気。原因となる歯を抜いてしまえば、そこから歯周病が進行することはありません。

犬の歯のケアを乱雑な竹藪と生理管理が行き届いた竹林に例えて比較した画像

私はよく、デンタルケアを「竹林の手入れ」に例えます。

美しい竹林を保つには、傘を広げて歩けるくらいの間隔に整え、地面を綺麗に掃除し続けなければなりません。手入れを怠るとあっという間に荒れ果てた「竹やぶ」になってしまいます。

歯も同じで、終わりのない掃除が必要です。そして、ただ残すだけでなく、時には「切る(抜く)」という選択も重要です。抜歯は決して悪いことではなく、残りの歯を健康に保つためにケアしやすい環境を整える「前向きな処置」になり得るのです。

犬の抜歯においてQOL(生活の質)も一緒に考えるべき理由

動物のQOLを考えるためのボールを加えて楽しそうに遊ぶトイプードルの画像

病気から助かれれば、それでいいのでしょうか?大好きなボール遊びが日々の楽しみであるワンちゃんの場合を想像してみてください

犬歯を抜けば、重篤な病気から助けることはできます。しかし、ボールをしっかりと咥えることが難しくなり、大好きな遊びを奪ってしまうことになります。

ここは大変なジレンマです。口腔ケアもしやすい環境で、病気からも守れた。だけど、日々の楽しみを奪うことになってもよいのか?ということです。病気を治すことだけではなく、その後のQOL(生活の質)も一緒に考えないといけないと私は思うのです。

特に守ってあげたい「3つの歯」の優先順位】

口腔内の環境維持は特定の歯だけでなく、すべての歯をケアしなければ口腔環境は維持できません。しかし、ケアを整備していく上で、どの歯を優先的に守るべきなのでしょうか。私の現時点での認識では、以下の順に大切にしてほしいと考えています。


犬の歯のはさみの役割とかみ砕く役割と構造を説明した画像
  1. 上顎第4前臼歯(P4)& 下顎第1後臼歯(M1)切り裂く「ハサミ」の役割を持つ歯です。とても重要ですが、一番トラブルが起きやすい歯でもあります。

  2. 犬歯(C) ボールをしっかり咥えて遊ぶには不可欠な歯です。よく「抜くと舌が出っぱなしになる?」と聞かれますが、マズルの長さや骨格によるため絶対ではありません。しかし、犬歯は鼻の奥の方まで根が入っている関係で重篤なトラブルに繋がるリスクがあり、ケアを頑張りたい歯です。

  3. 切歯(前歯) 無くても生きていけますが、失うとフードをポロポロ落として食べるのに時間がかかるようになるばあいがあると思います。超小型犬はケアが難しい場所ですが、できるだけ残してあげたい部位です。

ジレンマを抱えながら、プロと一緒にケアの道を探る

「できるだけ残してあげたいけれど、無理に残すと重篤な病気になるかもしれない」 「歯の根元を確認するには歯科レントゲンが必要だが、それには全身麻酔が必要になる」

歯を抜く事は悪ではないが善とも言い切れない。麻酔は怖いが麻酔をかけての処置をしないともっと大きなリスクを負いかねない。

これは、飼い主さんだけでなく、私たち指導する側も常に抱えているジレンマです。 だからこそ、ホームケアをできる環境について、飼い主さん、獣医師、動物看護師が共に考えていく必要があります。どうしてもホームケアが難しくなったら、プロの力(歯石取りや適切な抜歯)を借りて、再びケアしやすいお口の環境にリセットすることも一つの正解と考えます。

そのためには、せめて半年に1回、獣医師歯科学会に所属しているような専門性の高い動物病院で定期検診を受け、相談できる関係を作っておくことを強くおすすめします。

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