【掌編小説】25年後|風まかせ文芸部
2050年11月、パリで行われたG20サミット。議題は、年々深刻化する地球フォンダン化についてだ。
私は合衆国の長として、そして今回のサミットの議長として、結論を出さねばならない。
「エベレストの約20%でフォンダン化が進んでいる状況だ。まぁ、ビジネスチャンスでもあるがね」
口火を切ったのは中国だ。ふん、狸め。相変わらず自国の利益優先と来た。
「山はまだいいだろう。それより、海だ。バルト海の岩礁帯のほとんどでフォンダン化が進行して、魚が甘ったるいのだ。国民の不満が収まらん」
声を荒げるのはドイツとイタリア。問題はそこじゃないだろう。
「魚なんてどうでもいいでしょう。グアテマラも、キリマンジャロも、ブルーマウンテンも、ほとんどが微糖になってしまいました。あなたは、ブラックコーヒーが飲めなくなっても良いのですか?」
ブラジルが応戦する。もはや各国が言いたい放題、収集がつかなくなってきた。
「Shut up!!!」
議長席から轟いた罵声に、会場はシンと静まり返った。よし。一呼吸置いて、私は続ける。
「もはや、一刻の猶予もない。今が決断の時でしょう」
会場全体が、息を呑む。
「Burningだ。すべてのショコラを溶かすのです。地球フォンダン化を止めるには、それしかない」
「しかし、それには莫大なコストと労力がかかります。それに、環境汚染や公害のリスクも…」
真っ先に反論した日本を遮り、各国の長に語りかける。
「現実を直視なさい!空気中の糖分濃度はもはや限界の域に達しようとしているんだ。遠くない将来、誰も地球に住めなくなる。それとも、人類全員で火星に移住しますか?」
やり取りを経て、最初はざわめき立っていた20人の各国代表も、覚悟を決めたようだ。結局、満場一致で私の提案は議決された。
*
蔓延したフォンダン化を一気に解消すべく、超高温の熱風と大型火炎放射器を使用した「世界アウフグース計画」が行われてから10年。
各地を蝕んでいたショコラの影は、もうどこにもない。
その一方、地球規模で発生させた熱と炎の影響は色濃く、地表の平均気温は5℃上がった。
さらに、海面は7m上昇し、南極と北極の氷河は半分が融解。各地で干ばつや水不足、生態系の崩壊が起こっている。
次のサミットの議題は、新たな問題である地球温暖化をどうするかについて、だ。
(957字)
こちらの企画に参加させて頂きました。
