行方しれず 第八話 ドーマの絵
栞:幼稚園ママの間で噂になっているわよ
清香:何が
栞:ドーマくんの絵
清香:え? どういうこと?
栞:知らないの?
清香:教えて
栞:例の連続行方不明事件の現場に残されてた絵に似てるって
栞から画像が送られてきた
確かに幾何学的で似ているようにも見えるが、ドーマの絵とはかなり違う。事件の絵は意図的に描かれたもの。ドーマの絵は分からないがドーマの頭の中を表している。
清香:これはドーマの絵とは違うから
栞:乃莉香さんがドーマくんちに行った時にこんな絵が飾ってあってゾッとしたって慶子さんに話したみたいで、そこから広まっちゃったみたい。今度の運動会、気をつけてね
栞はドーマがお腹にいた頃に知り合った。
病院での母親学級で同じ班になり、不器用に沐浴の練習をしていた私に優しい言葉をかけてくれた。
そこから、付かず離れずの距離感で付き合ってきた。
幼稚園の運動会は5月にある。ドーマにとって幼稚園最後の運動会だ。
運動は好きじゃないのに、走るのは速いので、今回のリレーではアンカーをつとめるので、ドーマも楽しみにしているはずだ。
だが、慶子さんたちがこんな噂を流し、運動会を台無しにするのではと不安になった。
母は玄関に行き、ドーマの絵と、送られてきた画像を比べた。
絶対ドーマの絵とは違うと思っていたが、何枚も見ていくうちに次第に自信をなくしていった。
次の日、ドーマは絵を描いてこなかった。
幼稚園で絵を描かないでと言われたらしい。
誰に言われたかは、聞いても答えなかった。
「だって、ママだって、気づいてるんでしょ」
母は唾をごくりと飲み込んだ。
「僕が描いた絵が、あのニュースの絵にそっくりなの。そう思ってるんでしょ」
ドーマと目が合わせられなかった。
「あの絵とは違う、ママには違うってわかるの」母の目は動揺していた。
「ママになんか見せるんじゃなかった」
ドーマは玄関を飛び出した。
「待って」
「僕は犯人じゃない、でも、僕には見えるんだよ、あの絵が」
腕を掴まれたドーマは俯いた。
「見たくないけど、見えるんだ。僕じゃない、他の誰かの目を通して見ているように見えるんだ」
母の足にドーマの涙があたった。
「つらいんだね、ドーマ。気づいであげなくてごめんね」
泣きじゃくるドーマを必死に抱き留めた。
その時、母にはある仮説が浮かんでいた。
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