見出し画像

行方しれず 第三話 佐竹雄也の母・みさ 父・真守


「息子さんが姿を消した日のことを聞かせてもらえますか?」

「はい、いつものように幼稚園に行って、帰ってきてから3時まで公園で遊んでいました。それからスーパーに買い物に行って、」

母親が声を詰まらせた。

「お菓子を買ってとせがまれたんです。でも、虫歯になるからダメって言って買ってあげなかったんです。お菓子ぐらい買ってあげればよかった」

母親が目頭にハンカチを押し当てた。

「ごめんなさい。スーパーから帰ってきて、あの子、絵を描くのが好きですから、戦隊ヒーローの絵を描いてたんです。それから、そのフィギュアを戦わせて遊んでたのが、私がみた最後です」

母親は背を丸めて嗚咽を漏らしながら泣いた。

「これ、なんですか?」

検察官が手袋をはめた手で指差したのは、壁に貼られた絵だった。

「さあ、あの子が書いたのかしら。こんなの見るの、私は初めてです」

「みさ、遅くなってごめん。大丈夫か」

夫の佐竹真守が出張先のシンガポールから帰ってきた。

母親はその場で泣き崩れ、真守が支えた。

検察官は壁の絵をカメラで撮影し、透明のビニール袋に入れた。

絵は赤一色で描かれた直線と曲線が入り混じったフォークのような模様だった。

いいなと思ったら応援しよう!

河村 恵 よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは創作活動に使わせていただきます。